靴磨き選手権大会2024が開催間近ですね。
本大会ではプロアマ問わず、靴磨きにおけるスキルを複合的に審査して技を競い合う人気イベントです。
大会の醍醐味であるハイシャイン(鏡面磨き)にばかりフォーカスされがちですが、美しいハイシャインを生み出すにはいかに基本のお手入れが成し遂げられているかが重要となります。
そんな熱き戦いの場において、選手たちが使用する靴磨き道具も注目ポイントのひとつですが、ひときわ目にすることの多いシューケアメーカーがSaphirNoir(サフィールノワール)です。
1920年に誕生したサフィール(SAPHIR)は、今ではフランス製の一流シューケア・レザーケアブランドとして世界中から支持されています。
上位ラインであるサフィールノワール(SaphirNoir)は最高品質を誇るハイグレードラインであり、シューケアブランドを代表する珠玉の逸品揃いです。
プロアマ問わず、サフィールノワールを日頃の靴磨きでも使っている人が多い理由。
それは、革に悪影響を及ぼす恐れのある原料(合成樹脂やシリコンなど)は極力使用せず、効果効能に優れた天然原料の使用にこだわりることで、思い描いた以上の仕上がりを発揮する極上の性能が備わっているからです。
そんな素晴らしいサフィールノワールシリーズの効果と性能を発揮するためには、製品の特性を活かした正しい使い方をマスターすることが大切です。
今回ご紹介する「基本的な靴磨きの工程」を読めば、すでに靴磨きの基本をマスターしている方にとってはさらに高度なテクニックを掴むきっかけとなり、ビギナーの方はワンランク上のちょっとこなれた靴磨きテクニックが習得につながることと思います。
2.ごみやほこりを払い落とす
<馬毛ブラシ>└◆Point.馬毛ブラシの重要性
3.汚れを落とす
<汚れ落とし/クリーナー>└◆Point.サフィールの汚れ落としに対する見解
4.栄養補給、ツヤ出し、補色
<靴クリーム>└◆Point.靴クリームを塗る手段はさまざま
👇サフィールノワールだからできる裏ワザ
6.クレム1925の押し込み
👇さらなる仕上げ
9~10.仕上げの仕上げ
<フィニッシャーブラシ、ハイシャイングローブ>
Sleipnir(スレイプニル) 木製シューキーパー
お手入れをする時には、軽量のシューキーパーが腕が疲れにくく最適です。
バネ式タイプはバネが伸びようとする力でしっかりと履きジワを伸ばすことができるので、しわの奥などの細部までお手入れの効果を行き届かせることができます。
※注意点
バネ式のシューキーパーは長期間入れっぱなしにしていると、かかとにピンポイントでテンションがかかるため、変形の恐れがあります。
長期保管としては不向きなのでご注意を。

SAPHIR(サフィール) グランドホースヘアブラシ
毛足が長くやわらかな馬毛のブラシは、靴にキズをつけることなくホコリや汚れを効果的に払い落とすことができます。
当てる箇所によってブラシの角度を変えることがポイントです。
革靴の側面は縦方向に、甲は横方向にとブラシの角度を変えてストロークします。
アイレット(靴紐を通す穴)のある“羽根”の奥や付け根、アッパー(甲革)とコバの隙間、履きじわの奥などにも毛先を当ててほこりをかき出しましょう。
側面は縦方向
甲は横方向
◆馬毛ブラシの重要性
ホコリを払い落とす馬毛ブラシのブラッシングは、月1回のお手入れの時だけでなく、履くごと(脱ぎ履きすると)にしてあげることをおすすめします。
外出すれば、必ず革靴にはホコリやチリが付着します。それらを放置すると乾燥やカビの原因となりますので、出かける前に靴を履く時/帰宅して靴を脱いだ時に馬毛ブラシでブラッシングすることをルーティンにするといいでしょう。
また、日頃からしっかりと靴磨きされている革靴は、履く前のブラッシングで塗布されているクリームのワックスにの摩擦熱が加わり、新たにクリームを塗らなくても光沢がよみがえります。

SaphirNoir(サフィールノワール) コンディショニングクリーナー
革靴に残るワックスや油分(光沢や栄養)は程よく残し、表面に付着した汚れを落とします。
どのようなケア用品にも革との相性、というものがあります。
予期せぬ反応が起きてしみや跡がついてもよいように、目立たないかかとや内側(土踏まず側)から始めてください。
コバとの隙間や履きじわなど、奥の汚れまでしっかりと拭き取ります。
汚れ、なじみきらないクリームを拭き取る
◆サフィールの汚れ落としに対する見解
サフィールのクリームやワックスは主に天然由来の原料を使用し、皮革に悪影響を及ぼす原料の使用を極力控えています。したがって栄養効果が高く持続性に優れた処方となっているので、サフィールでお手入れをしている革靴は、言わば“常に最良のコンディション”に仕上がっていると言えます。
そんな十分に仕上がっている革靴を、お手入れごとに毎回リセット(すっぴん状態)にしてしまうのは非常にもったいのないことです。
むしろ汚れ落としの使いすぎは革に余計な負担をがかけることになってしまうので、月に1回程度の定期的なメンテナンスではコンディショニングクリーナーのような革にやさしいクリーナーが最適です。
クリームを厚塗りしすぎてしまったり、ガチガチに光らせたハイシャインをリセットする場合には、サフィールノワールのナチュラルクリーナーがおすすめです。
こちらも植物性油分由来の天然原料を使ったクリーナーですが、革を傷めることなく靴に塗られたクリームの油分やワックスを強力に落とすことができます。

SaphirNoir(サフィールノワール) クレム1925
1925年のパリ万国博覧会でサフィールが金賞を受賞した際のレシピを受け継ぐ最高級の靴クリームです。
最上の光沢・栄養・補色効果を発揮し、サフィールノワールシリーズを代表する製品として知られています。
SaphirNoir(サフィールノワール) アプライブラシ
適量の靴クリームを隅々まで塗布することのできる専用ブラシです。
角型のブラシは向きを変えることで革靴の細部にもしっかりと毛先が届いて靴クリームを全体に塗りこむことができます。
アプライブラシの毛先にクレム1925を取ります。
クレム1925の量は片足につきお米2~3粒が目安ですが、革靴が乾燥していて足りないと感じた場合は少量ずつ塗り足してください。
キャップの裏でクリームをなじませます
ブラシの毛先、面になっている部分と角を使い分けながら、靴全体から細部までクリームを塗り広げます。
面を使って広範囲にクレム1925を塗布
角を使ってコバにクレム1925を塗布
サフィールではアプライブラシで靴クリームを塗ることを推奨はしていますが、靴クリームの塗り方はさまざまで好みも人それぞれです。
塗り方ひとつとってもメリットとデメリットがあるので、いろいろ試してみて自分に合った方法を見つけてください。
クロス(布)
一般的な塗り方は、クロスで塗るという方法ではないでしょうか。
力加減がわかりやすく、ビギナーさんでも塗りやすい方法ですが、少々塗りムラができやすいです。
クリームの取り方によっては、多くつき過ぎてしまったり、繊維にしみ込んだクリームのすべてを靴に塗り込むことができない(布地に残ってしまう)ため、ブラシに比べてコスパに劣るというデメリットもあります。
指
クリームが体温で溶けてやわらかくなるので、革に浸透しやすくなる、というのが指塗りのメリット。
プロの靴磨き職人にクリームやワックスを指で塗りこむ方が多いのは、早くクリームを革になじませて仕上がりを速めることを重視しているからです。
ただし、指先が届かない細かな部分にはクリームを行き届かせにくいという難点があり、アプライブラシを併用したり、この後のブラッシングの工程を念入りに行うなどの工夫が必要となります。
また、当然ながら皮膚が敏感で肌荒れなどをしやすい方やそもそも手を汚すことに抵抗がある方にはおすすめできない方法です。


SaphirNoir(サフィールノワール) ブリストルポリッシャーブラシ
靴に塗布したクリームをすり込むブラッシング専用の豚毛ブラシです。
ブラッシングの摩擦熱がクリームの油分の浸透を促し、ワックスを靴表面に行き渡らせます。
少し力を加えて革をマッサージするように素早くブラッシングすることで、塗布したクリームが均等になじみ光沢が出ます。
豚毛ブラシで革にクリームをなじませる
黒色の靴クリームをなじませる豚毛ブラシを使って、ライトブラウンの靴のブラッシングに使うと何が起こると思いますか?
そう。ライトブラウンの靴に豚毛ブラシの毛先に残る黒の靴クリームがついてしまいます。
他の靴へのクリームの色移りを防ぐためにも、靴やクリームの色ごとに豚毛ブラシも使い分けてください。
豚毛ブラシには黒色の毛のものと白色の毛のものがありますが、黒色の靴クリームには黒毛のブラシ、他の色の靴クリームにはそれぞれ白色の毛のブラシを使うことで、
毛先に残るクリームの色によって何色のクリーム用なのかがわかるので、使い分けしやすくなります。
豚毛ブラシは色でわける

アプライブラシでクレム1925を塗った後、さらにクレム1925を重ね塗りすることでよりクリームの効果が浸透し、ワックスを丁寧に重ねたような上品なツヤ感や色の深みが出て重厚感が増します。
油性靴クリームのクレム1925ならではの裏ワザです。
クレム1925を押し込むように重ね塗る
水で湿らせたクロスに多めのクレム1925を取り、軽く力を入れて押し込むように全体へ塗り広げます。
水を2~3滴落とし、水分を散らしながらクロスでなじませるとさらに光沢感がアップします。
全体に塗り終えたら、ブリストルポリッシャーブラシで再度ブラッシングします。
SaphirNoir(サフィールノワール) ビーズワックスポリッシュ
靴クリームを塗布したあと、革靴表面に塗り重ねることで深みのある上質な光沢と優れた保革効果を与えます。
ビーズワックスポリッシュのワックス被膜は透明度が高く、皮革の風合いを活かしたまま美しい光沢を出すことができます。
革靴全体に塗り伸ばすことで、靴クリームのみを塗布した時と比べて、水や油を弾く効果(防水・防汚効果)や光沢効果が格段に向上します。
ハイシャインポリッシュクロス
ソフトでキメの細かいコットン100%のフランネルクロスです。
指に巻きつけやすい帯状にカットされており、クリームやワックスを塗りやすく、乾拭き時にも力をかけやすい靴磨きに便利、ハイシャイン(鏡面磨き)を施す際にはなくてはならないアイテムです。
ビーズワックスポリッシュをハイシャインポリッシュクロスに取った様子
水でほんのり湿らせたハイシャインポリッシュクロスにビーズワックスポリッシュを少量取り全体に塗り広げます。
※水で湿らせることで、水と油の作用によりクロスにポリッシュが残りにくくなります。
塗布量が多すぎるとワックス被膜の層が厚くなりひび割れの原因となるので、薄塗りを繰り返し様子を見ながら塗り重ねていくのがポイントです。


ハイシャインポリッシュクロスをクリームのついてない面に巻きかえて、再度水でほんのり湿らせたら、摩擦熱が全体に均一にかかるようにしっかり手早く拭き上げます。
SaphirNoir(サフィールノワール) フィニッシャーブラシ
山羊毛と馬毛の毛先を使用した、他に類をみない毛量を高密度に束ねた仕上げ用ブラシです。
これまでに紹介したブラシの馬毛や豚毛と比べて、圧倒的に細くやわらかな山羊毛は、ワックス被膜の細かな傷やくもりなどを繊細な毛先が生み出す熱で整え、さらなる光沢を引き出します。
日本の伝統的工芸品"熊野筆"の技術を活かして作られたフィニッシャーブラシは、靴磨きの仕上げレベルを数段階も引き上げてくれるチートアイテムです。
フィニッシャーブラシによるブラッシング
フィニッシャーブラシの毛先に数適の水をなじませたら、毛先だけが触れるようにやさしく手早くブラッシングします。
ビーズワックスポリッシュを塗布してツヤを出した後は、豚毛ブラシのようなコシ・張りのあるブラシでブラッシングすると、ワックス被膜の表面にキズが入りせっかくの光沢が鈍ってしまいます。
繊細な山羊毛の毛先はワックス被膜表面にすき間なく摩擦熱をかけることで僅かな傷やこすれ、微妙な凹凸を均一に整えます。被膜が平滑になればなるほど、より透明感のある光沢を生み出すことができます。

Sleipnir(スレイプニル) ハイシャイングローブ
主に乾拭きのあとの仕上げ磨きのための専用グローブクロスです。
化繊(ポリエステル)を使用し、コットンクロス以上の摩擦熱をかけることができるので、より強い光沢を生み出すことができます。
グローブ型だがあえて折り畳んでクロスのように使用するのが通
コットンクロスの乾拭き後やフィニッシャーブラシのブラッシング後、水を一滴グローブになじませて手早く磨き上げることで、摩擦熱が塗布されたポリッシュや靴クリームに作用し、革表面のくもりを取ります。
摩擦熱が発生しやすい化繊のハイシャイングローブは、世間で言われる「ストッキングで磨くと光る」のと同じ原理でさらに光沢感を引き上げます。
9番目の工程 フィニッシャーブラシで、万が一ブラシの筋がついてしまっても、ハイシャイングローブで軽く擦るだけできれいに整いますのでご安心を。

サフィールノワールを使った基本のお手入れをお伝えしました。
工程も多く、道具もたくさん使うように思いますが、それぞれに役割があり効果が異なります。
またこの手順を毎日やらなきゃいけないとなると大変ですが、一度しっかりとお手入れすればだいたい月に1回のお手入れで靴は驚くほど長持ちするようになります。
まずはこの「月に1度の靴磨き」を習慣化していきましょう。
見事習慣化できて、さらに革靴を輝かせたい方は、ハイシャイン(鏡面磨き)に挑戦してみましょう。
ハイシャインもまずは基本のお手入れを終えてから。しっかりと基本のお手入れができているとハイシャインも光らせやすくなり、群を抜いた美しい仕上がりも間違いありません。
サフィールノワールは、他のブランドとは一線を画す優れたポテンシャルを持っているので、しっかりと効果と性能を活かして適切なお手入れを行うことで革靴を美しくキープすることができます。
サフィールノワールを使えば、誰もがプロフェッショナルな仕上がりに満足することができるでしょう。
本記事で紹介した商品はこちらで購入できます。














