革靴に使えるお手入れ用品、と言われると本当にたくさんの種類のアイテムが挙げられますよね。
店頭やオンラインショップを見ていても、「固形タイプ」、「ペースト(クリーム)」、「乳液タイプ」、「デリケート革用」などジャンルそれぞれに多くの種類のお手入れ用品がひしめいています。
なのに意外と商品説明に書いてあることは似通っていて、選ぶに選べず途方に暮れる……なんてことも革靴のお手入れ初心者にはありがちなことです。
そこで今回はサフィール製品を参考に、革靴のお手入れ用品をわかりやすく分類し、それぞれの特徴ごとに使い分ける方法を伝授したいと思います!
店頭やオンラインショップでも多く見かける革靴のお手入れ用品ですが、一番わかりやすく分類するとしたら「テクスチャ(形状、状態)」です。
サフィール製品を例に挙げながら、まずはこの分類を紹介いたします。
革靴のお手入れ用品と言えば、コレ!と言えるくらい一般的な製品です。
ビン入りのいわゆる“靴クリーム”と呼ばれるものです。
やわらかく伸びが良いので靴全体に塗り拡げやすいことから、革靴の基本的なお手入れの必需品です。
商品詳細を見ると、「乳化性」と書かれているものが多いと思いますが、これは主に、
・油分
・ワックス
・水
といった本来混ざり合わない性質の原料を「乳化」という状態にしていることを表します。
※身近なものだとサラダオイルと酢が混ぜ合わさったマヨネーズがまさに「乳化」です。
サフィールの乳化性靴クリームといえば“ビーズワックスファインクリーム”です。
ビーズワックスファインクリームは乳化性と言えど、天然原料であるアーモンドオイル、ビーズワックスやカルナバワックスといった成分の配合比率が高いので、栄養・保革・光沢といった面で高い効果を発揮します。
またカラーの豊富さと色づきの良さも特長のひとつ。色あせ・色抜け、小キズの補修の心強い味方になってくれます。
ペーストタイプの製品には乳化性のものと「油性」のものがあります。
サフィールノワール クレム1925が「油性靴クリーム」に該当します。
乳化性が油分・ワックス・水で構成されているのに対して、油性は油分とワックスが主成分となります。
水が含まれない分、油分・ワックスの配合比率が増すので栄養・光沢効果は乳化性に比べて高まりますが、加工に手間暇がかかるため、原材料費を含む製造コストが高くなります。
ファインクリーム(50ml ¥1,100・税込)とクレム1925(75ml ¥2,420・税込)の価格差はこのあたりに起因します。
さて、油性ときくと何だか固そうで使いづらそうに思いますが、クレム1925は乳化性のクリームと比べてもやわらかさ(=伸びの良さ)に遜色はなく、使い勝手は変わりません。
むしろ揮発で抜けてしまう水が入っていない分、乾燥で配合バランスが崩れてカチカチに固くなって使えなくなることがありません。
油性の靴クリーム=上級者向け?と思われがちですが、上記の通り決してそのようなことはありません。
一般的に、平たい金属缶の容器に入った製品としておなじみかと思います。
年配の方からは「靴墨」とも呼ばれることも多いのがこのタイプです。
サフィールではサフィール・サフィールノワールどちらからも“ビーズワックスポリッシュ”という固形ワックスが出ています。
ワックスが主成分のいわゆる“油性”に属する製品で、今回紹介するの各分類の中で一番ワックスの配合比率が高いです。
ワックスの配合比率が一番高いということは、光沢が一番強いということですが、イコール一番強くワックス被膜を張るということなので、防キズ効果や防水効果にも優れています。
なおサフィールとサフィールノワールはどちらもビーズワックスポリッシュという商品名で、サフィールノワールの方がワックス・油分の配合比率が極限まで高められていることから、他に類を見ない仕上がりを求める世界中のプロシューシャイナーがこぞって愛用しています。
サフィールのビーズワックスポリッシュでも相当の光沢・保護効果を発揮するので、使い比べてみるのも面白いですよ。
乳白色でややとろみのある液状のお手入れ用品で、化粧品でいう乳液状のものを主に指します。
サフィールではユニバーサルレザーローション、サフィールノワールではレザーバームローションが該当します。
この2つはどちらもビーズワックスが配合されていますが、違いはユニバーサルレザーローションはホホバオイル(植物性油分)、レザーバームローションはミンクオイル(動物性油分)が配合されている点です。
液状であるメリットは皮革に浸透しやすいこと。水分と一緒に有効成分が比較的早く皮革の深層へ浸透します。
また塗り広げやすいのも液状であるメリットのひとつです。クロスに取って全体に均一に塗布することができる扱いやすさは初心者向きのお手入れ用品と言えます。
またローションタイプはかばんや財布、ベルトなどの革小物など靴以外の革製品にも使用できます。レザージャケットやレザーソファといった塗布面積の広い対象には全体に均一に塗布しやすいレザーローションはもってこいです。
ローションタイプは栄養・ツヤ出しのほか、汚れ落としの効果も発揮します。1本で3役を果たす万能アイテムとして高い人気を誇っています。
革靴のお手入れ用品として流通しているアイテムの分類についてはなんとなくご理解いただけたかと思います。
では実際にどれを選ぶか、どう使い分けるのかについてお話していきます。
革靴を長く美しく履き続けるために必要な要素をより多く兼ね備えている「靴クリーム」は必須アイテムです。
乳化性のビーズワックスファインクリームと油性のクレム1925のどちらを選ぶかは好みにもよりますが、
あえて使い分けるとしたら、以下を参考にしてください。
・初心者にも使いやすい。価格も手頃。
・あざやかな色づかい、薄手な革を用いた婦人靴。
・靴の色とドンピシャのカラーを探したい(80色以上から選べる!)
・はっきりとした色づかい(顔料仕上げの革)の靴の補色
・極上のツヤ、しっとり感を保ちたい
・落ち着いた色味、厚手の革を用いる紳士靴
・染め仕上げや風合いの上質な革を用いた靴
・ハイシャイン前提のお手入れをする場合
主にハイシャイン(鏡面磨き)のようなガッツリ光らせる仕上げのための必須アイテムとして使われます。
つま先・かかとを中心に靴をドレッシーに演出する仕上げとして、靴磨きの中級~上級者は持っている方も多いかと思います。
ポリッシュの使いどころは実はハイシャインだけではありません。デイリーケアのラストに靴全体に薄塗りしておけば靴クリームだけの仕上げよりもより強く光沢感を出すことができ、防水・撥水効果も強化されます。天然原料を主成分とするサフィールのポリッシュだからこそ初心者にもおすすめできる使い方です。
ちなみにポリッシュを靴クリームのように使うことも、決してできないわけではありません。
現に海外や日本でもプロの靴磨き職人の中には栄養効果の高いサフィールのポリッシュを靴全体に塗り込む方もいます。
ただこれは「サフィールであれば」という言葉が頭に付きます。
市販されている固形ワックスの中には主成分が石油由来の原料であるものがあり、それは光沢は出るものの栄養効果(革の乾燥を防ぎ柔軟性を保つ油分など)に乏しいものも多く、固形ワックスだけのお手入れでは乾燥等による無用なダメージを負う恐れがあります。
したがって、初心者の方は固形ワックスオンリーのお手入れは避けた方が無難でしょう
手軽に使いやすい製品ではありますが、革靴のお手入れに限定した場合、靴クリームやポリッシュなどの靴手入れ専用商品と比べて水分量が多い分、油分・ワックスの有効成分の配合比率が低くなるため、お手入れが靴に与える効果・影響の面では少し物足りなく感じます。
カラーバリエーションもニュートラル(無色)のみですから補色効果はありません。継続的にローションだけでメンテナンスをしていくとなるとどうしても力不足なのは否めません。
ローションタイプでの革靴のお手入れは、靴を購入した時のプレメンテナンスやお手入れした後の効果の維持、靴クリームを使用する前の汚れ落としや保湿用として使用するなど、靴クリームの補助的に併用することを推奨しています。
1本あれば他の革製品のデイリーケアにも使えるので、革靴のお手入れ初心者でも持っていて損はないアイテムです。
革靴のお手入れにおいて、デリケートクリームはワックス被膜による光沢や防水効果は得られないことと、水分量が多く浸透性は高いが抜けるのも早いことから、一般的なスムースレザーの靴をデリケートクリーム単体でお手入れするのは避けたいところです。
デリケートクリームを靴に使う時は、雨に濡れて過剰に乾燥した時や淡色の革靴をお手入れする時に変色を防ぐための下地作りとして保湿目的で塗布したり、革製の中敷きやライニングのお手入れなど補助的な使用が主となります。
革靴のお手入れ用品を選ぶ時、ついつい使い勝手のよいローションタイプの製品やデリケートクリームで革製品全般をオールマイティにお手入れすることを考えてしまいますが、やはり「特化」された製品、靴クリームやポリッシュとの効果・効能と比べるとそれなりの違いが表れます。
また靴用の製品と言っても、「乳化性と油性」、「固形とペースト」それぞれに特長があり、上記の通り使い分けもはっきりしています。
革靴のお手入れをするにあたって、どんなものを使ったら良いか、どのように使ったら良いかの目安になりましたら幸いです。
当サイトShoesLifeでは、各製品の特長をより詳しく解説している記事も掲載されていますので、ぜひそちらもご参照ください。
おすすめの関連記事