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公開日:2021/07/21 / 最終更新日:2021/08/31

革靴の経年変化・エイジングについて考える

革靴のエイジングとは何なのか。そんなことを考えてみました。
マジメなお話をさせていただくと、エイジングとは時間を経て革の見た目や物性そのものが変化することだと考えます。

しかし革の種類も性質も違えば、使う環境も違い、さらに持ち主によってお手入れの仕方も違います。そこに『時間』という概念がかけ合わさることで生まれるのがエイジングです。

エイジングはあくまで『個性』で正解のないものと僕は考えています。つやんつやんでピッカピカの鏡面磨きを施したドレスシューズも素敵ですし、バリバリガサガサのブーツもそれはそれでめちゃめちゃ素敵です。
靴は履物ではありますが、それと同時に革であることによる『育てるおもしろさ』があると思っています。すごく月並みな表現なのですが。

その育て方は人それぞれ好みはあっていいものと思います。むしろそれをどう楽しむかというところに革靴のエイジングのおもしろさがあるはずです。
もし正解があるとするなら、どれも一緒になってしまっておもしろくなくなってしまう気がします。

革の種類

革の種類によって変化にも違いがあります。
例えば革表面に樹脂のコーティングがされているガラスレザーのような革は、水に強い反面クリームを吸い込みません。ガラスレザーの場合はもともとツヤのある革ですので、お手入れによって柔らかさやツヤが増すことはありませんが、価格面と機能面では優れた革と言えます。

また、スエードやヌバックのような起毛革は多少色が変化することはあってもツヤが出てくるわけではありませんし、逆に起毛感を損なわなければ少しずつ見た目にも柔らかさを帯びて起毛革ならではの魅力を感じさせてくれます。

カーフやキップのような一般的に革靴に使われている牛革であれば、お手入れをして使い込むほどに時間の経過を想起させる柔らかさとツヤを醸します。

タンニン鞣しの革は色が濃くなっていき、クロム鞣しの革は色が抜けていくことが多いわけですが、染色方法や仕上げも様々で、色味が均一だったりそうでなかったり。他にも透明感のある仕上げ、ツヤを出す仕上げなどもあり、それをどう育てていくかというところもおもしろさです。

他にも挙げるとキリがないのですが、革の種類によって変化の仕方も違い、それが革そのものが持つ個性であり魅力であると考えます。

シワと美観

靴と足の形によってシワの入り方は違ってきますが、深いシワやひび割れがあってもかっこいい靴はかっこいいし、この靴はできるだけ深いシワを入れたくないという靴もあるかもしれません。
僕はドレスシューズが好きなのでどちらかと言うと後者が好みでして、シワの表情をいかに柔らかく保つか、というところに僕なりのこだわりを持っています。
逆に、ひび割れてバリバリになって、さらにステッチもほつれまくった靴でもなぜか様になる靴もあります。それは持ち主のキャラクターだったりファッションとの相性もあるかもしれません。
というように、革の経年変化には靴のスタイルとの相性は少なからずあると考えます。

ちなみに僕はあまり補色をせず、最低限の油分だけで革を柔軟に保つというお手入れが好きです。補色をすると発色は良く仕上がりますが、発色よりも革の自然な風合いや色がくすんでいく様子が好きだからです。経時を感じさせる育て方をしていきたいと思っています。
ただし油分を入れすぎると靴がくたっとしてしまい、ドレスシューズの場合は美観を損ねることもあります。また、シューキーパーがキツすぎる場合は油分によって柔らかくなった革が伸びることもありますので注意が必要です。

硬いと言われる靴はハリのある上質な革を使っていることもありますが、それは長く履いても木型の美しさやパリッと感を損なわないように設計されているからでもあります。
逆にアンラインドの靴は履き心地が柔らかくとっても快適ですが、経時とともにクタッとしてしまうのは多少仕方がありません。
そのあたりはブランドによって、靴によって様々な考え方が反映されるおもしろいところです。

お手入れによるエイジング

お手入れの話が出たので、それについても書かせてください。
靴をお手入れするのはツヤが出て楽しいのですが、その楽しさのあまりお手入れをしすぎてしまったり、古いクリームが残ったままクリームを塗り重ねると成分が積み重なってガサガサになってしまいます。
古い成分が固まると革の柔軟性を損なって革には負担になってしまいます。なので、時にはしっかり落とすことも大切だと感じています。

プロの靴磨き職人さんがなさっているテクニックでおもしろいなぁと思うのは、革の色とは違う色のクリームやワックスを使って革靴を磨くことです。染めているわけではないので革本来の色はそれほど変わりません。(吸い込みが強く色が変わってしまう革もありますが)
エイジングとは少し違う話かもしれませんが、靴磨きにはそんなおもしろさもあると思います。
例えば、プレーントウの靴にはどこまで鏡面磨きを施すのが綺麗に見えるか、みたいな話も個性を発揮する靴磨きのおもしろさです。

ただし黒の革靴は多少バキッとツヤが出ていた方が気持ちいいのではないかと思っています。
黒の靴をデリケートクリームだけでお手入れし続けたことがありました。ロウ分が含まれないので当然なのですが、ツヤもそれほど出るわけじゃないし補色はされないので、なんとなくぼやけてしまいます。やっぱり黒はパリッとした黒がいい。
逆にいくらアッパーが綺麗に磨けていても、ソールのコバがガサガサだと引き締まったパリッとした感じは出にくい、なんてこともあります。

靴の立体感を際立たせる磨き方も追求してみると、磨く人によって個性が反映されるおもしろい世界なのではと思います。

履き心地だってエイジング

シワや美観のような見た目の話だけでなく、履き心地の変化も経年変化の一部だと考えます。
特にグッドイヤーウェルテッド製法の靴は時間をかけて足に馴染むという特徴があるし、レザーソールは足の屈曲に合わせて歩き癖がつくし、アッパーも足に馴染んでいくという長く履くほど自分の靴に仕上がっていくという魅力があります。

足と木型の相性も関係してきますが、上質なライニングは新品の状態でも一汗かいたらその水分ですぐ馴染むと聞いたことがあります。レザーライニングならではの魅力です。
ただし汗に含まれる成分は革を硬化させてしまうこともありますので、履いたあとはしっかり乾かすのと(乾かすことで革を硬化させる成分も揮発するようです)1日履いたら2〜3日靴を休ませること。そして時には靴の内側のお手入れもしてあげてください。

しかしながら、しばらく履き込んで足の形が少し浮き出ているようなアッパーには、やはり履き込んだ時間を感じさせる魅力があるのは間違いありません。

最後に

靴と長く付き合うために知っておいた方がよいことはたくさんあります。
しかしそういった知識がなく、時には傷んでしまったりひび割れが見られる靴でも、その靴を大切にしているかどうかが重要だと思います。

馴染むのも育つのも時間がかかるので忍耐も必要ですが、簡単じゃないからおもしろい。
そこにロマンがある。そんな風に思っています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。


Writer profile

楠美 皓平 Kohei Kusumi

革靴ジャーナリスト・ブロガー

祖父に教えてもらった靴磨きがきっかけで、靴のお手入れ方法や革靴に興味を持ち、『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行う。また、ファッションとしての革靴だけでなく、足を支える道具としての革靴という側面から、靴選びの大切さについても発信をすべく知見を深めている。
ブランドや職人の取材のライティングをする一方で、靴好きの方のコミュニティの活性化の一環としてイベント運営も手がける。
前職のwebディレクターの経験からシューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども行う。

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