革靴に使えるお手入れ用品、と言われると本当にたくさんの種類のアイテムが挙げられますよね。
店頭やオンラインショップをのぞいてみると、「固形タイプ」、「ペースト(クリーム)」、「乳液タイプ」、「デリケート革用」というようにジャンルがあって、それぞれに多くの種類のお手入れ用品がひしめいています。
にもかかわらず、商品説明に書いてあることはどれも似通っているので自分が求めている商品がどれなのか、選ぶに選べず途方に暮れる………なんてことが革靴のお手入れ初心者にありがちなパターンです。
そこで本記事では、サフィール製品を例として革靴のお手入れ用品をわかりやすく分類して、それぞれの特徴ごとに商品を使い分けるための方法を伝授したいと思います!
※記事内の価格は記事公開日時点(2022年4月)のものです
店頭やオンラインショップで数多く見かける革靴のお手入れ用品を、最もわかりやすく分類するとしたら「テクスチャ(形状、状態)」による分類です。
以下にサフィール製品を例に挙げて、革靴のお手入れ用品を分類していきたいと思います。
革靴のお手入れ用品と言えば、コレ!と言えるくらい一般的な製品です。
ビン入りのいわゆる“靴クリーム”と呼ばれるものです。
やわらかく伸びが良いので靴全体に塗り拡げやすいことから、革靴の基本的なお手入れの必需品です。
商品詳細には「乳化性」と書かれているものが多いと思いますが、これは主に、
・油分
・ワックス
・水
といった本来混ざり合わない性質の原料を「乳化」という状態にしていることを表します。
※より身近なものだとサラダオイルと酢が混ぜ合わさった「マヨネーズ」がまさに「乳化」された製品です。
サフィールの乳化性靴クリームといえば“ビーズワックスファインクリーム”です。
ビーズワックスファインクリームは水を含む乳化性と言う性質ではありますが、天然原料であるアーモンドオイル(油分)、ビーズワックスやカルナバワックス(ろう分)といった成分の配合比率が高く、栄養・保革・光沢といった面で非常に優れた効果を発揮します。
またカラーの豊富さと色づきの良さも特長のひとつ。顔料がたっぷり配合されているので色あせ・色抜け、小キズ補修の心強い味方となります。
ペーストタイプの製品には乳化性と「油性」があります。
サフィールノワールシリーズを代表する製品、“サフィールノワール クレム1925”が「油性の靴クリーム」に該当します。
乳化性が油分・ワックス・水で構成されているのに対して、油性は油分とワックスで構成されます。
水が含まれない分、油分・ワックスの配合比率が増すため栄養・光沢効果は乳化性に比べてさらに高まりますが、原料を加工するのに手間暇がかかるため、原材料費を含む製造コストが乳化性製品よりも高くなります。
ファインクリーム(50ml ¥1,210・税込)とクレム1925(75ml ¥2,640・税込)の価格差は上記に起因します。
さて、油性ときくと何だか固そうで使いづらそうに思いますが、クレム1925は乳化性のクリームとやわらかさ(=伸びの良さ)に遜色はなく、使い勝手はそう変わりません。
むしろ蒸発して抜けてしまう水が入っていない分、乾燥による配合バランスの崩れがなく、クリームがカチカチに固くなって使えなくなるようなことがありません。
実際にクレム1925の前身となった油性クリームでは、多少固さは出るものの25年以上も使い続けられていた、というような例もあります。
油性の靴クリーム=上級者向け? と思われがちですが、上記の通り乳化性クリームと同様に使うことができるので、扱いが特別難しいということはありません。
一般的に、平たい金属缶の容器に入った製品としておなじみかと思います。
昔ながらのお手入れ用品として、年配の方には「靴墨」とも呼ばれることも多いのがこのタイプです。
サフィールブランドでは“ビーズワックスポリッシュ”という商品名でラインアップされています。
ワックス(ろう)が主成分のいわゆる“油性”に属する製品で、今回紹介するの各分類の中で一番ワックスの配合比率が高いです。
ワックスが靴に与える主な効果はワックスの被膜を表面に張ることなのですが、ワックスの配合比率が一番高いということは、よく光る・光沢が強いということにつながります。
そしてクリームよりも強くワックス被膜を張るということは、防キズ効果や防水効果にも優れていると言えます。
なおサフィールとサフィールノワールはどちらもビーズワックスポリッシュという商品名ですが、上位グレードであるサフィールノワールの方がワックス・油分の配合比率が極限まで高められており、他に類を見ない極上の仕上がりを求める世界中のプロシューシャイナーがこぞって愛用しています。
とはいえ、サフィールシリーズのビーズワックスポリッシュでも相当の光沢・保護効果を発揮しますので、微妙な使い勝手の違いを比較してみて使いやすい方を選んだり、靴のお手入れ用品に掛けられる予算に応じて使い分けたりすることができます。
乳白色でややとろみのある液状のお手入れ用品で、化粧品でいうところの乳液のようなものを主に指します。
サフィールにはユニバーサルレザーローション、サフィールノワールにはレザーバームローションという製品が存在します。
この2つの製品はどちらもビーズワックスが配合されているのですが、大きな違いは配合される油分にあります。
ユニバーサルレザーローションにはホホバオイル(植物性油分)、レザーバームローションにはミンクオイル(動物性油分)が配合されています。
液状であるメリットは皮革に浸透しやすいこと。水分と一緒に有効成分が比較的早く皮革の深層へ浸透します。
また塗り広げやすいのも液状であるメリットのひとつです。クロスに取って全体に均一に塗布することができる扱いやすさは初心者向きのお手入れ用品と言えます。
またローションタイプはかばんや財布、ベルトなどの革小物など靴以外の革製品にも使用できます。レザージャケットやレザーソファといった塗布面積の広い対象には全体に均一に塗布しやすいレザーローションはもってこいです。
ローションタイプは栄養・ツヤ出しのほか、汚れ落としの効果も発揮します。1本で3役を果たす万能アイテムとして高い人気を誇っています。
ホホバオイルに関する解説あり
ミンクオイルについて解説あり
革靴のお手入れ用品として流通しているアイテムの分類についてはなんとなくご理解いただけたかと思います。
では実際にどれを選ぶか、どう使い分けるのかについてお話していきます。
革靴を長く美しく履き続けるために必要な要素をより多く兼ね備えている「靴クリーム」は必須アイテムです。
乳化性のビーズワックスファインクリームと油性のクレム1925のどちらを選ぶかは好みにもよりますが、
あえて使い分けるとしたら、以下を参考にしてください。
・初心者にも使いやすい。価格も手頃。
・あざやかな色づかい、薄手な革を用いた婦人靴。
・靴の色とドンピシャのカラーを探したい(80色以上から選べる!)
・はっきりとした色づかい(顔料仕上げの革)の靴の補色
・極上のツヤ、しっとり感を保ちたい
・落ち着いた色味、厚手の革を用いる紳士靴
・染め仕上げや風合いの上質な革を用いた靴
・ハイシャイン前提のお手入れをする場合
主にハイシャイン(鏡面磨き)のようなガッツリ光らせる仕上げのための必須アイテムとして使われます。
つま先・かかとを中心に靴をドレッシーに演出する仕上げとして、靴磨きの中級~上級者は持っている方も多いかと思います。
ポリッシュの使いどころは実はハイシャインだけではありません。
デイリーケアのラストに靴全体に薄塗りしておけば靴クリームだけの仕上げよりもより強く光沢感を出すことができ、防水・撥水効果も強化されます。
天然原料を主成分とするサフィールのポリッシュだからこそ初心者にもおすすめできる使い方です。
ちなみにポリッシュを靴クリームのように使うことも、決してできないわけではありません。
現に海外や日本でもプロの靴磨き職人の中には栄養効果の高いサフィールのポリッシュを靴全体に塗り込む方もいます。
ただこれは「サフィールであれば」が前提となります。
市販されている他の固形ワックスの中には石油由来の原料を主成分としているものもあり、石油由来のワックスは光沢は出せても栄養効果(革の乾燥を防ぎ柔軟性を保つ油分など)に乏しいものも多く、固形ワックスだけのお手入れでは乾燥などによるダメージを負う場合があります。
ゆえに、初心者の方はあえて固形ワックスオンリーで靴をお手入れするようなことは避けた方が無難でしょう。
手軽に使いやすい製品ではありますが、革靴のお手入れに限定した場合、力不足は否めません。
靴クリームやポリッシュなどの靴のお手入れ専用製品と比べると水分量が多い分だけ、油分やワックスといった有効成分の配合比率は自ずと下がるため、手入れが靴に与える効果としてはやはり物足りなさを感じます。
カラーバリエーションもニュートラル(無色)のみとなり補色効果がありません。
継続的にローションだけでメンテナンスをしていくとなると色あせや色抜け、キズのカバーがおろそかになってしまいます。
ローションタイプでの革靴のお手入れは、新しい靴の購入時に行うプレメンテナンスやお手入れ後に効果を維持するため、靴クリームを使用する前の汚れ落としや保湿用としての使用など、靴クリームの補助として併用することを推奨しています。
ローションが1本あると、かばんや財布など他の革製品の日々のお手入れにも使い回せるので、革靴のお手入れ初心者でも持っていて損はないアイテムと言えます。
革靴のお手入れにおいて、デリケートクリームはワックス被膜による光沢や防水効果は得られないことと、水分量が多く浸透性は高いが抜けるのも早いことから、一般的なスムースレザーの靴をデリケートクリーム単体でお手入れするのは避けたいところです。
デリケートクリームを靴に使う時は、雨に濡れて過剰に乾燥した時や淡色の革靴をお手入れする時に変色を防ぐための下地作りとして保湿目的で塗布したり、革製の中敷きやライニングのお手入れなど補助的な使用が主となります。
革靴のお手入れ用品を選ぶ時、ついつい使い勝手のよいローションタイプの製品やデリケートクリームで革製品全般をオールマイティにお手入れすることを考えてしまいますが、やはり「特化」された製品、靴クリームやポリッシュとの効果・効能と比べるとそれなりの違いが表れます。
また靴用の製品と言っても、「乳化性と油性」、「固形とペースト」それぞれに特長があり、上記の通り使い分けもはっきりしています。
革靴のお手入れをするにあたって、どんなものを使ったら良いか、どのように使ったら良いかの目安になりましたら幸いです。
当サイトShoesLifeでは、各製品の特長をより詳しく解説している記事も掲載されていますので、ぜひそちらもご参照ください。
本記事で紹介した商品はこちらで購入できます。
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