学生の皆さん、通学で履いている革靴は本革ですか?
それとも、合成皮革ですか?
成長期の年頃の場合は、本革よりもリーズナブルで比較的やわらかい合成皮革の靴を履いている人が多いかもしれません。
学生靴とカテゴライズされている靴のほとんどが合成皮革と記載があるので、やはり合成皮革の方が需要はあるようです。
今時の学生さんはファッション感度が高いのでご存知かと思いますが、もし知らなくても恥ずかしいことではないのでご安心ください。
筆者が革に本革と合成皮革が存在することを知ったのは、社会人になってからです。
存在を知ってからも、その違いを匂いを嗅いで見極めるという野蛮ぶりでした。
それくらいに、最近の合成皮革は本革と見間違えるほどのクオリティの物が多いですよね。
皆さんが日頃使っている靴はどちらでしょうか?
本革と合成皮革の違いを知っておくと、靴を正しくお手入れすることができて寿命を最大限に伸ばすことができるので、これを機にぜひ覚えてくださいね!
「本革」とは、動物の“皮”をなめして“革”に加工したものです。
なめし(鞣し)とは、動物の皮から腐敗の原因となるタンパク質や脂肪を取り除き、薬品を使って製品として使える革へ加工する技術のことをいいます。
皮の構造は動物の種類によって異なりますが、牛の皮は、表皮層、真皮層、皮下層の三層で構成されており、そのうち革になるのは真皮層のみです。
一般的に売られている革靴は牛の皮が使われていることが多く、私たちが最もなじみ深いです。
2021年に発売され、本革なのに5,000円以下という衝撃的な安さで話題となったGUの「リアルレザーシューズ」も牛革で作られています。
通常、牛革の靴といえば安くても10,000円以上の物が多い中でGUの革靴は破格の価格設定ですが、牛革にはランクがありお値段もピンキリです。
私たちが美味しくいただいている牛肉にもA4やA5という等級を聞いたことがあるかと思いますが、同じく革にもランクがあります。
それでも5,000円以下であのクオリティの革靴を販売できるのはさすがの一言で、企業努力の賜物ですね。
牛革は銀面(ぎんめん)が平滑に整っており皮膚の繊維組織が均一なので、強度や耐久性があり、加工しやすいので様々な製品に使われています。
ちなみに銀面とは乳頭層の表面のことを指し、「毛と表皮を取り除いた真皮の表面」のことをいいます。
ヘビ革(パイソン)
牛革の他には豚や馬や羊などが定番ですが、ヘビやトカゲなどのエキゾチックレザーも有名です。
本革は使えば使うほどなじんでいき、経年変化を活かしてお手入れを続ければ、長年美しい風合いのまま使い続けることができるのが特徴です。
「合成皮革」とは合皮(ごうひ)やフェイクレザーと呼ばれ、布地の上にポリウレタンやポリ塩化ビニルなどの樹合成脂で加工して本革に似せて作られた素材のことです。
ポリウレタン樹脂を使用したものはPUレザーといい、本革に近い見た目と質感が特徴です。
弾力性と柔軟性があり、身近なものであれば合皮のソファなどに使われることが多いです。
ポリ塩化ビニル樹脂を使用したものはPVCレザーといい、加工性が高く、カラフルな色に仕上げることも可能なので合皮のカバンなどに使われることが多いです。
有名なものだと、Louis Vuitton(ルイヴィトン)の代表的なモノグラムやダミエは、キャンバス生地にPVCコーティング加工した素材で作られています。
本革と合成皮革の違いを調べていくと「人工皮革」というワードが出てきます。
人工的に作られた合成皮革のことかと思いきや、合成皮革とはまったくの別物だというから革の世界は奥が深い…、深すぎる。
人工皮革とは、基盤に不織布を用いて、表面だけでなく、構造や機能、風合いまでを本革に似せて作られたものです。
しなやかな質感が本革さながらで、高品質で作る手間のかかる人工皮革は本革に見間違えてしまうほどよく似ています。
一方の合成皮革は基盤に不織布ではない安価な生地を用いており、表面だけを本革に似せて作られているので、構造や風合いは本革や人工皮革とは異なり、少々ビニールっぽさが目立つ物もあります。
学生さんの中には、このような見た目の靴を履いている人が多いかもしれません。
学生靴で定番のローファーの多くには、「ガラスレザー」という皮を革に加工する工程で表面をガラス張り乾燥した後に研磨して、塗装仕上げをした革が使われています。
難しすぎるので超簡単に説明すると、表面を樹脂でコーティングしたツヤツヤの革のことです。
磨かなくてもツヤがあり、頑丈で雨にも強いので学生靴の大半はこのガラスレザーが使われています。
「樹脂でコーティングしてあるから合成皮革だ!」と思われがちですが、ガラスレザーの中身は本革であることがほとんどです。
さて、本革と合成皮革がまったく別物だということがお分かりいただけたかと思いますが、それぞれは使用していくことでどのように変化していくのでしょうか。
本革はお手入れをして大切に扱えば、10年以上使えるのも珍しくありません。
本革製品が好きな人は使うたびに変化していく革の過程を“エイジング”と呼びます。
新品の頃と比べて、色、ツヤ、質感が変わる様子を楽しみ、キズやシワでさえも愛でるほどです。
しかし、新品の頃とどんどん変わっていく表情に「思っていた物と違う」と感じることもあるので本革製品は慎重に選ぶ必要があります。
過去に「6ヵ月間まったくお手入れしないと革靴はどうなる?」という面白い企画をしたことがあります。
片足はセオリー通り1ヵ月に1回お手入れをして、もう片足は何もせずに放置した状態で6ヶ月間着用した革靴の変化をお届けしました。
結果は、何もお手入れをしなかった片足はホコリの付着はもちろんのこと、キズや擦れがつき、ツヤが弱まり、広範囲に履きジワが入った様子が見られました。
本革は人間のお肌と同じく保湿をしないと乾燥が進み、潤いがなくなります。
乾燥によるダメージは広範にわたり、カサつきや剥離がしやすくなったり、色あせやシワになりやすかったりします。
また、何かの拍子にぶつけたことによるキズや擦れも、治癒力のない革は自然に治ることはありません。
エイジングとしてキズやシワを楽しむのと、何もせずに放置してボロボロにするのとでは解釈が違ってきます。
理想的な革に育て上げるために、本革には定期的なお手入れが必須です。
デザインによってはあまり変化を好まず端正な状態をキープしたい物もあるので、そのニーズに合わせてお手入れ方法を変えることもエイジングの楽しみのひとつではないでしょうか。
本革の靴のお手入れの基本は、汚れ落とし、保革・栄養、防水です。
特に最重要となるのが「保革・栄養」の工程で、革をよりよい状態に保つための靴クリームにもこだわりたいところ。
サフィールの〈ビーズワックスファインクリーム〉は、保革・ツヤ出し効果に優れた乳化性の靴クリームです。
天然原料のビーズワックス、カルナバワックス、アーモンドオイルなどが主成分で、革に必要な栄養を与えながら程よいツヤを出すことができます。
キズや色あせをしっかりカバーする着色効果にも優れているので、毎日着用する革靴が万が一キズついてもご安心を。
サフィールの上級ライン・サフィールノワールの〈クレム1925〉は、一流の靴磨き職人がこぞって愛用する代表的な靴クリームです。
先程のビーズワックスファインクリームと違い、クレム1925は油性クリームです。
靴クリームの多くは水分を含む乳化性クリームが多いのですが、クレム1925のような油性クリームには水が含まれておらず、ロウと油が主成分なので、天然原料のビーズワックス、カルナバワックス、シアバターの含有力が濃く、革にしっかりと栄養とツヤを出すことができます。
補色効果も高いですが、革の風合いを活かした上品で自然な色づきに仕上がるのが特長です。
タラゴの〈シュークリーム〉は、着色原料を得意とするメーカーが開発していることもあり、抜群の色づきの良さを発揮する乳化性クリームです。
こっくりとしたクリームが革に密着してキズや色あせをしっかり補色します。
リーズナブルな価格なので学生さんでもお求めやすく、コスパ最強と呼び声が高いクリームです。
合成皮革や人工皮革はエイジングという概念はありません。
経年変化ではなく経年劣化が起こり、本革の場合は味や渋みとして楽しめるキズやシワも、合成皮革ではボロボロの一言で片づけられてしまいます。
合成皮革の寿命は長く見積もっても3年が限界かと思います。
ちなみに、人工皮革の寿命は5年ほどだと言われていますが、本革に比べると短命です。
加水分解した合成皮革のジャケット
合成皮革は製造されたその日から加水分解が始まっており、絶対に避けて通ることはできません。
表面にベタつきが出たり、樹脂コーティングがポロポロと剥がれてきたり、ひどい場合は卵の薄皮のようにペロッと表面の1枚が剥がれて中身の生地が見えてしまうなんてこともあります。
本革の場合は多少のキズであればクリームやワックスを用いて隠すことができ、あえてキズを活かしたお手入れで味として表現することも可能ですが、合成皮革の場合はそうはいきません。
本革のように定期的なお手入れが不要というメリットはありますが、裏を返せば本革ほどお手入れのバリエーションがないので劣化を防ぐことが難しいというデメリットがあります。
合成皮革のお手入れの基本は汚れ落としのみです。
合成皮革に使用できるクリーナーが最適ですが、軽い汚れであれば水拭きでも構いません。
クリーナーを選ぶ際は、なるべく油分やワックスが含まれないタイプが良いでしょう。
本革には必要な成分ですが、毛穴のない合成皮革は浸透性がなくベタつきが残ってしまうかもしれないので使い方によっては注意が必要です。
タラゴの〈シャンプー〉は、水を使わずに汚れを落とすことができるドライクリーニングです。
きめ細かいムース状の泡が汚れをキャッチして取り除き、クロスで拭き取るだけなので簡単に使えます。
タラゴの〈ユニバーサルクリーナー〉は、カバンのクリーニング業者も使っているプロ御用達のクリーナーです。
界面活性剤系なので、泡が汚れや古いクリームを浮かせて落としやすくしてくれます。
サフィールの〈レノマットリムーバー〉は、市販品の革用汚れ落としの中で最強と言われているほど抜群の効果を発揮します。
主成分は溶剤なので、汚れや古いクリームを溶かしながら落とすイメージです。
揮発性が高いので合成皮革に使用してもベタつかず、すぐにサラッと乾きます。
こちらのレノマットリムーバーは、スニーカーや運動靴のミッドソール(ラバー)の落ちにくい汚れもキレイさっぱり除去してくれることでも人気です。
こんな疑問が浮かんでいそうですが、絶対にダメというわけではないのですがあまりおすすめはしません。
合成皮革自体は水の影響を受けませんが、靴の内側のインソール(中敷き)や、アッパー(甲革)とソール(靴底)を貼りつけている接着剤が剥がれてしまう恐れがあるからです。
合成皮革とはいえ、本革の革靴同様に取り扱っていただくことをおすすめします。
合成皮革の靴は靴クリームを使用する必要がないですが、履いていくうちに表面のツヤが弱まり使用感が出てくるので、見た目を良くすることを目的で靴クリームを使用することをおすすめします。
合成皮革におすすめの靴クリームは、タラゴの〈セルフシャインクリーム〉です。
とにかく補色力と定着力が抜群に良いので、滑りやすい合成皮革の表面にも吸着してなじんでくれます。
成分のカルナバワックスが美しいツヤを与えてくれるので、本革さながらに見た目をグレードアップさせることができます。
付属のスポンジで塗るだけの手軽さなのも、簡単にお手入れしたい合成皮革にぴったりです。
ちなみに、先程紹介したガラスレザーにもこちらのセルフシャインクリームはおすすめです。
靴クリームがなじまないことからお手入れに苦労しがちなガラスレザーにもぴったり定着してキズをカバーしてくれます。
本革と合成皮革の違いについてお話させていただきました。
どちらにもメリットとデメリットがあるので、それを理解して正しいお手入れをすれば靴は長持ちします。
美しい靴を履いているだけで周りから頭一つ抜きん出ることができるので、良い意味で目立つこと間違いなし!
今回の内容は皆さんが大人になり、社会人になった日にも必ず役立つ情報です。
少しでも靴磨きの楽しさを知っていただけたなら嬉しいです。
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