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くすみのシューケア生活
今回はカジュアルな革靴の代名詞的ブランド・パラブーツについてのご紹介です。
ただカジュアルというだけではなく、ハンドメイドでこだわった作りなのもパラブーツの魅力でもあり、そのあたりもお伝えできればと思います。
パラブーツといえばこれ!という定番モデルと、お手入れ方法やラスト(木型)についていろいろとご紹介していきますので、パラブーツをお持ちの方・ご検討中の方も是非ご覧ください。
1908年に創業したフランスのブランド・パラブーツ [Paraboot] 。
100年以上の長い歴史の中でフランスの靴文化を築いてきたブランドと言っても過言ではありません。製法や素材選定に強いこだわりのあるシューメーカーで、カジュアルなドレスシューズのアイコンブランドとしても世界で認知されているブランドです。
アマゾンの港・パラ [Para] から輸入する天然ゴムを使用したことがブランド名の由来にもなっているとおり、自社で製造するゴム底は耐摩耗とクッション性に優れたソールで、パラブーツを象徴する要素でもあります。
ソールもいくつか種類がありますが、代表とされるテックスソール [Tex Sole] は雨でも滑りにくく、さらにクッション性が高いのに安定感があるので長時間履いても疲れにくいのも特徴です。
また、リスレザー [Lisse Leather] というオイルドレザーもパラブーツならではの素材で、オイルを多く含むことで雨に強いのが特徴です。ちなみに、リスと名前のついた革ですが牛の革です。
お手入れ方法なども後ほどご紹介してまいります。
グッドイヤーウェルテッド製法という高級紳士靴によく見られる製法の靴も展開していますが、やはりパラブーツの製法といえばノルウィージャン(ノルヴェイジャン)製法です。登山靴を作っていたこともあり、耐浸水を目的とした製法です。
浸水を抑えるだけでなく見た目通り耐久性もありつつ、ボリュームのあるソールはカジュアルな装いにも相性の良い製法です。
靴に縫い付けられたブランドのタグも一目で「パラブーツだ!」を判別できる、ブランドを象徴する意匠のひとつです。
今回ご紹介する4つ以外にもパラブーツを代表するモデルはいくつかあります。
など、他にもグルカサンダルやオックスフォードシューズなども展開されていますが、今回フォーカスしていきたいのはこちらの4つ。
パラブーツのアイコンモデルのひとつ、シャンボード。
所謂Uチップダービーというデザインで、通称「拝みモカ」などとも呼ばれる合わせ縫いのモカシンステッチのUチップです。
全体的に丸みのあるシルエットとノルウィージャン製法のボリューム感、アッパーはシンプルで繊細なデザインなので、スマートカジュアルという位置付け。黒ならジャケパンスタイルに合わせる方もいらっしゃいますし、もちろん太めのパンツに合わせるカジュアルシューズとしても活躍する、高い汎用性が魅力的なデザインです。
型押しやオイルドヌバックのシャンボードもあり、よりカジュアル感の強い印象になりますが、やはり黒のリスレザーでノルウィージャンのシャンボードはパラブーツの代表作として、各メディアや雑誌だけでなくインスタグラムでもよく目にするモデルです。
同じくUチップダービーのアヴィニョン。
つま先の先端に縫い目があるため、スプリットトウダービーとも呼ばれるモデルです。また、エプロン部分は、通称「乗せモカ」と呼ばれる意匠であることと、トウシェイプもシャンボードよりすっきりしていて甲が薄いので、より上品な印象となります。
履き口の切り替えのデザインと上向きに縫い付けられたタグも、同じUチップでもシャンボードとは違った魅力があっておもしろいところです。
同じくパラブーツのアイコンシューズ、ミカエル。
誕生してから70年以上モデルチェンジをしていないロングセラーとしても知られています。
チロリアンといえば、アルプス・チロル地方が起源の登山用靴という扱いで、堅牢性や耐水性など機能性が高いアウトドアな履物だったわけですが、それをタウンユースというポジションに昇華させたのがこのミカエルです。
ただ、機能面は劣ったわけではなく、モカシンに革を被せる「被せモカ」やノルウィージャン製法で浸水性をカバーしています。
こちらは比較的新しい2016年に誕生したダブルモンクストラップ、ポー。
同じく定番のダブルモンク・ウィリアムよりもややノーズが長く、土踏まずが絞り込まれた511という木型が採用されています。
同じノルウィージャンですがステッチの色も黒ということもあり、ウィリアムよりドレス要素が強く、パラブーツ特有の履き心地を保ったままビジネスでも合わせやすい靴に仕上げられています。
リスレザーに代表されるオイルドレザーは油分が多いことで、肉厚な革でももっちりとした弾力があり、時間をかけて足に馴染んでいくのが特徴です。
オイルを多く含むのでツヤは比較的少ないのですが、オイルドレザー専用のクリームを使うのが安心です。
そこで、サフィールノワールのオイルドレザークリーム。
動物性油分のニートフットオイルと植物性油分のホホバオイルを主成分とし、ツヤを出すためのロウ分は含まれていないため、マットな質感のオイルドレザーには最適です。
革にしっかり油分を補給し、柔軟性を高める効果があります。油分が主成分ですがベタつきはなく、サラッと仕上がるのも特徴です。
クリームの色展開はありませんが、革はオイルを含むと発色がよくなるので、これひとつでオイルドレザーの革靴のお手入れは十分でもあると言えましょう。
こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
パラブーツの木型やシューツリーについても少しご紹介をさせていただきます。
パラブーツの靴は、もともと登山用やアウトドア用の靴なので、厚手の靴下で履くことを想定したものが多く、甲が高い靴が多いこともあります。
特にシャンボードのラスト283や、ミカエルのラスト110は全体的に丸みが強いので、甲でしっかりと足をホールドできず前滑りして小指が痛くなるというお悩みが、僕のところにも寄せられます。
ポー 511 |
194を全体的に更にすっきりさせたドレッシーなラスト | ・捨て寸がある長めのラスト ・甲も普通の高さ |
アヴィニョン 194 |
ドレスとカジュアルの中間のラスト | ・パラブーツらしい丸みと先端に向かって若干細くなるつま先 ・283ラストに比べると甲も低い |
シャンボード 283 |
元々アウトドア用(カジュアル用)として作られたので 厚手の靴下を履く想定だったので甲が高い |
・捨て寸少ないぼってりしたラウンドトゥ ・甲が高い ・コバの張り出しも大きい |
ミカエル 110 |
元々登山用として作られたラスト 登山用の一番厚い靴下前提のラストなので一番ボリュームがある |
・一番ボリュームのあるぼってりしたラスト ・283よりも幅も大きく甲も更に高い |
先ほどもご紹介したようにポーやアヴィニョンはやや甲が低めで、ドレススタイルで履く薄い靴下でも問題ありませんが、シャンボードやミカエルは厚い靴下で履いていただくか、インソールやタンパッドで調整をしてあげると履きやすくなる場合が多いです。
もちろん足の特徴によって合うもの合わないものがあるので、お店で履き比べをしていただくのが一番です。
また、オイルドレザーと言っても油分が少なくなると劣化が進むので、是非クリームを塗ってケアをしていただきたいのですが、さらにシューツリーを入れて靴の保形をすることでシャンボードなどのモカシンが割れる「モカ割れ」も予防することができます。
特にシャンボードやミカエルは甲が高めなので、しっかり甲をサポートしてシワを伸ばせるツリーを選べることも重要です。
純正のツリーがあれば問題ありませんが、もしそうでない方は参考にしてみてください。
それぞれのラストに合うツリーもご紹介します。
ポー 511 |
|
アヴィニョン 194 |
Sleipnir トラディショナル LCA EM260S |
シャンボード 283 |
Sleipnir トラディショナル LCA EM260S |
ミカエル 110 |
Sleipnir トラディショナル |
厚手のインソールおすすめ商品
※サイズあり
また、オイルドレザーと言っても油分が少なくなると劣化が進むので、是非クリームを塗ってケアをしていただきたいのですが、さらにシューツリーを入れて靴の保形をすることでシャンボードなどのモカシンが割れる「モカ割れ」も予防することができます。
特にシャンボードやミカエルは甲が高めなので、しっかり甲をサポートしてシワを伸ばせるツリーを選べることも重要です。
純正のツリーがあれば問題ありませんが、もしそうでない方は参考にしてみてください。
それぞれのラストに合うツリーもご紹介します。
ポー 511 |
|
アヴィニョン 194 |
Sleipnir トラディショナル LCA EM260S |
シャンボード 283 |
Sleipnir トラディショナル LCA EM260S |
ミカエル 110 |
Sleipnir トラディショナル |
僕はサイズやフィッティングの関係でレディースのスエードダブルモンクを1足所有していますが、申し上げた通り雨の日の悪路でも疲れにくく、安心して履けます。何よりこのグレージュの色味がとても気に入っています。
スエードも防水スプレーをかければ雨でも全然問題ないので、スペシャルスエード&ヌバックスプレーを使っています。防水効果だけでなく、栄養補給もできるという優れモノ。(こちらの記事でご紹介しています)
もちろん晴れの日でも履ける靴なので、晴雨兼用の便利な靴としていかがでしょう?
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
写真出典:https://www.paraboot.com/
本記事で紹介した商品はこちらで購入できます。
Writer profile
楠美 皓平 Kohei Kusumi
革靴ジャーナリスト・ブロガー
祖父に教えてもらった靴磨きがきっかけで、靴のお手入れ方法や革靴に興味を持ち、『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行う。また、ファッションとしての革靴だけでなく、足を支える道具としての革靴という側面から、靴選びの大切さについても発信をすべく知見を深めている。
ブランドや職人の取材のライティングをする一方で、靴好きの方のコミュニティの活性化の一環としてイベント運営も手がける。
前職のwebディレクターの経験からシューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども行う。
blog
https://kusumin.com/
YouTube
https://www.youtube.com/c/LeatherShoeJournal
instagram
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