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公開日:2022/07/29 / 最終更新日:2022/07/29

熊田靴店 SAPHIR FRIENDS オーナーインタビュー その1

諦めていた靴が息を吹き返す
人好き店主のシューシャイン

「熊田靴店」 店主 熊田圭一郎氏

代々木八幡駅から渋谷へと抜ける道沿いに、個性溢れるショップや飲食店が連なる富ヶ谷一丁目。その商店街の一角に店舗を構える「熊田靴店」。中に入ると、看板犬のボストンテリアと笑顔が優しい店主のくまちゃんこと、熊田圭一郎氏が迎え入れてくれる。人と靴、そして富ヶ谷をこよなく愛する熊田氏に店をオープンした経緯や靴磨きにかける想いを聞いた。

サフィールに出会い、靴磨きにハマった学生時代


渋谷駅前の喧騒を抜けた奥渋谷・富ヶ谷にある「熊田靴店」。靴クリームやブラシ、靴修理の機械などが整然と置かれた工房のような店内で靴を磨いているのは、店主でシューシャイナーの熊田圭一郎氏だ。

 

熊田氏のシューシャイナーとしての原体験は、高校時代にあるという。「高校生の頃は野球部に所属し、寮生活をしていました。ケガをきっかけにプレイヤーからマネージャーに転身し、チームメイトの野球道具を磨くようになったのですが、チームメイトから『おまえが磨いたグローブは使いやすい』と言われたことがあって。それから道具を磨くのが楽しくなりました。自分自身も、小学校6年生のときに買ってもらったグローブをメンテナンスしながら高校生活の最後までずっと使っていましたね」。


高校までは野球一筋。寮生活だったこともあり、私服といえばジャージだった。その反動からか、大学入学と同時にファッションに興味をもつようになり、アルバイト代を貯めて〈レッドウィング〉のワークブーツを手に入れた。

 

そこからますます革靴に魅了され、大学生ながら欧米の革靴を買い求めるようになり、同時にシューケアにもハマった。当時は靴磨きの技術やアイテムを紹介するコンテンツはあまり出回っておらず、試行錯誤の日々。いろいろな技術やクリームを試し、夜な夜な靴を磨いた。


サフィールを使い始めたのもこの頃だ。量販店でひときわ高級感のあるクリームを見つけて、思い切って購入したところ、ケアした後の革の状態のよさや光り具合など、これまで使っていたクリームとの違いに驚いた。

サフィールに出会ったことで、熊田氏はますます靴磨きに引き込まれていったのだ。
※熊田氏とサフィールの出会いは、こちらの記事を参照

【熊田靴店 熊田さん寄稿】『サフィールとの出会いについて』

教員時代に身につけたコミュニケーション力を武器に


大学卒業後は小学校の教員となり、忙しい生活が始まった。息抜きはハイボールを片手に靴磨きをすること。そんな生活を5年ほど続けたが、体調を崩して退職することに。そして、友人から紹介してもらった富ヶ谷にある古着屋の店先を借りて靴磨きをするようになった。

 

店先に小さなテーブル一つと数種類のクリームを置き、冬の寒空の下で靴を磨く。すると、少しずつ客足が増え、半年経つころにはテーブル一つでは手狭になるほど靴を預けてもらえるようになった。


古着屋の店先での靴磨きがそれほど人気となったのは、靴磨きの腕はもちろんのこと、その接客スタイルにも秘密があるようだ。熊田氏は靴を預かる際、お客様の「主訴(しゅそ)」を大切にしているという。端的にいうと、お客様が真に求めていることを受け止めること。
これは、教員時代に児童や保護者と話す中で身についたコミュニケーションなのだとか。

 

「例えば鏡面磨きをしたいと言って来店された場合、特別な日のために靴を磨くのか、毎日履く靴を身だしなみとして磨くのか、スニーカーであれば新品のようにきれいにしたいのか、味わいを生かしたまま仕上げたいのか。お客様が求めているものによって、同じ靴でもアプローチの仕方は違ってきます。修理でも同じです。話を聞いた上で、お客様が想定しているよりも手頃な価格でメンテナンスできる方法を提案することもあります」。

そうやってコミュニケーションを大切にするうちに、いつしかお客様が増えていたのだ。


断らない姿勢も熊田氏の接客スタイルだ。

 

「どんなに状態が悪い靴でも、また履くことができるように何とかやってみたいんです。予算が厳しい場合は、予算を抑えながらお客様が求めていることに近づく方法を提案しますし、復活が難しそうな靴は満足してもらったらお代をいただくという感じで、出来高払いで預かることもあります」。

熊田氏の熱意が引き寄せた、思わぬ助け舟


古着屋の店先が手狭となり、「自分の店をもちたい」と考えるようになった熊田氏。

だが、物件探しは難航した。

お客様が定着している富ヶ谷に店を構えたいけれど、賃料は思いのほか高い。通りから目に留まる路面店にしたいし、靴修理の機械を置くスペースも欲しい…。

条件を考えるとなかなか合う物件が見つからず、不動産屋に「諦めます」と告げて、古着屋の店先に戻ろうとしていた。

 

「諦めることを伝えたら、富ヶ谷不動産の社長から電話で呼び出されたんです。せっかく物件探しに協力したのにと、怒られるんだと思っていました。そうしたら、『靴磨き屋やりたい?』と言われて。『はい』と答えると、『じゃあうちの事業としてやってみる? 靴磨き、カッコいいじゃん』って(笑)。それで、富ヶ谷不動産の靴磨き事業部として、店をやらせてもらうことになりました」。

 

この幸運は、きっと熊田氏の熱意が引き寄せたものなのだろう。古着屋の店先で2021年1月に靴磨きを始め、同年8月には現在の店舗をオープンさせた。


富ヶ谷といえば、近年面白い店が増えて注目されている奥渋谷にあり、ファッション系やクリエイティブ系の企業が多く、おしゃれな大人が集う街だ。高級住宅街に隣接していてセレブリティも多い。

とはいえ、個人商店が連なる商店街に活気があり、下町風情も残る。そんなごちゃまぜ感が富ヶ谷らしさだ。

 

「うちも若い方から上は89歳のおばあちゃんまで、ありがたいことに幅広い層のお客様に恵まれています。富ヶ谷はショップ同士も仲がいいので、行きつけのコーヒー屋さんがお客様を紹介してくれたり、逆に僕がお客様におすすめの店を紹介したり。新しくできた店でも懐深く受け入れてくれて、人が温かいのが富ヶ谷の魅力です」

 

長く履いて欲しいから。諦めていた靴を復活させるシューシャイン


店をオープンして間もなく、熊田氏はサフィール シューケアトレーナー資格を取得した。
資格を得たことで、お客様、そして靴との出会いは格段に広がったという。

 

「これまでも靴を磨かせてもらっていたお客様が、高級紳士靴をたくさん持ってこられるようになって、『これまでは腕を試していたんだよね、ごめん』と(笑)。希少なビンテージ靴を持って来られる方もいますし、思い入れのある大切な靴を持ってきてくれる方もいます。靴が好きな方は皆さんサフィールを知っているので、お客様からの信頼度が上がり、これまで以上にいろいろな靴を預けてもらえるようになったと感じています」


今では、熊田氏の元にさまざまな靴が持ち込まれる。

「これって磨ける?」と、相談ベースで持ってくるお客様も多い。

 

「諦めていた靴が靴磨きによって息を吹き返し、また履いてもらえるというのは、この仕事の一番の醍醐味だと思っています。革靴はメンテナンスをすれば、ちゃんと光るし、長く履くことができます。うちは中古靴に修理や磨きを施して店頭で販売していますが、きちんと手入れをした靴は価値が上がります。そういった靴磨きの魅力を伝えていける店にしたいですね」


「人と話すのが好き」という熊田氏の飾らない接客スタイルや看板犬が迎え入れてくれる和やかな雰囲気は、おしゃれだけれど、どこかゆるい富ヶ谷の街によくなじんでいる。
「熊田靴店」はオープンして間もなく1年。これからますます富ヶ谷で愛されていくのだろう。

 

次回の更新では、「熊田靴店」のメニューやサービスについて詳しく紹介する。

熊田靴店

TEL:090-1558-9907

東京都渋谷区富ヶ谷1-44-16-B1(商店街側1階)
11:00〜19:00
月曜定休(祝日の場合は、翌日が休み)

https://www.kumada-kutsuten.com
https://www.instagram.com/shoeshiner.bear/

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