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【海外情報】革靴の製造過程で見るソールとコバ

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公開日:2022/02/07    /  最終更新日:2022/10/13

【海外情報】革靴の製造過程で見るソールとコバ

革靴のパーツには、見た目では分からないのに実は実用的な効果を担っている意味合いがあったり、知れば知るほどとても面白いですよね。

革靴の構造や製造方法について知ることで、今まで意識していなかった部分が魅力的に感じるかもしれません。

 

前回は、革靴の“コバ”が持つ役割について書かれた海外サイトで公開されている記事をご紹介しました。その記事には、コバには革靴の見た目を良くしてくれるだけじゃなく、アッパーを守るバンパーのような役割があることが書かれていました。

今回は、その“コバ”についてもっと深く掘り下げて書かれている記事をご紹介します。


本記事は、Shoegazing.comで公開されているIn-depth – All about sole and heel edgesを日本語に意訳して紹介しています。

徹底分析 ソールとヒールのコバのすべて

ソールやヒールのコバ(エッジ)の作業という側面からウェルテッド製法の靴づくりの実際の品質が語られることはあまりありません。今回は、ウェルトとヒールとソールのコバの製法と仕上げをつぶさに検証し、難易度、さまざまな方法の違い、実用的な機能なのか体裁だけのものなのかなどを解説します。

ウェルトとソールのコバ

靴の前面にあり、靴の印象を大きく左右するため、多くの点でもっとも目立つ部分です。ウェルト製法の靴、そしてブラック・ラピド製法の靴(注:マッケイ製法ではありません)のコバがはみ出しているのは実用的な理由からで、ソール(ブラック・ラピド製法の場合はミッドソール)とウェルトを縫い付ける接続部が必要だからです。偶然にも、繊細なアッパーを保護する実用性の高いバンパーとしての機能も果たしています(詳細はこちらの記事を参照)。実用的なものに手をかけて付加価値をさらに高めようとする傾向がありますが、それはウェルテッド製法の靴のウェルトとソールのコバにも言えることです。そして一般に、手をかければかけるほど、より多くの労力が注ぎ込まれ、値段が上がります。

工場製造の低価格の靴はウェルトとソールのコバにあまり手をかけません。ソールのコバをストレートにトリミングし、ウェルトはそのままです(ここで言うウェルトは、ウェルトのアッパーの部分です。ソールのコバはウェルトとアウトソールの側面、さらにソールの中間にあるミッドソールの側面です)。あまりヤスリをかけないのでケバ立ちません。上下に突起のあるコバカッターを使うこともあります。これによって難易度や実用性が増すわけではなく、体裁を整えるだけです。靴の価格が上がると、より多くの手間がコバにかけられます。ウェルトに目付車(ファッジホイール)の機械で印をつけて、ウェルトの内側のドブ(チャンネル)にステッチを隠すことができます(ソール下の隠しステッチのことではありません)。コバは(おそらく手作業で)慎重にヤスリ掛けされます。ステッチの細かさは、低価格帯の靴で5~6 spi(stitches per inch: 1インチ間のステッチ数を表す単位)、高級な工場製造の靴で8~10 spiです。

手間を省くには、ステッチは粗めにしてウェルトのトップをプレーンにします。

さまざまなソールの厚さやコバの形に対応するソール用コバカッター各種

コバカッターにかけているところ。よく見るとわかるように(画像をクリックすると拡大します)上端と下端に刃が付いています。

少し上質な靴になると、ステッチが細かくなったり機械による出し縫いの上に目付車の印が入っていたりします。

目付機にかけているところ

良質なハンドメイドのビスポークシューズにはもっとたくさんの手間をかけるのが一般的で、すべてではないにせよほとんどが手作業です。コバをカットし、ヤスリをかけてなめらかにし、熱したコバアイロンで表面の硬度を高めて仕上げます。ウェルトの場合、手作業で出し縫いする際は目付車などの工具で印をつけるのが一般的です。ステッチセッターでステッチをきつく締め(同時に印を際立たせ)、縫製後ふたたび目付車をかけてステッチをさらに締め、よりなめらかに仕上げます。ここで目付車は実用的な目的のほかに体裁を整える目的も果たしています。ホイールをステッチに沿って走らせるだけの機械による出し縫いとは違い、ステッチがホイールでついたくぼみにピッタリ合っています。

 

出し縫いを汚さずきれいに縫うには技術が必要ですが、細かく出し縫いすること自体はさほど難しくありません。一定のspiレベルになると、さらに時間がかかるうえに、汚さないように気を付けながらより多くのステッチを縫う必要があります。いずれにせよいちばん難しいのは、汚さずきれいに縫うことです。たとえば、14 spi以上になると、出し縫いは本格的に難しくなります。縫うために、そして強度を保つためにウェルトとソールに穴を開けすぎないように、より細い糸を使わなければなりません。16 spi以上の靴には今ではめったにお目にかかれません。実用性の面から言えば、8 spiの出し縫いには(同じように縫われていれば)14 spiの出し縫いと同程度の強度と耐久性があります。多くの場合、このような工夫は高度な職人技や見た目の美しさを際立たせるために行われるので、靴の強度と耐久性が高まるとは限りません。

ハンドメイドの靴には手持ち型の目付車で出し縫いの印をつけることが多いです。

とても細かい16 spiの出し縫い。実に丁寧に仕上げられています。一目一目が目付車でつけた印の中に収まっており、ステッチの美しさがいっそう引き立ちます。

ハンドメイドの靴にコバアイロンをあてているところ

ハンドメイドの靴にコバアイロンをあてているところ

ソールのコバを狭くカットするのが難しいという誤解をたまに耳にします。アッパーからかなり離れているので、それほど難しい作業ではありません(ステッチが入るスペースは少し狭くなりますが、難易度がほんの少し上がる程度です)。要は見た目の問題で、製靴学校により基礎が異なります。たとえばイタリアでは、幅広のソールのコバが一般的ですが、靴職人の腕が劣っているわけではなく、それがイタリアのスタイルなのです。クラウンヒル・シューズのような低価格ブランドからヨーヘイ・フクダのようなフルビスポークブランドに至るまで、幅を狭くカットしたソールのコバを採用しています(ヨーヘイ・フクダでは、オーダー時にソールのコバをワイド、ノーマル、タイトから選びます)。ソールのコバが狭すぎると、(新しいソールを取り付けた後、コバを均一かつなめらかにするためにかならずヤスリをかけなければならないため)ウェルトが薄くてステッチを維持できないのでリソールできる回数が減る、というのはデマです。ウェルトも早めに、最悪の場合、最初のリソールで交換する必要があります。

ソールのコバ幅が広いイタリア製の靴。広いコバはこの国のウェルテッドシューズによく見られます。

ソールのコバを狭くカットした低価格のグッドイヤーウェルト製法の靴

ウェストのコバ

ここでも、低価格で手間の少ない靴から見ていきましょう。基本的な方法はスクエアエッジ(底面を面取りしていない、直線的な角コバ)です。つまり、基本的にソールの前の部分と同じ形がウェストまで続き、ヒールまでずっと同じ形です。ステッチやコバの仕上げを一切変える必要がなく、ウェルトとソールのコバと同じように行ないます。一般にカジュアルな靴に見られますが、とても高価なフルハンドメイドの靴にもこのスタイルが選ばれることがあります。

シンプルなスクエアエッジのウェスト

工場製造の靴の場合、“改良”の次のステップはウェストのコバのカットを少々変えることです。たいていは、幅を狭くして体裁をよくするためにある程度まで角を取ります。ウェストのコバを狭くするには、ソールのコバの位置に細心の注意を払わなければならず、ウェストを本当に狭くするためにほかにも準備が必要です。靴職人が行う基本的なハーフリソールのほとんどはソールの前の部分だけとヒールで、ウェストを変えることではないので、ソールの前の部分のコバを狭くカットするときほど“リソールできる回数”に影響しません。ウェストの外側はスクエアエッジで、内側の角を取って幅狭のラウンドエッジ(丸コバ)にすることもできます。

工場製造の高級な靴のウェストにはラウンドエッジが多く見られ、幅狭にカットされています。ここの幅は一段と狭いです。

高級なハンドメイドの靴になると、ウェストのコバにさらに多くの手間をかけます。特筆すべき有名なものは間違いなくブラインドウェルトです。基本的にラウンドエッジのベベルドウェストやフィドルバックウェストと併用されることが多いです。準備が少し違いますが、この場合もウェルトをウェストで幅狭にカットして、アウトソールのコバの下に隠します。見た目をよくしたいなら、断然これがお勧めです。きちんとブラインドウェルトで仕上げるためにウェストを手縫いする必要がありますが、技術がないとうまくいきません。準備をして通常どおりにウェストを多めに縫い、ソールのコバをアッパーに向かってハンマーで打ってステッチも隠す方法もあります。

 

ウェストのコバは、カットが狭いほど難易度が上がり、アッパーを傷つけやすくなります。ここではアッパーに向かって作業するので、常にスペースに余裕があるソールのコバの前の部分と比べ、ごくわずかな幅しかありません。

ウェストがブラインドウェルトのハンドメイドシューズの出し縫いをしているところ。ウェスト部分のステッチがかなり粗いのがわかります。よく見ると、細かく出し縫いされたウェルトが粗いステッチの上にあるのがわかります。このウェルトを内側にカットし、粗いステッチをソールのコバで覆って隠します。

ウェストがブラインドウェルトのハンドメイドシューズの出し縫いをしているところ。ウェスト部分のステッチがかなり粗いのがわかります。よく見ると、細かく出し縫いされたウェルトが粗いステッチの上にあるのがわかります。このウェルトを内側にカットし、粗いステッチをソールのコバで覆って隠します。

ブラインドウェルトで仕上げたウェスト。ステッチは影も形もありません。見えるのはアウトソールだけでウェルトは見えません。

手作業で行わなければなりませんが、こちらは少々簡略化したバージョン。ウェルトがヒールまで続いているのがわかります。ステッチはウェルトとコバ全体をハンマーで上に叩いて隠します。

ヒールのコバ

ヒールのコバにも、ウェストのコバと同じように一般に適用されるルールがあります。いちばんやりやすい方法はアッパーから離してヒールをカットすることです。こうすることで作業するスペースが広がり、手早く簡単にヒールを仕上げられます。一般にグッドイヤーウェルト製法の靴の値段が高いほどヒールが細めにカットされているのは偶然ではないのです。しかし、ここでも、スタイルによる違いがあります。カジュアルな靴の場合、360度の出し縫いとおそらくストームウェルトを使ってヒールを太めにします。サービスブーツの場合も、(出し縫いがヒールで止まる)270度の出し縫いでもヒールのベースが太めなので、ヒールを太くすることが多いです。こうする一番の理由は実用性で、頑丈で硬いヒールが靴やブーツのアッパーを保護するからです。エレガントな洗練されたドレスシューズに同じことをする必要はありません。

太くカットされたヒール。主な目的は作業の簡略化です。

太くカットされたヒール。主な目的はアッパーの保護です。画像:イースト・ウェスト・アパレル

ストレートヒールやテーパードヒールを見ると、出し縫いと同様にそれを作ること自体はさほど難しくありません。工場製造の靴の場合、最初に成形やカットを機械で行い、ストレートとテーパードで異なるのはタイプと設定だけです。手作業の場合、すべての面と両方のヒールが常に水平かつ均一になるようにするのが難しいのですが、実際、完全なストレートヒールを本当にストレートかつ均一にするのは、テーパードヒールを水平かつ左右対称にするのと同じくらい難しいのです。しかし、テーパードヒールを作るときは、アッパーとなじませるために比較的細くカットしなければならない傾向があります。これはこのタイプのヒールに求められるもので、実際に難しいのです。ほかにも、両サイドがストレートでバックがテーパードの“ビスポークヒール”などと呼ばれるタイプのヒールがあります。基本的に手作業で作らねばならず、バランスを取り左右対称にするのが比較的難しいです。

ノーサンプトンのとある工場。ヒールがストレートになっているかチェックしています。

機械を使って製造するテーパードヒールの靴の場合、バランスと見た目のよさからヒールを細めにカットする傾向があります。

また、ヒールのコバのなめらかさも靴の価値を決める重要な要素です。今回はヒールの作り方の違いについてはくわしく説明しません(工場製造の靴には基本的にあらかじめ作っておいたヒールをひとつのピースとして取り付け、ハンドメイドのビスポークシューズには一般的にヒールの層を積み重ねます)。本当になめらかで見た目のいいヒールを作るためには、ヒールの層は(特に低価格のウェルテッドシューズに使われているようなファイバーボードやレザーボードではなく)本物のレザーでできている必要があると言えます。ヒールの層は研磨で仕上げる必要があります(できればハンマーで叩いてガラスでコバを削ってヤスリをかけ、熱したコバアイロンでレザーの繊維を密集させれば完璧です)。強力な接着剤より層の間の筋があまり目立たないので、いいビスポークメーカーはヒールを作る際に糊を選ぶ傾向があります。ヒールの作り方はやや複雑になりますが、仕上がりの美しさは増します。

 

どのタイプのコバ液(仕上げ剤)を選んでも見た目以外にはほとんど影響を及ぼしません。無色や透明のコバ液があり、塗布してもレザーの色は変わりません。どのタイプがいいかは人それぞれです。

ビスポークヒールにヤスリをかけているところ。靴作りはたくさんのヤスリがけを伴います。(一般に)高価な靴ほどヤスリがたくさんかけられ、いっそう美しく仕上がります。

いろいろなコバアイロンとコバの仕上げに使う道具

いろいろなコバアイロンとコバの仕上げに使う道具

ヒールの上部を整えているところ。重要かつヒールが細いと比較的難しい作業です。

工場製造の靴でも、いい工場では仕上げの一部を手作業で行い出来を確認します。

無色のコバインキを使ったすばらしい仕上がりのヒール。コバの仕上げがこのようになめらかで見事だと、おろしたてから美しく、おまけに光沢と美しさの維持も容易です。

すばらしいハンドメイドのヒールをもうひとつご紹介します。こちらは透明なコバインキを使っており、印象が違います。

Le Beau
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