大切なバッグや財布などの革小物を使い続けていると、どうしても避けられないのが角スレや色あせです。
そちらをカバーしようと色つきの靴クリームを塗布するのは、、、実はNGです!
基本的に、靴クリームとして販売されている物を革靴以外に使用することは避けた方がいいでしょう。
・デリケートクリーム
・レノベイタークリーム
・デリケートクリームの効能
・デリケートクリームの使い道
・プロも使う技術
・困ったときにはレノベイタークリームを
・レノベイタークリームの効能
革小物の角スレや色あせをカバーしようとして色つきの靴クリームを塗布すると、衣服に色移りして汚れてしまいます。
定着したと思っても雨や汗で色落ちすることがあるので、色つきの靴クリームは革小物に塗布しない方がいいでしょう。
厚めの革で作られていることが多い革靴にたっぷりと栄養を与えるため、靴クリームは多くの油分が含まれています。
そんな靴クリームを革小物に塗布すると、革の色を濃くしてしまい、場合によってはシミになってしまう恐れがあります。
また、革が吸収しきれなかった油分が表面にいつまでも残り、ベタつきの原因となり、洋服などとこすれた際に油分が衣服について油ジミになってしまうこともあるかもしれません。
ちなみに、レザークリームを革靴に塗布するのは何ら問題ありませんが、革靴に特化した靴クリームにしか出せない光沢感には劣り、補色もできません。
革用のクリームはたくさんありますが、どのメーカーも用途に最適な処方で作られているので意識して選ぶようにしましょう。
クレム1925やビーズワックスファインクリームなど靴クリームのイメージが強いサフィールですが、靴に限らず革小物に最適なレザークリームも数多くのラインナップがあります。
その中でもブランドを代表するほどの人気を誇るシリーズなのが、「デリケートクリーム」と「レノベイタークリーム」です。
SAPHIR(サフィール)と、その上位ラインのSaphirNoir(サフィールノワール)双方から発売されているこれらのシリーズですが、ご覧のとおり見た目は瓜二つ。
しかし、似て非なる両者の特徴を今回はご紹介していきます。
SAPHIR(サフィール)
まず、本題に入る前に知っておいていただきたいのが、SAPHIR(サフィール)とSaphirNoir(サフィールノワール)の違いについて。
SaphirNoir(サフィールノワール)の方が高価な高級ラインというのはご存知かと思いますが、その理由は成分の品質と配合比率です。
どちらも選りすぐられた天然原料を成分としていますが、SaphirNoir(サフィールノワール)の方がよりリッチな高品質の原料を多く配合していることが最大の特長です。
SaphirNoir(サフィールノワール)
ブラックを基調としてゴールドのロゴをあしらえたロゴや、美しいガラス製の器の商品が多いSaphirNoir(サフィールノワール)は、その見た目からも高級感が漂います。
それでは本題に参りましょう。
あまり革製品のお手入れについて詳しくない方でも、なんとなく聞いたことのある「デリケートクリーム」という商品。
その名の通り、デリケートな革にも使うことができるレザークリームの中で最も安心感のあるクリームです。
デリケートな革というのは、表面加工を行っていないヌメ革やシープスキン(羊革)などの油分や水分を吸収しやすい革のことを指します。
特徴として、色が淡く、やわらかさのある革であることが多いです。
ヌメ革を使った財布
そのような革にクレム1925のような動物性油分が豊富に含まれた靴クリームを塗布するとシミになりやすく、ワックスにより光沢が出てしまい、素材本来の質感を失ってしまう恐れがあります。
クレム1925を塗布して乾燥させたヌメ革
一方、デリケートクリームは成分の大半が水分で作られており、油分はシミになりにくい植物性のものがほとんどです。
塗布した直後は革が水分を吸って色が濃くなっても、すぐに蒸発するので色の濃さが残りにくく、シミとして残りません。
デリケートクリームを塗布して乾燥させたヌメ革(全体にまんべんなく塗布すればシミになりません)
SAPHIR(サフィール)「デリケートクリーム」とSaphirNoir(サフィールノワール)「スペシャルナッパデリケートクリーム」は、植物由来の天然原料であるホホバオイルと小麦プロテインが配合されています。
ホホバオイルは乾燥した砂漠地帯に生息するホホバという植物の種子から摂取されるオイルです。
高温少雨という過酷な環境でも育つことができるホホバから採れるホホバオイルは保湿効果に非常に優れており、革に潤いを与えます。
ホホバの実
小麦プロテインも同様に、保水・保油効果に優れており、水分や油分を取り込んで革に浸透させて保湿効果を持続させる効果があります。
また、保湿効果が高いだけでなく、プロテインというだけありタンパク質を含んでいます。
動物の皮は主にコラーゲンなどのタンパク質からできていますが、皮から革へ加工されると自己再生ができません。
デリケートクリームに含まれる小麦プロテインは、失ったタンパク質を外側から与えることができるのです。
小麦
デリケートな革に最適な理由として、溶剤とワックスが不使用という点も挙げられます。
溶剤を含むクリームは、革の色落ちやツヤ加工を落としてしまうというリスクがありますが、デリケートクリームにはその心配がありません。
また、ワックスが含まれないので光沢を出さず、革本来の質感を失わずに済みます。
ちなみに…
「スペシャルナッパデリケートクリーム」のナッパという言葉はナッパレザーを由来としており、非常にやわらかくデリケートな高級革であるナッパレザーにも使えることを意味しています。
デリケートクリームはデリケートな革専用というわけではなく、靴クリームを塗布する前の“下地”として使うことも推奨されています。
前述したように、一般的な靴クリームは油分が多く含まれており、革に塗布すると急速に油分を吸収して革の色を濃くしたり、場合によってはシミになってしまうことがあります。
そうならないように下地としてデリケートクリームを塗布しておくと、急速な油分の吸収を抑えることができて安心です。
買ったばかりの新品の革靴や革小物をおろす前に行う“プレメンテナンス”でもデリケートクリームは活躍します。
新品の革製品は乾燥していることがほとんどなので、クリームを塗布する前の下地として使ってみてください。
外側だけでなく内側(ライニング)にもデリケートクリームは塗布することができます。
革靴の内側も革でできているので、デリケートクリームを塗布することで硬い革がやわらかくなって足になじみやすくなり履きやすくなります。
靴磨き選手権大会2023
一般社団法人 日本皮革製品メンテナンス協会主催の「靴磨き選手権大会」でも、デリケートクリームを下地やライニングに塗りこむプロの靴磨き職人の姿が多く見られました。
大会では靴を生成する工程で最終の仕上げ剤を塗布されていない“素仕上げ”の革靴が用意されていたので、巷で販売されている革靴よりもさらに靴クリームによる影響が出やすくなっていました。
デリケートクリームでの丁寧な下準備は、そんな革靴を美しく磨き上げるためのプロの技でもあるのです。
・デリケートな革にも安心
・失敗が少ない
・プレメンテナンスに最適
・靴クリームの下地におすすめ
デリケートクリームと違い、あまり聞きなじみのない種類だと思われた方もいるかもしれませんが、「レノベイタークリーム」とはそのような種類のクリームがあるのではなく、サフィールから誕生したオリジナルのクリームです。
こちらのレノベイタークリームは革靴にも革小物にも使えて汎用性が高く、プロの靴磨き職人にもファンが多くいます。
隠れた名品 サフィールノワール レノベイタークリーム
2020年9月に投稿されたこちらの記事では「隠れた名品」と紹介されていますが、数年経った今ではもはや隠しきれなくなるほどの人気を博しているサフィールを代表する名品です。
“Renovator”は復元や修復という意味がありますが、その名のとおりダメージを受けた革に塗布すると、ぐんぐん栄養を吸収したかのように革がふっくらとよみがえります。
靴クリームのクレム1925ほどガツンと油分が豊富なわけじゃないので扱いやすく、デリケートクリームよりも栄養が豊富なのでこれ1つでお手入れは十分。
「困ったときにはレノベイタークリーム」と覚えておいても過言ではない、誰にでも使いやすい優秀なクリームなのです。
デリケートクリームの成分は植物性ですが、レノベイタークリームは動物性のビーズワックスやミンクオイルが配合されています。
ビーズワックスは、ミツバチが巣作りのために分泌するロウ成分を抽出したもので、ミツロウ(蜜蝋)とも呼ばれます。
光沢を与える役割だけでなく、革に浸透して保革効果を持たせる役割も担っており、革用のクリームには欠かせない素材です。
ビーズワックス
ミンクオイルはそのまま「ミンクオイル」として販売されているクリームやスプレーとしてご存知の方も多いと思いますが、イタチ科のミンクの皮下脂肪から採取される油分のことです。
ミンクオイルそのものを塗りすぎると型崩れの原因になってしまうほど革をやわらかくする特性があり、硬い革をふっくらさせる効果があります。
また、キズを目立たなくする効果にも大変優れています。
細かなかすりキズ程度であれば、少量を指で塗りこめば簡単にキズを消すことができるほどで、筆者は使うたびに人間用のオロ●イン軟膏を連想してしまいます。
ミンク
そんな革用クリームの成分として代表格であるビーズワックスとミンクオイルが含まれているレノベイタークリームは、革にとって嬉しいメリットがたくさんあるのです。
乾燥してカサカサする、小キズが気になる、などのお悩みのある革にはレノベイタークリームをおすすめします。
・汎用性がある
・革をふっくらやわらかくする
・キズをカバーする
・光沢を出す
スペシャルナッパデリケートクリーム、レノベイタークリーム、そして靴クリームのクレム1925をヌメ革に塗布した際の反応を比較してみましょう。
塗布した直後
塗布した直後はスペシャルナッパデリケートクリームが最も革の色を濃くしたので心配になりましたが、水分が多いので一気に革に吸収されたからだと思われます。
クレム1925は塗布しただけでも光沢感が現れました。
塗布してから5分後
塗布してから5分後にはスペシャルナッパデリケートクリームは乾燥が進み、色が薄くなっています。観察していると、水気が乾いていくような感覚で徐々に乾燥していくのが見て取れます。
一方、クレム1925とレノベイタークリームは完全に乾燥した後でも革の色を濃くしたままでした。
やはりヌメ革に動物性油分が豊富に含まれたクリームを塗布するのは、予期せぬトラブルの原因となりかねないので避けるのが無難でしょう。
今回ご紹介した2つのクリームは、見た目は似ているものの、それぞれの効能には大きな違いがあります。
大切な革製品を長く美しく保つためには、革の特性に合ったクリームを選ぶことがとても重要です。
正しいお手入れを知ることで、さらに愛着が湧くこと間違いなしです!
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