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公開日:2021/06/14    /  最終更新日:2021/08/27

サフィール製品の製造工場へ訪問。あるライターが書き記したレポート

世界中で愛され続けているシューケアブランド「サフィール」。以前にも、製品作りに架ける思いやポリシーについて、サフィールのメーカーアベル社のことなどをご紹介してきました。

世界を代表するシューケアブランド“SAPHIR サフィール”とは。

世界を代表するシューケアブランド“SAPHIR サフィール”とは。その2

 

さて、このグローバルブランドであるサフィールの製品は、一体どんな所でどんな風に作られているのか、気になりませんか?
海外のブログサイト❝shoesgaizing❞で公開されている、サフィール工場への訪問レポート記事をご紹介します。

引用元:Report – Saphir factory visit
サイト名:shoegaizing
著者:Jesper Ingevaldsson(イェスパー・インゲバルドソン)氏

レポート – サフィール工場訪問

2020年に創業100周年を迎えた老舗でありながら新しいシューケア製品とレザーケア製品を生み出し続けている、おそらく世界一有名なシューケア製品メーカーがサフィールだ。
Shoegazing(シューゲイジング)はフランス東部にある同社工場を訪ねた。

近代的な工業地帯に囲まれ、魅力的な歴史を今も残す小さな町アングレームの郊外。農場、畑、牧場が広がる田舎の真ん中に、サフィールの巨大な工場複合施設が建っている。先ごろ、最先端の物流倉庫とオフィススペースがここに開設された。工場が入っている70年代に建てられたコンクリート壁の古い建物とは対照的だ。ここで、古いものでは100年以上受け継がれてきたレシピでシューケア製品が製造されている一方、研究所では新製品の開発が行われている。古いものと新しいもの、歴史あるものと現代的なもの、管理と革新がサフィールでは共存している。

倉庫、本社、ショールームが入ったサフィール新社屋の一角

倉庫、本社、ショールームが入ったサフィール新社屋の一角

サフィール製品を製造するアベル社のマーク・ムーラ社長

サフィール製品を製造するアベル社のマーク・ムーラ社長

アベルのマーク・ムーラ社長が古い建物の木のパネルが特徴的なオフィス部分へ案内してくれた。壁には100年の歴史を彩る数々の表彰状が飾られており、ショールームには選りすぐりの過去の製品が展示されている。サフィール製品を製造しているアベルは、アルマグループ傘下の企業。現社長の父アレクサンドル・ムーラ氏が1977年に創業した。その2年後、フランスのシューブランドの老舗サフィールを買収。これを足掛かりにシューケア業界でのプレゼンスを世界に拡大していく。現在、サフィールをはじめ、タラゴ、コルドヌリ・アングレーズのほか、ダンケルマン&サンが展開するダスコなどのブランドを擁し、シューツリーの製造工場を1棟所有している。ことに高級靴のケアにかけては、世界にその名を轟かせている。
その地位を今後も長く維持していきたいとムーラ社長は明言する。
「すべてのブランドに強固な基盤があり、中でもサフィールの素晴らしい靴クリームとワックスは1920年代に誕生し現在も愛されています。しかし、ブランドと新製品の開発を続けることで、私たちは現在の地位を築いているのです」

オフィス部分の上階は製造スペースになっている。原材料を扱う部屋では、レザーケア製品の一部となる最初の工程を経る前にスタッフが大きなワックスのかたまりを砕いている。

巨大なワックスの塊を砕く

巨大なワックスの塊を砕く

粒状になった別のワックス

粒状になった別のワックス

これを元にたくさんの靴クリームが作られる

これを元にたくさんの靴クリームが作られる

アベルで使用されているさまざまな種類のワックスの一部

アベルで使用されているさまざまな種類のワックスの一部

靴クリームとワックスの主原料となるさまざまなワックスは、多くのレザーケア製品にも使われている。社長によると、鉱物系、動物系、植物系に分類されるさまざまな特性を持つ約40種類のワックスがレザーケア製品に使用されている(石油系ワックスは使用していない)。製品によってはさまざまなオイルも使用されている。世に出回っている靴クリームとワックスポリッシュのほとんどはだいたい同じ材料を使用している。違うのは、たとえば原材料の配合と質で、安価な製品にはシリコンなどの合成物質が多く使用されている。

サフィールではそのような材料は一切使用していない。しかし、溶剤として使用されているテレピン油は天然物質だが引火性が高いため、町中の工場では扱うことができない。

「いくつかの原材料の価格高騰が課題です。たとえば、ポルトガル産のテレピン油は数年前より25パーセント以上値上がりしています。シアバターには美容品メーカーが群がり、カルナバワックスは近年自動車業界で需要が高まっていて、値段が上がっています」

サフィールノワールに使用されている天然染料はそれぞれ形状が異なる。これは茶色を出すための粉末

サフィールノワールに使用されている天然染料はそれぞれ形状が異なる。これは茶色を出すための粉末

これは黄色を出すための液体

これは黄色を出すための液体

薄くデリケートなレザー用のサフィールデリケートクリームの瓶詰め作業

薄くデリケートなレザー用のサフィールデリケートクリームの瓶詰め作業

製造ラインを流れていく

製造ラインを流れていく

フタをして大きな箱に詰められる

フタをして大きな箱に詰められる

製造の大部分は工場のいちばん広い部屋で行われており、さまざまな製品と包装を扱う機械を用いるさまざまなパートがある。シューケアは比較的小さな産業なので、このような製造工程の標準的な機械がないことが多く、サフィールは独自の解決策を講じなければならなかった。よって、機械全体の写真掲載は差し控える。

「たとえば、缶詰め作業などの高度な自動化を図っています。これが高価な高品質の原材料を使用していても競争力のある価格を維持できる一因です」と話しながら社長が点検する機械の上をゆっくりと流れていくワックスの缶の長い列がトンネルのようなところに入っていき、バーガンディのワックスポリッシュが詰められる。

缶に詰められたばかりのバーガンディのワックス。熱い液体(本記事のトップ画像)が注がれてからほんの数分、あっという間に固まる

缶に詰められたばかりのバーガンディのワックス。熱い液体(本記事のトップ画像)が注がれてからほんの数分、あっという間に固まる

別の機械で瓶詰めされたレザー染料が箱に落とされる

別の機械で瓶詰めされたレザー染料が箱に落とされる

新設された近代的な倉庫

新設された近代的な倉庫

工場の2倍の広さはありそうな新しい建物に足を踏み入れると、雰囲気がガラリと変わる。天井がとても高い倉庫部分は耐火構造で、製品にダメージを与えないようにスプリンクラーの代わりに泡消火装置が設置されている。この建物には約750万ユーロが投資された。

しかし、今回の訪問で私がいちばん感銘を受けたのは、開発のほとんどが行われる同社の研究所だ。同社の開発の歴史を担ってきたこの場所で、すべてがひとつになる。そして、柔軟性のある小規模生産者という大企業のおもしろい側面を見られる。スペインにあるタラゴの工場と同じく2人の化学者が勤務しているこの場所で、新製品が生み出されている。しばしば、顧客の意見を受け。あるいは、さまざまなプロのシューシャイナーと協働して。私が訪問したとき、レノベイタークリームとレノマットリムーバーを足して二で割ったようなサフィールノワールシリーズの新しいレザークリーナーの開発が大詰めを迎えていた。私は若干異なるレザーで製品試験に参加し、実際にコンディショニングクリーナーと命名した。

研究所の棚には、必要に応じてさまざまなバッチに遡ってチェックできるように過去2年間に製造された製品の瓶、チューブ、ボトルがずらりと並んでいる。さらに、開発したさまざまなサンプルが多数保管されている。多くはさまざまな理由で、または開発の初期段階で完成に至っていない。
「研究所にはよく顔を出します。ここは刺激的で、とてもおもしろいことが起きる場所なんです」
興味深いのは、ここでは企業と個人からさまざまな“ビスポーク”の注文も受けていることだ。たとえば、きわめて特殊なレザーの色合いを求められれば、希望どおりの製品を作る。世界で80の市場に定着しているという意味では巨大企業といえる会社がこのような小口の特別注文にも対応するとは、最高にクールではないか。
「このような製品を開発できるチャンスはなかなかありません。儲かりはしませんが、レザーケアこそが私たちの使命であり、私たちにできることをしたいのです」

工場の研究所は実に興味深い場所だ

工場の研究所は実に興味深い場所だ

サンプルのほかたくさんの製品が丁寧に並べられている

サンプルのほかたくさんの製品が丁寧に並べられている

これは過去2年間に製造された各バッチからの製品

これは過去2年間に製造された各バッチからの製品

環境に配慮した新しい防水スプレーのテスト

環境に配慮した新しい防水スプレーのテスト

顧客が希望するブルーグレーの色味を出すために研究所で最適なトーンを追究する

顧客が希望するブルーグレーの色味を出すために研究所で最適なトーンを追究する

ほかのカラーサンプル

ほかのカラーサンプル

たくさんの試験管とビーカーを使い分ける

たくさんの試験管とビーカーを使い分ける

長年にわたり同社の製品が受賞してきた数々の賞のひとつ

長年にわたり同社の製品が受賞してきた数々の賞のひとつ

数カ所あるショールームの一角

数カ所あるショールームの一角

いかがでしたでしょうか。

それにしても、現地に赴いて気軽に見る、なんてもちろん出来ないだろうし、その上、現在日本でも発売されているサフィールノワールのコンディショニングクリーナーの誕生時に立ち会えるなんて、著者のイェスパー・インゲバルドソンさんが羨ましいですね!
貴重な体験のお裾分け、製造風景が垣間見えて、サフィールがますます身近に感じられましたのではないでしょうか。

ShoesLifeでは、これからも靴磨きやレザーケアに関する海外情報を皆様にお届けします。
次回もお楽しみに!

Le Beau
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