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くすみのシューケア生活
乳化性とか油性とか靴用クリームにはいろんなものがありますが、それよりもずっと軟膏のように固そうな見た目で、これってスムースレザーのドレスシューズに塗ってもいいのかな?という不安を一気に払拭してくれたクリームがこちらのミンクオイルクリームです。 ねっとりとした質感のクリームで革へ馴染むのも時間がかかるのですが、馴染んだあとはじんわりとしたツヤと、何より革がしっとりとして大変に驚き気に入った思い出があります。
ひとつのクリームのみで靴をケアするとどう変化していくのか、実験をしてみたくなります。鞣しや仕上げなど、革ごとに性質が違うので全ての靴が同じように経年変化するかと言えばそうではありませんが、やりたいと思ってしまったが最後。やらないと気が済まない性分なのでございます。
ほんの数回、ミンクオイルクリーム以外のクリームやオイルを使用したこともありましたが、ほぼこのクリームのみで育てた靴です。
2019年の6月に旅先にて購入した靴です。最初はこんな色でした。
とんでもない猛暑だったので購入したばかりのこのローファーを履き下ろした結果、靴擦れしまくったのですが、このクリームを塗ると次の日は驚くほど足に馴染んでいた、という抜群の効果を発揮してくれたクリームでした。 他のクリームでも同様の効果を得られたのかもしれません。僕の血だらけの足を救ってくれたという思い出補正が効いているのは間違いなさそうですが、それにしてもあまりにも簡単に馴染んだことが僕には驚きだったのです。
それだけではなくしっとりと保たれた革の質感はまさしく僕好みであり、今後もこの質感を保ち続けたいと思ったのでした。 クリームを使い続けた変化をご覧ください。
そのまま使い続け、半年後の2020年1月。 まだまだ革の滑らかな質感が保たれています。冬にはほとんどローファーを履かなかったのですが、この靴は稀に履いていました。なのでうっすら鏡面磨きをしていますが、それにしても甲の部分の質感とツヤはかなり素敵です。
そして1年後の2020年の6月。 頻繁にローファーを履く季節になりましたが、似たような色の靴が多くなってきたので、ダークブラウンに染めてしまいました。なので、このクリームのみでの経年変化はわかりづらいのですが、それでも革は好みの質感を保ってくれています。
2020年の7月。 ツヤがあまり出ていないのは、ミンクオイルクリームを塗った直後に出かけたからかと思われます。
浸透がゆっくりなので、塗ってしばらく放置するのがおすすめです。僕は焦らず一晩寝かせることが多いですが、そうすると翌朝革はもっちりして、馬毛ブラシでササッとやってあげるだけで簡単にツヤが戻ります。 スピード磨きには向きませんが、意外と簡単なお手入れで仕上がるのも気に入っているところです。
そしてさらに1年後の2021年7月。 夏には積極的に履いきて、ミンクオイルでケアをしてきました。1度くらいは違うクリームが使われることもありましたが、基本ミンクオイルのみ。 以前より、細かいキズやシワは確実に増えたようですが、しかしなかなかシブい経年変化になっているのではないかと思うのです。 ダークブラウンがある程度抜けて、程よい茶色に落ち着きました。
普段はほとんど鏡面磨きをしない靴ですが、したらしたでやっぱりいいですね。 甲のあたりのシワが柔らかく保たれているのが何より僕の好みでして、僕の中でかなり理想的な育ち方をしてくれています。ほんのりツヤはあるのですが、革が丸みと柔らかさを帯びて、新品の靴には出せない使用感が出ています。
これとは違う経年変化も模索していきたいところですが、これはこれで僕の中での完成形となりました。そろそろかかとの交換をしてあげる時期ですね。
コードバンにも気持ちよく使えるのは前回の記事でもご紹介させていただきましたが、油分は革にとどまりやすいので、革を変色させてしまう可能性もあります。革の繊維層まで浸透した油はなかなか抜き出すのは難しいので、濃くなった色を元に戻すのも簡単ではありません。 吸い込みやすい革や色の薄い革は目立たないところで確認してからお使いください。これはミンクオイルクリーム以外のクリームでも同様です。
また、革にとどまりやすいので革を柔軟にする効果も高く、革も伸びやすくなります。実際2年近く使ってみて革が伸びた感覚は確かにありますが、そこまで気になるほどではありません。
メンズのドレスシューズであればそれほど問題はないと思いますが、革によっても使用感は違ってくるはずですので、心配な方はお控えください。
日用品でもなんでも、気に入ったものに出会えると使うことが楽しく、それが習慣となるけれども、気付けばそれを使うことに新鮮さも感動も無くなり、良くも悪くも日常に溶け込んでしまうことがあります。 でも無意識に使っているものというのは違和感も不満も覚えることなく使えているわけで、実はそれってすごく贅沢なことだと思うのです。
ツヤ重視やスピード磨き重視、という方には合わないかもしれませんが、革の柔らかさや質感を重視されたい方には非常におすすめのクリームです。 購入してから2年と少し。夏はもう少し続きそうですので、今年の夏も引き続きこの靴を履いて、ミンクオイルクリームでケアをしてまいります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
本コラムでくすみさんが紹介された商品はこちらで購入できます。
Writer profile
楠美 皓平 Kohei Kusumi
革靴ジャーナリスト・ブロガー
祖父に教えてもらった靴磨きがきっかけで、靴のお手入れ方法や革靴に興味を持ち、『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行う。また、ファッションとしての革靴だけでなく、足を支える道具としての革靴という側面から、靴選びの大切さについても発信をすべく知見を深めている。 ブランドや職人の取材のライティングをする一方で、靴好きの方のコミュニティの活性化の一環としてイベント運営も手がける。 前職のwebディレクターの経験からシューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども行う。
blog https://kusumin.com/
YouTube https://www.youtube.com/c/LeatherShoeJournal
instagram https://www.instagram.com/starfish0925/
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