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【観戦レポートvol_4】靴磨き選手権大会2023 ファイナルラウンド【後編】

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公開日:2023/12/29 

【観戦レポートvol_4】靴磨き選手権大会2023 ファイナルラウンド【後編】

靴磨き選手権大会2023

前回の記事でお伝えした靴磨き選手権大会2023 準決勝では、サフィールフレンズの熊田靴店・熊田圭一郎氏が激戦を経て、見事決勝戦進出を決めた。

今回は、感動と興奮に沸いたその続きをお届けする。

▼靴磨き選手権大会2023 ファイナルラウンド前編はこちら

熊田靴店 熊田圭一郎

熊田靴店

熊田 圭一郎

Shop▶渋谷区富ヶ谷1-44-16-B1 (商店街側1階)

Instagram▶shoshiner.bear

 

とにかく靴と人をこよなく愛する“靴磨き職人のくまちゃん”。

持ち前の笑顔とコミュニケーション力を活かした温くて思いやりのある人柄は靴磨きスタイルにも反映され、一瞬でファンになってしまう人が続出。

決勝戦進出者 ※敬称略

〈準決勝グループA〉

熊田靴店

熊田 圭一郎

 

〈準決勝グループB〉

Dratewka

折茂 佳名人

 

〈準決勝グループC〉

Brift H AOYAMA

新井田 隆

 

決勝戦

決勝戦の課題靴は、スコッチグレインのチゼルトゥのストレートチップ。

箱にはブラックと表記されているものの、光りの当て方次第でグレーやネイビーにも見えるグレイッシュな黒靴だ。

しかも、ツヤがまったくない熟成革で、「プロでも今まで触ったことのない革靴だろう」とMCの田代径大氏が表現した決勝戦にふさわしい1足。

姫路のタンナー・株式会社山陽が協力し、完成までに1年がかかったという。

 

成形後にワックスを拭き取り、10℃の低温冷蔵庫で最低3ヵ月寝かせることで完成する熟成革は、肌目がやわらかく、光らせ方や濃淡の付け方に個性が出そうだ。

あえてエッジを利かせたチゼルトゥにも各選手のこだわりが現れるポイントなので、どのような表情を魅せてくれるかが期待された。

課題靴をチェックする決勝戦進出の3名

課題靴をチェックする決勝戦進出の3名

過去最多人数の観客が注目する中、ファイナリスト3名がステージに登場。

「よーい、スタート!」とスタートを切る解説の飯野高広氏の声も大きくなり、マイクが音割れしてしまうほどだった。

 

コンディショニングの工程でブラッシングした後、熊田氏はクリーナー前にクレム1925を塗布するという他に類を見ない手順を始めた。

クリーナー前にクレム1925を塗布することで、クレム1925に入っている染料をできるだけ革の中に押し込み、黒を強く出す作戦だという。

 

本番前、新井田氏に「くまちゃんは人がやらない磨き方をする人だから怖い」と言わしめた熊田氏の本領発揮だ。

解説の飯野氏も「なるほど。油分を取りすぎないクリーナーの効能を活かしたわけだ」と感心。

サフィールノワールのコンディショニングクリーナーだからこそできるテクニックを披露してくれた。

靴磨き選手権大会2023

他の2名がワックスに移行していく中、実に丁寧にベーシックケアをこなす熊田氏はワンテンポ遅れるが焦る様子はない。

コンディショニングクリーナーで汚れを落とした後、乾拭きで水気を飛ばし、クレム1925の指塗りに取りかかった。

 

かなりクリームを吸い込む革質なのだろうか、クレム1925をたっぷり塗り込む様子が伺える。

クレム1925を塗り伸ばした後は、自身の手の平を使って熱を起こしてクリームを浸透させるハンドポリッシュの技を披露。

その後は種類の違うブラシを効率的に使い分け、限られた時間内でこだわりのベーシックケアを完了させた。

靴磨き選手権大会2023

課題靴のような絶妙な色合いの場合、各選手が理想の黒を思い描きクリームやワックスを選定する。

折茂氏はコントラストが付きすぎないようにとビーズワックスポリッシュのグレーを選択していた。

一方、予選大会でも「黒靴は黒のクリームで黒々しく」とこだわりを見せていた熊田氏は、今回も一貫してクリームもワックスもすべてブラックで統一。

 

その理由について、

「この靴を見てパッと思い浮かんだのは、もしヌメ革の明るい茶色の靴だったら僕は近い色のクリームを選ぶと思ったので、黒色の靴は黒のクリームでぐっと黒が中に入るようにハンドポリッシュの時間を長めに取ろうという頭でやりました。」と語った。

 

MCの田代氏は熊田氏の磨きについて、「独特」だと表現した。

「(ワックスを)重ねて、重ねて、重ねまくる。すると、ある瞬間に向こう側に行く。よそ見していて視線を戻したらいきなり光りが出ている」と説明すると、隣の新井田氏が横目でチラリ。

靴磨き選手権大会2023

残り時間が2分を経過した頃、サフィールノワールのフィニッシャーブラシとクロスを交互に使い分けながら少々苦い表情を浮かべているのが気になった。

カウントダウンが始まってからもギリギリまでフィニッシャーブラシをかける姿に、準決勝のような余裕はない。

実はこの時、鏡面の左右のバランスが揃わなくなってしまい、焦ってフィニッシャーブラシで調整をかけていたという。

とはいえ、クリームの仕上げ用と、ワックスの最終仕上げ用とでフィニッシャーブラシを使い分けている熊田氏のテクニックにより、結果的には左右差が分からないほど取り戻すことに成功したのはさすがだ。

靴磨き選手権大会2023

一問一答インタビュー

田代氏

「大会を通じて成長を感じる部分はありますか?」

 

熊田氏

「成長というより、靴磨き自体がどんどんどんどん楽しくなっていったんです。

今日のファイナルラウンドまで靴磨きを鍛練することで、もっと楽しくなっていったし、これを色々な人にもっと伝えていきたい、広めていきたいなという想いが強くなりました。」

 

田代氏

「ご自身の決勝の磨きはいかがでしたか?」

 

熊田氏

「靴を見た時に、箱に黒と書かれているのに思っていたより結構白いな、色が吸いそうな革だなと思ったので、すぐに今までの経験から磨き方をちょっと変えてみたんです。(先述したクリーナー前にクレム1925を塗布する方法)

結構黒くなったので自分の中では満足しています。悔いはないです。」

 

田代氏

「今日の磨きの具体的なプランがあったなら教えてください。」

 

熊田氏

「僕は他の人に比べると、あまり水をつけないんです。

特に大会ではワックスが新品でゆるかったので、その中に含まれている有機溶剤を使って磨き上げていくというスタイルの方がいいかなと思い、練習の時からそのようにしていました。」

 

最後に熊田氏はこのようなメッセージを伝えた。

 

「実は、前職で辛い想いをしてそれを辞めて今ここにいます。

今は人生がとても楽しいなってすごく感じているので、靴磨きだけじゃなくても、色んな話を僕としながら靴磨きができたらすごく楽しい時間を過ごせると思うので、良かったら僕に会いに来てください。」

熊田氏の磨いた革靴

熊田氏の磨いた革靴

 結果発表

写真左より、熊田氏、新井田氏、折茂氏

写真左より、熊田氏、新井田氏、折茂氏

すっかり陽が落ちた頃、ついにチャンピオンが発表された。

ステージに並ぶ3名からの緊張が伝わり、見ているこちらも息が詰まるほど。

あれほどガヤガヤと騒ぎ立てていた会場もしんと静まり返り、固唾を飲んで見守る。

 

「靴磨き選手権大会2023、第1

田代氏がそう言葉にすると、新井田氏は目を瞑り、折茂氏は目を伏せ、熊田氏はまっすぐと一点を見つめる。

「エントリーナンバー55番、新井田隆さんです!」

悲願の初優勝を飾った新井田氏は、飛び上がって喜びを爆発させ男泣きを見せた。

惜しくも敗れた熊田氏と折茂氏は温かく拍手を送る。

やさしく微笑むが、2人からは悔しい表情がにじみ出ている。

熊田氏の敗退に我々も悔しい感情がこみ上げるが、ステージでは大会発起人であり新井田氏の恩師でもある長谷川氏からチャンピオントロフィーが授与され、なんとも感動的なシーンに立ち会うことができた。

長谷川 裕也氏よりトロフィーの授与

長谷川 裕也氏よりトロフィーの授与

チャンピオンに輝いた新井田氏の磨いた革靴

チャンピオンに輝いた新井田氏の磨いた革靴

大会終了後、熊田氏は我々にいつもの笑顔を見せてくれながらも、その目にはうっすらと涙が滲んでいた。

「負けたということは、まだ伸びるということなので、また日々鍛練を積んで研究して頑張っていきたいと思います。」

最後まで笑顔で応じてくれた熊田氏

最後まで笑顔で応じてくれた熊田氏

靴磨き選手権大会初出場にして第3位に選ばれる偉業を成し遂げた熊田氏の靴磨き人生は、まだまだ進化していくに違いない。

翌日は、靴磨きイベントが開催

靴磨き選手権大会2023の翌日には、同会場でファイナリスト12名の靴磨きを間近で堪能できるスペシャルな靴磨きイベントが開催された。

靴磨き職人として名の知れた12名が一堂に会するとだけあり、事前予約されたお客様が途切れることなく会場を訪れ、大会を戦い抜いた彼らへ労いの言葉をかけるシーンも多く見られた。

終日来場者が途切れず大盛り上がり

終日来場者が途切れず大盛り上がり

ファイナリスト3名の磨いた革靴

ファイナリスト3名の磨いた革靴

全選手の磨いた革靴を展示

全選手の磨いた革靴を展示

前日までのピリピリした空気から一変。いつものリラックスした表情でにこやかに過ごす選手たちがタイムスケジュールで入れ替わり立ち代わり登場する光景は、まるでアイドルのイベントさながら。

靴磨き職人が憧れの職業として定着する日は、いくらもしないうちにやって来るかもしれない。

Boston&ReOlds 𠮷冨 純弘氏

Boston&ReOlds 𠮷冨 純弘氏

92-NINETYTWO- 安部 春輝氏

92-NINETYTWO- 安部 春輝氏

熊田氏に会いに他県から訪れるお客様も

熊田氏に会いに他県から訪れるお客様も

プロがサフィールを選ぶ理由

大会では、出場者12名全員が勝負アイテムにサフィール製品を織り交ぜて使用していた。

サフィールを選んだ理由について、チャンピオンの新井田氏は「通常の固形のワックスの中でミラーグロスは一番光沢が出る物なので一択でした」と答えてくれた。

2位に輝いた折茂氏も「他のブランドの製品よりも透明感が出しやすい。普段から使っている理由は、持続性が一番良いからです」と、サフィールの特性を把握したうえで大会での磨きに活かしたことを明かしてくれた。

Brift H AOYAMA 新井田 隆氏

Brift H AOYAMA 新井田 隆氏

Dratewka 折茂 佳名人氏

Dratewka 折茂 佳名人氏

靴磨き選手権大会の未来は

39ヶ月ぶりの靴磨き選手権大会を成功に導いたMC・大会プロデューサーの田代径大氏にもお話を伺った。

 

「大会が3年ぶりに復活して道具もかなり拡大しました。

今まで使えなかったサフィールノワールのミラーグロスが解禁になり、それをどういう風に使うかが面白い大会だったので、来年以降の大会でさらに進化して使われる方が出てくるのを期待しています。」

MC・大会プロデューサー 田代 径大氏

MC・大会プロデューサー 田代 径大氏

解説の飯野高広氏からは、服飾ジャーナリストならではの観点から面白い話を伺えた。

 

「決勝戦で磨かれたスコッチグレインの靴は、何とも言えないグレイッシュなブラックでしたよね。

今回は指定アイテムになかったですが、あの靴にクレム1925の新色のペトロールブルーを使うと素敵じゃないかなと思ったので、来年以降、使える色も増やしてますます大会が盛り上がることを期待しています。」

解説 飯野 高広氏

解説 飯野 高広氏

1回日本靴磨き選手権大会チャンピオンで、THE WAY THINGS GO代表の石見豪氏は、

「皆さん掛け合わせでサフィールをたくさん使われている方がすごく多かったので、選手の方も観に来られた方も楽しんでいただけたかなと思います。」と、大会を振り返った。

テクニカル審査員 石見 豪氏

テクニカル審査員 石見 豪氏

靴磨き選手権大会2023は終了したが、早くも公式インスタグラムには〈靴磨き選手権大会2024〉開催決定の情報が…!

今大会の情景が頭に浮かび色あせないままではあるが、次なる興奮と感動の瞬間に立ち会えることが今から楽しみだ。

靴磨き選手権大会2023
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