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【観戦レポートvol_2】サフィールフレンズの挑戦!靴磨き選手権大会2023 東京予選

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公開日:2023/11/02    /  最終更新日:2023/11/06

【観戦レポートvol_2】サフィールフレンズの挑戦!靴磨き選手権大会2023 東京予選

靴磨き選手権大会2023 東京予選

猛者集結の東京予選が開催!

2023年9月、大阪予選を皮切りに始まった靴磨き選手権大会2023
10月に入り、7日(土)には予選大会2戦目である東京予選が阪急メンズ東京1F前コンコースにて行われた。

大阪予選は靴磨き選手権としては初の都外での開催となったが、この東京予選は会場が初めての屋外ということで、準備に勤しむ関係者、受付前で集合している出場者たちには、前回大会や先日の大阪予選ともまた違った空気が漂っている。

 

そんな中、落ち着いた雰囲気で話をしていたのはサフィールフレンズの2人、Shoeshine Chum's Barの渡辺力氏熊田靴店の熊田圭一郎氏だ。

〈東京予選出場者〉※敬称略、エントリー順

No.16 
Shoeshine Chum's Bar |渡辺 力

No.24
熊田靴店|熊田 圭一郎

Shoeshine Chum’s Bar 渡辺氏(写真左)と、熊田靴店 熊田氏

Shoeshine Chum’s Bar 渡辺氏(写真左)と、熊田靴店 熊田氏

案外落ち着いているような様子に見えたが、早速2人に今の心境を尋ねてみた。

 

「(大会を勝ち抜くために)何が正解か分からなくなってしまいました」と笑いながら話すのは渡辺氏。
前日は、お子さんのバスケットボールクラブの付き添いをするなど普段通りに過ごしていたが、靴磨き業界に入った頃以来ぶりに靴磨きを夢に見てしまったほど、内心は緊張で張りつめていた。
本サイトの直前インタビューにもあるように、出場2回目となる今大会にかける意気込みは熱を帯びている。

 

熊田氏も、一見いつもながらのさわやかな笑顔を振りまきつつも緊張はしているようで、大会前には一旦店舗に戻り、おもむろに靴の修理をすることで自分を落ち着かせたという。
靴磨き選手権大会初出場の熊田氏にとって、何もかもが未体験の舞台。あえて靴磨きでないことに無心に取り組むことが、大会への緊張を解くのにはかえって良かったのだろう。

個性かがやく勝負服で審査員にアピール

さて、東京予選出場のサフィールフレンズの2人はファッションにも力を入れている。
渡辺氏は、オリジナルのサフィールロゴ入りTシャツに、ステージ上でもパッと目を引く鮮やかな地元・横須賀のスカジャンを羽織っての登場。
地元愛あふれる渡辺氏らしいチョイスである。
当日は背中の見事な刺繍を披露する機会がなかったようなので、この場でご紹介しておきたい。

横須賀で愛されるスカジャンを羽織って登場

横須賀で愛されるスカジャンを羽織って登場

一方、熊田氏はヴィンテージのペインターパンツにボタンサスペンダー、そして一際目立つ“愛犬・殿くんのオリジナルTシャツ”!
サフィール認定シューケアトレーナーの証のゴールドバッジも装着しての勝負服だ。
予選大会前インタビューをご覧の読者は「おや?」と思う方もいるかもしれない。

こちらの記事の公開時には「お気に入りのヴィンテージのジャンプスーツ」の着用を宣言していたはずだが…。

 

「宣言通りジャンプスーツを着るはずが、体がサイズアップしてしまい入らず…急遽断念しました…。」

 

その代わりの熊田靴店 看板犬Tシャツである。かわいさに免じてご容赦いただきたい。

前面にプリントされた愛犬・殿くんも応援

前面にプリントされた愛犬・殿くんも応援


1st Round

東京予選は過日の大阪予選とルールや審査などに大きな変更はない。
詳細は前回レポートを参照されたし。

今回大きく異なるのは、前述の通り会場が屋外であること。

阪急メンズ東京のコンコースは吹き抜けとなっており、風の通りがあるため朝の時点では吹き付ける風に肌寒さを感じるほどであった。
対して照明の熱量などは実際にステージに立ってみないとわからないこともあり、温度管理が重要となるハイシャイン(鏡面磨き)の工程にどう影響するか、大会経験者もとまどいを感じたのではないだろうか。

1回戦の課題靴・トレーディングポストのストレートチップ

1回戦の課題靴・トレーディングポストのストレートチップ

MC・田代径大氏と解説・飯野高広氏によるオープニングを経て、いよいよ始まった靴磨き選手権大会2023 1st Round東京。
ShoesLifeが注目するサフィールフレンズ・渡辺氏の登場は、2組目Bグループだ。
予選1回戦で磨く靴は、Trading Post(トレーディングポスト)の黒のストレートチップ。

内羽根でドレスシューズの定番中の定番である。この黒のストチの片足を10分で磨き上げる。

1回戦Bグループに登場した渡辺氏

1回戦Bグループに登場した渡辺氏

静かなスタートとなった東京予選Bグループだったが、序盤の渡辺氏へのインタビューで氏の今大会に掛ける想い、緊張の理由が語られた。

 

「(選手として出場するのは)今大会を最後に考えておりますので、ぜひ渡辺の磨きを見ていただければと思います。」

 

初戦に臨んだ渡辺氏は、緊張はしながらも気負うような素振りはなく手際よくハイシャインへの工程を進めていく。

1回戦で渡辺氏が磨いた革靴

1回戦で渡辺氏が磨いた革靴

そんな渡辺氏だが、本番直前に変更したポイントがあったそう。
大会前日に当サイトで公開したこちらの記事「ハイシャインクロスをさらに使いやすくする方法 」で、渡辺氏が普段使いしているハイシャインクロスの改良法が紹介されたのを見て、急遽用意したという。

急ごしらえではあったもののその決断が功を奏したのか、満足のいく出来栄えだったと大会後に話してくれた。

1回戦Cグループに登場した熊田氏

1回戦Cグループに登場した熊田氏

続くCグループには熊田氏が登場。
入場の折から、熊田靴店のロゴ入り応援うちわに「くまちゃん」コールの黄色い歓声が起こり、前2グループとはガラッと空気が変わる。
MCから「まるでアイドルの応援のよう」というツッコミに、はにかむ笑顔には先ほどまで感じた緊張の色はない。

後に聞いた「ステージに上がったら自然と緊張はなくなった」という言葉通り、作業を進める間も随所で笑顔が見られ、大会自体を心底楽しんでいる様子だった。

1回戦で熊田氏が磨いた革靴

1回戦で熊田氏が磨いた革靴

競技終了後の30秒間のプレゼンテーションタイムで出来栄えについて問われた熊田氏は、
「つま先、かかとの一番端っこの部分が一番輝くようにして、そこから徐々に光がつながっていくような仕上がりに近づけました。
黒は黒のクリームで黒々しく、というところを意識して磨きました」と堂々と応え、自身の仕上げに確実な手応えを感じているようだった。

 

ちなみに、オリジナルうちわと「くまちゃん」コールで場を盛り上げていたのは、熊田氏の最愛の妻とお義母様である。
家族の応援を胸に、2回戦進出者発表を待つこととなった。

手作りうちわで応援する熊田応援団(奥様&お義母様)

手作りうちわで応援する熊田応援団(奥様&お義母様)


結果発表

休憩を挟み、予選2回戦進出者の発表を迎えた。
計32名の出場者から上位12名が2回戦へ進出となるわけだが、さらにここから半数の6名が11月の決勝ラウンドへ駒を進めることとなる。

サフィールフレンズからは、見事8位通過で熊田氏が2回戦進出となった。

見事2回戦進出!

見事2回戦進出!


2nd Round

予選2回戦は、通過順位が奇数のAグループと偶数のBグループの6名が、3名ずつの2グループに分かれて行われる。
2回戦ともなると、大阪予選同様に出場者の実力は伯仲する。過去大会のランカー、出場経験者はもちろん、アマチュアとしての参加ながら1位通過となった猛者などの強豪がひしめく中で、わずかなミスが勝負を決してしまうような戦いが繰り広げられることとなる。

8位通過である熊田氏の出場するBグループには、ロンドンで行われた靴磨き世界大会2023の覇者・Brift H SAPPOROの林田直樹氏も名を連ねる。

東京ラウンド予選2回戦で磨く靴は、スペインのCARMINA(カルミーナ)の黒のストレートチップ。
1回戦の靴はつま先部が丸みを帯びたラウンドトゥだったが、この2回戦で磨く靴はチゼルトゥと呼ばれ、つま先が鋭角に落ち込む形をしており、チゼル=工具のノミの切っ先に例えられる形状をしている。
繊細なテクニックが必要となるチゼルトゥをいかに攻略するかは、この2回戦<両足20分1本勝負>の見どころのひとつである。

2回戦の課題靴・カルミーナのストレートチップ

2回戦の課題靴・カルミーナのストレートチップ

熊田氏は今回使う道具もオールブラックで統一。日頃はサフィールフレンズとしてサフィール製品の使用にこだわっているが、大会では勝ち抜くために他ブランドの製品も取り入れている。
2回戦に臨むにあたってのポイントは「より黒く、深く」と競技中のインタビューで明かした熊田氏。
1回戦でもこだわった黒い靴へのアプローチは、2回戦でさらに追求していく姿勢をのぞかせている。

 

2回戦目ともなると、出場者の手中にある課題靴は時間の経過とともに着々と輝きを強めていく。
観客席から見る分には、いずれの靴も申し分なく光っており、Aグループ・Bグループともにかなりの接戦のように思う。
傍目には甲乙つけがたいこの激戦を制するポイントは果たして何なのか、一時も目が離せない。

 

選手が乾拭き(水研ぎ)やヤギ毛ブラシで最終仕上げに入り、戦いは佳境を迎える。
MC・田代氏と解説・飯野氏のカウントダウンの0コールと同時に、観客からの盛大な拍手の奥で、選手たちの不安と安堵の入り混じった深い溜息が聞こえた。

2回戦では林田氏と並んで20分間に挑んだ

2回戦では林田氏と並んで20分間に挑んだ

残す審査は1分間のプレゼンテーションタイム。
熊田氏はこの20分間の磨きに込めた思いやこだわりについてこう語った。

 

「黒い靴をより黒くするためにクリーナーの後にクリームを入れる際、最後に手で熱を与えてあげて、中にグッと黒を押し込む作業をコンディショニングとして行いました。
その後、ワックスを塗る際、トゥの部分がゆっくり落ちていくデザインなので、そこの部分が自然に見えるように鏡面をかけていきました。
キャップ全体にワックスをつけて全部を平らにしてしまうと、(つま先とアッパーの素材が異なる)コンビのシューズみたいになってしまうので、全体的にグラデーションが自然に入っている靴という意識を込めて磨かせていただきました。」

2回戦で熊田氏が磨いた革靴

2回戦で熊田氏が磨いた革靴

大会後に投稿したインスタグラムで「靴磨き好きが爆発しました。人生の中でとても印象的な20分でした」と綴っている熊田氏。
そう語る熊田氏は活き活きとし、その言葉に迷いやごまかしはひとつも感じられない。


Final Round進出者は誰だ…!

大勢の観客が見守る中、ついに決勝戦進出者6名が発表される時間が訪れた。
前述した通り、2回戦に残った面々には誰が選ばれてもおかしくない強者ばかりが揃っている。
発表を待つ12名がズラリと並び、熊田氏も堂々とした佇まいで登場したが、どうやっても会場の空気が高名の人物に注目しているのは仕方がない。

2回戦進出者12名

2回戦進出者12名

順にAグループの3名全員が呼ばれ、残すはBグループ3位通過の1名となった時点で、出場者や会場内の空気が一層ざわついた。
それもそのはず。この時点で、優勝候補として名が挙がっていた面々の脱落が確定。リアルな勝負だからこそ見られた番狂わせに、思わず息をのむ。

想定外の事態の中、最後に呼ばれたのが熊田氏だった。
観客からは悲鳴に近い喜びの声が聞こえ、熊田氏は驚きながらも安心したような笑顔を浮かべた。

 

「憧れていた靴磨き職人さんたちと同じ大会に出るので朝からすごく緊張していたんですけど、皆さんが楽しく話しかけてくれて、たくさんの応援もいただいた中で、楽しく1日を過ごすことができました。
決勝戦も頑張りますので、決勝では『くまちゃん!』って応援をよろしくお願いします。」

 

熊田氏の言葉に、これまで強張っていた選手たちの表情がゆるみ、温かな空気に変化した。
これこそが、人からも靴からも愛される“靴磨き職人 くまちゃん”の真骨頂なのだ。


靴磨き選手権大会2023 Final Roundまであと少し

写真左から、大平氏、新庄氏、新井田氏、木嶋氏、熊田氏、折茂氏

写真左から、大平氏、新庄氏、新井田氏、木嶋氏、熊田氏、折茂氏

〈ファイナルラウンド進出者〉※敬称略、エントリー順

エントリーNo.5
大平 雄太

エントリーNo.12
新庄 海地

エントリーNo.24
熊田 圭一郎

エントリーNo.29
木嶋 友和

エントリーNo.31
折茂 佳名人

エントリーNo.55
新井田 隆

数日後に迫った靴磨き選手権大会2023の決勝戦。
頂点を巡る緊張と興奮が最高潮に達する瞬間が刻一刻と迫り、今からワクワクが止まらない。
靴磨きを極めたプロフェッショナルとして挑む12名の姿に魅了される歴史的瞬間を見届けたい。

ぜひ会場で応援しよう!

〈靴磨き選手権大会2023〉

Final Round
日時:2023年11月18日(土)13時〜18時40分頃(開場12時30分〜)
会場…銀座三越9階 銀座テラス

▼靴磨き選手権大会2023 大阪・東京予選のダイジェストはYouTubeでも!





Le Beau
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