靴磨きに慣れて手際が良くなると、はじめは丁寧だったクリームの量や力加減、細かな手順がいつの間にかおざなりになってしまうことがありますよね。実はこれ、多くの方が経験する「シューケアあるある」なんです。
でも、ふと「最近、お手入れが適当になっているかも」と感じたら、ちょっとだけ注意が必要です。良かれと思ってやっているいつもの手順のなかに、実は「少しもったいない落とし穴」が隠れているかもしれません。
シューケアの道具や工程には、ひとつひとつに大切な役割や理由があります。ちょっとしたコツを知るだけで、大切な革靴を傷つけずに失敗しないお手入れが驚くほどカンタンにできるようになります。
今回は、これから靴磨きを始める方はもちろん、基本をおさらいしたい方に向けて、世界中で愛されるブランド“サフィール”の「正しい手入れ手順と新常識」を楽しく丁寧にご紹介します。
田中 忍 / ShoesLifeライター
シューケア・レザーケアに携わって20年、現場での経験と検証をもとに実践的なケア方法を発信。
SAPHIR シューケアアドバイザー/シューケアトレーナー、レザーソムリエ(日本革類卸売事業協同組合認定)。
「カサつきが気になる……」
革靴を大切にされている方ほど、「定期的にお手入れをしなきゃ!」とマメに靴を磨かれているのではないでしょうか。
でも、良かれと思って続けているいつもの手順のなかに、実はちょっとした「落とし穴」が隠れていることがあります。特に多くの方が陥りがちなのが、次の2つのポイントです。
クリーナーの使いすぎは、かえって靴に負担をかけてしまうことも……
「靴を磨くときは、毎回古いクリームを完全に落とさなければいけない」と思っていませんか?一般的な手順としてよく紹介されていますが、実は強い汚れ落としを毎回使いすぎてしまうと、革の負担になってしまうことがあります。
サフィールの靴クリームは、天然の高級栄養成分をたっぷり含んでいるのが特徴です。毎回わざわざリセットして落としきるのではなく、良質な成分をほどよく革に残し、表面の汚れだけを落としながら「重ねて育てていく」のが、靴に負担をかけないお手入れのコツです。
靴クリーム塗布後、しばらく放置した状態。
「クリームをしっかり染み込ませるために、塗ったあと5分くらい置いて乾かす」というのも、よくあるお悩みにつながる手順です。
実は、時間を置きすぎるとクリームが乾いてねばり気が出てしまい、その後のブラッシングで伸びが悪くなったり、ベタつきにほこりが付きやすくなったりします。
サフィール流ではクリームを塗ったら時間を置かず、すぐにブラシをかけていくのがスムーズに仕上げるポイントです。
革靴を長く良い状態で履き続けるために、実は一番大切なのはワックスでピカピカに輝かせることではありません。
日々のちょっとした習慣や、休ませるタイミングを意識するだけで、革靴へのダメージを抑えて驚くほど長持ちさせることができます。普段から気を付けておきたいポイントは2つです。
普段から気を付けたいポイントは、帰宅後に「シューキーパー(シューツリー)を入れて型崩れを防ぐこと」、そして「馬毛ブラシでほこりを払っておくこと」の2点です。
特に屋外で付いたほこりをそのままにしておくと、見栄えが悪いだけでなく、ほこりが革の油分を吸収して乾燥を早めたり、カビの原因になったりすることがあります。10秒程度で構わないので、帰宅後にサッとブラシをかける習慣が、長い年月をともに歩む革靴のコンディションを大きく左右します。
毎日同じ靴を履き続けるよりも、複数の靴をローテーションさせて休ませるのがおすすめです。革靴は1日履くと汗などの水分を吸収するため、それを放出して乾燥させるために2日程度休ませるのが理想とされています。そのため、3足ほどを上手に回していくのが靴に優しい履き方です。
また、定期的な靴クリームを使った本格的なお手入れ(靴磨き)の頻度としては、「1ヶ月に1回」、または「10回履いたら1回程度」を目安にすると、常に最高のコンディションを保ちやすくなります。
お手入れ前に揃えたサフィールのシューケア道具
まずは、毛足が長くて柔らかい馬毛ブラシを使って、靴全体についたほこりやちりを払い落とします。
アッパー(甲の革)だけでなく、砂埃が溜まりやすいコバ(革と靴底の境目)の隙間や縫い目の部分も丁寧にブラシをかけましょう。このひと手間で、この後に使うローションやクリームの馴染みがぐっと良くなります。
ブラッシングで落ちなかった表面の汚れは、専用のクリーニングローションで落とします。
靴クリームのワックス・油分をほどよく残しつつ、表面の汚れを落とすためのクリーナーで、天然原料による優れた栄養・光沢効果をもつサフィールならではの「以前塗布したワックス・油分をあえて残す」ケアです。
サフィール流の大切なポイントは、革に余計な負担をかけてダメージを与えないようにすること。
クロスにローションを少量なじませたら、指を軽く押しつける程度の力加減で表面を優しくなでるように拭き取りましょう。
ゴシゴシと力任せにこすったりしなければ、革を傷めるようなことはありません。
汚れが落ちたら、いよいよ靴クリームで栄養補給とツヤ出しをおこないます。
サフィール流では、クロスではなく「アプライブラシ(小型の塗布用ブラシ)」を使うのがおすすめです。指や布では届きにくい履きジワの奥、ステッチ(縫い糸)、コバの隙間まで、クリームを均一にしっかりと行き渡らせることができます。縫い糸にクリームが染み込むことで、雨水の侵入を防ぐ効果も期待できます。
クリームを塗り終えたら、時間を置かずにすぐ「豚毛ブラシ」で靴全体をくまなくブラッシングします。
ここで大切なのは、ブラシを素早く動かすことで生まれる「摩擦熱」です。熱が加わることでクリームの油分が革の奥深くへと一気に浸透し、表面に残ったワックス成分が綺麗な被膜となって均一に伸びていきます。時間を置いて乾かす必要はありません。
ブラッシングによってクリームがしっかり馴染んだら、最後にきれいなクロスでしっかり乾拭きをして仕上げます。
ブラッシング後の革はベタつきがなくサラッとしているため、クロスが引っかかることなくスムーズに磨き上げることができます。さらにこだわりたい方は、乾拭きのあとに毛足の細いヤギ毛のブラシや専用のグローブを使うと、微細な拭き筋が消えて、革本来の美しいツヤをさらに引き出すことができます。
一連の手順は動画でもご覧いただけます
今回のサフィール流お手入れで使用した、基本のシューケアアイテムです。
道具をひとつひとつ揃えていくのも、靴磨きの楽しみのひとつです。それぞれの特徴と、公式ストアへのリンクをまとめました。
馬毛ブラシ(ほこり落とし用)
毛足が長くてやわらかく、密度が高い高品質な馬毛ブラシです。
靴全体をササッと広範囲にブラシがけして、日々のほこりやちりを払い落とすのに最適なサイズ感になっています。
クリーニングローション(汚れ落とし用)
革に必要な潤いやワックス成分をほどよく残しながら、表面の汚れや泥はねだけをしっかりと落とせる新発想のローションです。
革への負担を最小限に抑えたい定期的なケアに最適です。
アプライブラシ(クリーム塗布用)
靴クリームを細かな部分まで均一に塗り拡げるための、小型の塗布用ブラシです。指や布では届きにくいコバの隙間やステッチ、履きジワの奥までしっかりとクリームを行き渡らせることができます。
靴クリーム(栄養補給・ツヤ出し用)
アーモンドオイルやシアバターといった植物性油分をたっぷり配合した、非常に栄養効果の高い靴クリームです。
高い保湿効果と浸透性で、革靴を最良のコンディションに整えてくれます。
豚毛ブラシ(クリームなじませ用)
コシと張りのあるしっかりとした毛質が特徴の、なじませ専用ブラシ(豚毛)です。
手に持ちやすく、手早く圧をかけてブラッシングすることで「摩擦熱」を生み出し、クリームの浸透をぐっと促します。
仕上げ用クロス(乾拭き・仕上げ用)
余分なクリームを綺麗に拭き取り、上質なツヤを引き出すための大判クロスです。最後に優しく磨き上げることで、なじみきらない余分なクリームを拭き取り、美しいツヤが出ます。
お手入れが完了!
靴磨きの手順は、ただ単に表面をきれいにするだけでなく、それぞれの工程が「革のコンディションをどう整えるか」という理由と結びついています。
「毎回強引にすっぴんにしない」、「塗ったら時間を置かずに摩擦熱でなじませる」といったサフィール流のコツを押さえるだけで、お手入れは驚くほどカンタンになり、靴にも優しく仕上がります。
最初は少し特別に感じられるお手入れも、気がつけば心地よい日常の習慣に変わっていくはずです。最近ちょっと手順が雑になっていたなという方も、これから始めてみようという方も、ぜひこの機会にサフィール流の優しいシューケアを試してみてくださいね。




