ホーム > トピックス > 頭を悩ます皮革のトラブル “2種類のシミ”の理由と対策
公開日:2021/11/11 

頭を悩ます皮革のトラブル “2種類のシミ”の理由と対策

※2021年11月5日(金)に配信された、第18回インスタライブのフォロー記事です

革製品のお悩みあるある「異なる2種類の“シミ”について」

雨で靴が濡れた後に見られる、輪状のシミ
消毒用アルコールで生じたシミ

サフィールの公式Instagramが11月5日(金)に配信したインスタライブはご覧いただけましたでしょうか?
前回に引き続き今回はDaniel&Bob Japanの協力の下、革製のバッグ、小物、靴には付きもののお悩みである「シミ」について実験を交えた対処法を公開しました。

本記事では、残念ながら見逃してしまった方にもわかりやすく原因と対処法をお伝えしていきたいと思います。

 

 


目次

  1. 雨ジミが起こる理由と対処法
  2. 新たなトラブル!?色抜けによるシミ?

まとめ

 


 

1.雨ジミが起こる理由と対処法

皮革製品にとっての大敵である雨や雪。
今でこそ最初から防水加工がされている皮革もありますが、風合いが命なパティーヌ仕上げの製品やベジタブルタンニンレザーなどの上質で高級な製品ほど水や油が染み込みやすい素材が用いられていることも多いです。

雨や雪が染み込んでしまうことが原因でよく起きるトラブルが「雨ジミ・輪ジミ」です。

靴側面に表れた波状のシミ=雨ジミ

靴側面に表れた波状のシミ=雨ジミ

靴の甲部分(アッパー)に表れたシミ=輪ジミ

靴の甲部分(アッパー)に表れたシミ=輪ジミ

それではなぜ皮革に水が浸透することでこのようなシミができてしまうのでしょうか?

といっても理由は1つではなく様々で、かつ複合的に起こるものなのですが、「なぜこんな跡が残るんだ?」と悩まされるのが「雨ジミ・輪ジミ」なんですよね。

雨ジミ・輪ジミが起こる原因の図解資料です。

皮革に水が浸透する時、皮革が元々含む油分やワックス、または汚れが、この水の浸透力に押しやられて浸透箇所の外周に溜まっていきます。
この時点では濡れた箇所が湿りで色が濃くなっているので、それほどこの押しやられた油分、ワックス、汚れの輪郭ははっきり見えません。
その後、水分は乾いていくことで浸透箇所から抜けていきますが、この時に濡れていた箇所(油分、ワックス、汚れが押しやられた箇所)の輪郭として、含有成分の跡として残ってしまいます。
これが靴底や縫い合わせ、裁断面からの給水によって起こる波状の“雨ジミ”だとか水滴跡が輪っかになって残る“輪ジミ”の発生原因です。

では、このような跡が残った場合はどのように対処すればよいのでしょうか。

ここからは段階を踏んで進めていきます。

 

 

▶水で濡らす

濡れたことでできたシミなので、もう一度濡らすことで改善することができます。
雨ジミ・輪ジミになっている箇所に水を含んだクロスで水拭きをします。
再度水を含ませることで、押しやられて跡になっている成分を再び今水を含ませた範囲へ散らすことで目立たなくすることができます。
当然ながら水を含ませる際にもシミ部分のみに集中してしまうと、あえて湿らせた部分がかえってシミになってしまうので、シミ部分を中心に周囲へ広範囲に、グラデーションをつけるように湿らせるのがポイントです。
シミができてしまってからさほど日が経っていなければ、これだけで十分改善が見られます。

 

 

▶レノマットリムーバーを使う

もし濡らしただけでは改善が見られなければ、次に“サフィール レノマットリムーバー”を使います。
レノマットリムーバーは溶剤系のクリーナーですが、このワックスや油分を溶かす力と揮発性を活かしてシミを抜きます。
上記「濡らす」工程のあと、革が乾いても改善が見られなかった時、今一度シミとその周囲を濡らします。皮革が湿った状態で、レノマットリムーバーをシミに浸透させながら拭いていきます。
水だけでは皮革に分散できなかった成分も、レノマットリムーバーの力で固着が弱まり、濡らした範囲に散らされていきます。また溶かされた油分・ワックスはレノマットの揮発性によって皮革から抜けやすくなります。これである程度ガンコなシミもうすくなり、この後の処置でほとんど目立たなくすることができます。

 

 

▶それでもダメなら………

水、レノマットリムーバーでも改善されなかった場合は、奥の手を使います。
それは、

“サフィール ダイフレンチリキッド ニュートラル”です。

この商品は、サフィールブランドから発売されている皮革用染料の無色(透明)なのですが、本来はダイフレンチリキッドの他の色を希釈して発色を明るくするためのものなのですが、実は「強力なシミ抜き」としても使用できます。

この染料、アルコール系染料ということでアルコール特有の大変強力な浸透力と揮発力を持っています。
染色においては「発色の良さ」や「速乾性を活かした重ね塗りの効率性」がウリですが、この特長はシミ抜きにも絶大な効果を発揮します。
最初の「水」を使った改善よりも浸透性が高く、また油分やワックスを溶かす力を持ち合わせているので、雨ジミ・輪ジミと化した成分をしっかりと分散・揮発させることができます。
したがって、水やレノマットリムーバーでは変化が見られなかったシミでもばっちり改善させられることができるわけです。

 

※以下の画像はインスタライブで実際に行った“バッグのシミ対策実演”のスナップショットです。

バッグについたシミのイメージです。

バッグについたシミ

ダイフレンチリキッド ニュートラルで輪ジミの輪郭をぼかしています。

ダイフレンチリキッド ニュートラルで輪ジミの輪郭をぼかす

上記いづれかの方法で改善が見られたら、あとは抜けた油分を補い、ワックスでツヤを出してあげればすっかり元通りの状態にまで近づけられます。
まずはデリケートクリームで抜けてしまった水分・油分を補い、さらにレノベイタークリームで保湿効果の高い動物性油分と光沢・保護のためのワックスを与えます。
皮革が乾燥した状態で動物性油分やワックスを与えてしまうと、今度はそれらがシミの原因になってしまいます。まずデリケートクリームを先に塗布しておき、急な油分やワックスの染み込みを予防しておくのがポイントです。

 

え?「じゃあ最初からダイフレンチリキッド使えってシミを抜けばいいじゃないか」ですって?

 

そうしたいのはヤマヤマですが、当然強力な効果をもたらすアイテムを使う時にはそれ相応のリスクを伴います。

そのリスクとは“色落ち・色抜け”です。
アルコール系染料なので浸透性が高く、油分・ワックスを溶かす力も持っている、ということは皮革の元々の色を抜いてしまう場合もあるということです。
シミを抜こうと思ったら、シミだけでなく色まで抜けた……なんてことになりかねません。

もちろんシミが改善できたら元々の色に近いダイフレンチリキッドで“染め直し”をすることができますが、道具も時間も余計にかかりますからできるだけライトな方法から試してみて、それでダメだったらの奥の手としての“染め直し”を考える、というように段階を踏みながら改善を試みてもらえればと思います。

 

 

※雨濡れで起こるトラブルについて書かれた記事はこちら

本日も雨。靴に雨が当たって、困ります。

2.新たなトラブル!?色抜けによるシミとは。

コロナ禍によって生活習慣は大きく変化しました。
特にマスクの常時着用やアルコールによる手指の消毒などはもうすっかり生活の一部となったように思います。
そのような変化の中で、革靴のトラブルとして増えた問い合わせがあります。

それが“消毒用アルコールが垂れたところがシミになってしまった……”というトラブルです。

※画像はこちらの海外記事から引用しました。
The tip – How to avoid and fix stains from hand sanitisers
https://shoegazing.com/

これは「アルコールが垂れたところの色が抜けて『シミのように』なった」という方が正確です。
前述の雨ジミ・輪ジミや油によるシミは皮革に何かしらの成分が残った跡、しみついた跡なので文字通りの「シミ」ですが、アルコールが垂れたあとはおそらく周囲より色が明るく・薄くなっていると思います。
これはアルコールによって皮革の中に含まれる色の成分(主に染料)が飛んでしまい色が抜けてしまったことで起こるトラブルです。

アルコールがシミになる理由の図解資料です。

アルコールがシミになる理由

・色抜けだから、と安易にやってはいけないNG行動

「色が抜けたなら、色を補えばいい」という簡単なものではないのがこの症状。
アルコールで革靴の色が抜けた時に、避けてもらいたい行動がコレです。

 

靴クリームを使って色をつける

 

なぜかはまず以下の図をご覧ください。

アルコールの色抜けでやってはいけないNG行動の図解資料です。

アルコールの色抜けでやってはいけないNG行動

色が抜けたところに色を補おうと靴クリームを使えば、もちろん色は入るのですが当然ながら、うすくなったところ以外の何ともなっていないところにもクリームはついてしまいます。
ということは、全体に均等に色を付けても色の差が埋まらないのでシミは隠し切れません。
少々目立たなくはなるかもですが根本的な解決にはほど遠い結果に………。

 

そこでオススメなのが以下の方法です。

 

 

ダイフレンチリキッドで染め直し!

 

 

と、その前にまずは雨ジミ・輪ジミ対策でもご紹介した「水」と「レノマットリムーバー」で改善を試みます。
うまくいけば元々の色味が色抜けの箇所に移って目立たなくすることができる場合があります。
それでダメなら思い切って染め直してみましょう!

 

手順は実は↑で紹介しています。
アルコール系染料のダイフレンチリキッド ニュートラルを使って、まずはアルコールで色抜けした跡が目立たなくなるくらい、その周囲の色を抜いてしまいます。
そして色がうすくなった箇所を、再び元々の色になるように染色をしてしまうという流れです。

 

工程は大掛かりですが、びっくりするほどきれいに仕上がるので満足度は非常に高いです。
実際にインスタライブでお見せした実験のスナップショットを掲載しておきます。

パティーヌされた靴に見立てたサンプルの画像です。

パティーヌされた靴(と見立てたサンプル)

アルコールがかかって色抜けしてしまった状態のイメージです。

アルコールがかかるとこんなことに……

ダイフレンチリキッド ニュートラルを使って色が抜けた跡を目立たなくしています。

ダイフレンチリキッド ニュートラルで色抜け跡が目立たなくなるまで整える

染め直しをして、クレム1925で仕上げ直しをした完成画像です。

染め直し後、クレム1925を油分・ツヤを補い仕上げ直し完成

今回は元の色に染め直す、というのを実演していましたが、いっそ元の色とはまったく違う色に「染め替え」てしまうのも面白いですよね。

 

※アルコールの色抜け関する他の記事はこちらからご覧いただけます。

まとめ

そもそも、雨ジミや輪ジミ、色抜けが起こる原因として挙げられるのが「濡れた状態での放置」です。
雨・雪にせよ、アルコールにせよ、濡れてしまった時にそのままにせずに拭き取っておけば、シミや色抜けのリスクは大幅に回避できます。
雨や雪で濡れた靴を建物に入った時にさっと拭う姿も、これはまたこれで紳士・淑女のふるまいとしてかなりスマートだと個人的に思います。

 

さらに雨ジミ・輪ジミ、色抜けのリスクを高めるのが「お手入れ不足」です。
日頃のお手入れを怠り、皮革を乾燥させてしまうと、それだけ水や油、汚れなどが染み込みやすく取りにくくなります。それに皮革表面がワックスや油分でコーティングされていれば多少の雨や雪、アルコールなどを弾くことができ、シミの原因を遠ざけることにつながるわけです。

 

その上、さらに防水スプレーまでかけておけば、シミ・汚れ対策は万全、もう言うことはありません!

 

シミや色抜けに嘆くようなことになる前にまずは予防策としての「日頃のお手入れ」をしっかりと行っておくこと、そしてもしシミや色抜けが発生しても慌てる必要がないことを心に留めておいてください。

 

そして、雨ジミ・輪ジミ、アルコールの色抜けなどに気づいたもしもの時も、本記事でご紹介したような対策をなるべく早めに実施してみてください。

Le Beau
  • facebook
  • twitter
Copyright (c) Shoes Life All Rights Reserved.