革靴のお手入れをされる方にはおなじみかと思いますが、シューケアグッズには“シューツリー”や“シューキーパー(シューズキーパー)”と呼ばれる製品があります。
靴の中に入れて、形を整えておくというアイテムです。
当サイトSheosLifeではこれまでにもシューツリー・シューキーパーに関する記事をお届けしてきました。
「シューツリー?シューキーパー?何が違うの???」とか、
「いろいろな形・材質があって何を選んだら良いかわからない………」とか、
いざシューツリー・シューキーパーを使ってみようと思っても、わからないことが多く躊躇している方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、シューツリー・シューキーパーの種類や特長とその使い分け方についてご紹介していきたいと思います。
シューツリーとシューキーパーは同じような用途で異なる名称の商品として存在していますが、定説としては「木製かそれ以外か」を表しているようです。
実際はそこまで細かく明文化されてはいませんので、どちらが正解というものは無いようです。
余談ですが、Googleで「シューツリー」、「shoe tree」、「シューキーパー」、「shoe keeper」という単語をそれぞれ検索してみると………
という結果となりました。(2021年9月調べ)
どちらかというと“シューツリー”という名称が一般的なようですね。
さて本題。シューツリーやシューキーパーには下記のような役割があります。
・靴の型を整える
アッパーのつぶれや履き崩れを整える/履きジワを伸ばす/ソール(靴底)の反り返りを戻す、など
靴は履いているうちに形が崩れていきます。
靴を履いて動くと伸びたり曲がったりが繰り返されるアッパー(甲部分)は潰れたりシワが入ります。
ソールにも曲がり癖がつくと、靴を脱ぐと反ったままになってしまいます。
履き込まれて、甲がつぶれて靴底が反り返った靴のイメージ
シューツリー・シューキーパーにはこのように崩れた靴の形を整える役割があります。
・靴内の調湿、消臭、除菌など
人間は1日靴を履いて歩くと、コップ1杯分の汗をかくと言われています。
靴を脱ぐとモワッと湿気や嫌なニオイを感じることがありますが、シューツリーやシューキーパーには靴の中の湿度を調整し、ニオイを軽減する役割を持つものがあります。中には除菌効果があり、防カビ・防虫効果を発揮するものも。
効果は、シューツリー・シューキーパーに用いられる素材によって異なります。
・靴のお手入れ時のサポート
履きジワを伸ばし、靴を持ちやすくする/靴内で支えとなり、力を加減しやすくなる
シューツリー・シューキーパーを入れると履きジワが伸び、靴の中で柱のように支えとなるのでブラシを掛けるときやクリーム、ローションを塗るときなど細かなところにまでしっかりとお手入れを行き届かせられるようになります。
シューツリー・シューキーパーには様々な形状があり、また様々な素材が用いられています。
まずは代表的な形状をご紹介します。
まずはシューツリー・シューキーパーの主な種類(形状)をご覧ください。
種類の次はシューツリーやシューキーパーに用いられる素材についてです。
シューツリー、シューキーパーには以下の素材が使われています。
木材
など
その他には、プラスチックやスポンジクッションなどもよく使われています。
木材を使う利点は“調湿効果”に優れていることです。
汗などで湿った靴内を木材の吸湿・発散効果で適度な湿度に整えます。
効果は使用する木材によって異なり、またニスや塗装で表面が加工されたものより、無垢・素仕上げの物の方が吸湿効果が高いです。
(表面加工されたものは傷がつきにくく、汚れがついてもすぐ落とせるというメリットがあります)
また加工のしやすさも木材を使う利点です。
プラスチックタイプのシューキーパーを使う利点は“軽さ”です。
旅行先や出張先などでもシューツリー・シューキーパーを使いたい、なんていう時には“軽さ”はシューキーパー選びに重要な要素です。
プラスチック製は大量生産にも向いているので、比較的安価な製品が多いです。
スポンジクッションタイプのシューキーパーには“あたりの柔らかさ・収縮性”という魅力があります。
スポンジクッションはつま先パーツに使用されており、靴内に入れた時につま先の形に合わせて変形するためフィット感が高いです。
素材自体が柔らかいのでパーツの角が当たるようなことがなく、靴に「妙なあたり(跡)」が残るようなことがありません。
それでは上記の各製品の形状ごとに特長を挙げていきます。
バネ(スプリング)式と言われるタイプですが、これはバネが伸縮する時にかかる力(張力、テンション)を使って靴の履きジワを伸ばすことを目的としたシューキーパーです。
軽量なので自宅遣いだけでなく旅行や出張時にも持ち出せるのがポイントです。
特に靴のお手入れをする時、履きジワをしっかりと伸ばしてシワの奥までブラッシングや靴クリームを塗ることができ、靴のすみずみまでしっかりとお手入れの効果を行き渡らせることができます。
さらに軽量なので、靴のお手入れの際に靴を持ち上げて支える手や腕への負担がグッと和らぎます。
後述する他のタイプのシューツリーはそれなりに重量があるので、そちらを靴磨きの時に使うと手に持って支えている手・腕は結構疲れますから、少しでも軽い方がありがたいです。
スレイプニル 木製シューキーパーはパイン(松)材を使用していますが、パインは木材の中では軽量な部類なので扱いやすいかと思います。
スレイプニル 木製シューキーパーはフリーサイズなので靴の大きさを問わず使えますが、靴への適応サイズの最小値(24.0cm)と最大値(28.0cm)には結構な差があるため、バネのテンションのかかる強さもその差の影響を大きく受けます。
大きい靴に対してはバネが伸縮する力は甘くかかり、小さい靴に対しては強くかかる、という点に注意が必要です。
またその手軽さゆえに万能に思われがちな木製シューキーパーですが、特に気をつけたいのが「バネ式は入れっぱなしNG」である点です。
後述するシューツリーと異なる点が、「かかとパーツの形状」と「バネが戻ろうとする力のかかる方向」です。
かかとパーツが楕円形(俵型?)なので、靴のかかとにはパーツ形状に沿ってピンポイントでバネの力がかかります。
したがって長期間入れっぱなしにしてしまうと、靴のかかとはパーツの形に沿って変形・型崩れしてしまう恐れがあります。
さらに、バネ式シューキーパーはバネが戻ろうとする方向に向けて力がかかるので、つま先パーツはバネ部分を中心にななめ上方向に向かってバネが戻ろうとする力がかかります。そのため「反り返った靴底を整える」というシューツリーやシューキーパーに期待する役割については、木製シューキーパーに関してはつま先からかかとに対して平行にテンションのかかる後述のシューツリーに若干劣ります。
つま先パーツがコンパクトな形なため、ローファーやスリッポンなどの履き口の深い靴との相性がよいです。
さらにつま先パーツとかかとパーツをつなぐ金具の可動域が広く、かかとパーツを持ち上げると垂直を超えて135°くらいの角度をつけられます。
可動域が広いと靴に出し入れがしやすく、特に履き口に高さのあるブーツ(サイドゴアやジョッパーなど)への使用は大変おすすめです。
こちらのスレイプニル シダーシューツリースタンダードはS/M/Lの3サイズから選べます。
他のシューツリーと分類するためにこのような名称を当てましたが、読んで字のごとく靴を製造する時に使用する木型(ラスト-Last)を元に作られるシューツリーが該当します。
元がラストですから靴へのフィット感は他の形状とは比べ物になりません。ジャストフィットのシューツリーであればつま先からかかとまでがピタッとはまり、空気が抜けづらいがために出し入れに苦労するほどです。
基本的には汎用的な木型をシューツリー化しているが多く、靴ブランド純正ほどのどんぴしゃりなフィット感は必ずしも得られるものではありませんが、複数のモデルやサイズから細かく選択することができるので、よりフィット感の高いシューツリーを選び出すことができます。
つま先とかかとをつなぐバーツが金具がスプリングで収縮するタイプとネジで固定するタイプがあり、テンションのかかり具合を選択することができます。
しっかりと履きジワを伸ばしたい靴はツインチューブのスプリングタイプ、革や靴底が薄くなるべくテンションを掛けたくない靴にはネジ式タイプ、というように使い分けられます。
ラスト由来ということもあり、木材にはビーチ(ブナ)、バーチ(樺)といった硬質なものがよく使われています。
また吸湿効果や防虫効果に優れるシダー(杉)もよく使われる材料ですね。
シューツリー自体が靴に沿った形状をしていることもあり、シューツリーを入れた状態での長期保管も問題ありません。
各商品の特長が掴めたところで、これらをどのように使い分けるか、をお話しいたします。
どれか1種類に絞って使い回すのも1つの手ではありますが、せっかくたくさん種類があるので、上手に使い分けてみましょう。
簡易的な形状で手軽に使える木製シューキーパーは、ヘビーローテーションで履いている靴への使用がおすすめ。
具体的には、
『朝、外出する時に履く靴からバネキーパーを抜いたら、前日履いた靴に挿入』です。
前日に帰宅して靴を脱いだら一晩置いておくと、脱ぎたてホヤホヤには1日分の汗を吸収した状態からいくぶんかは靴の中を乾燥させられます。
まだ乾ききってはおらず、革が適度に湿度を含んだやわらかな状態でシューキーパーを入れることになるので、しっかり履きジワが伸ばせて型も整いやすいです。
オンタイムの週5日間を5足で回すとすると、1足あたり1回履いたら1週間は休ませられることになるので、靴にとって傷みにくい無理のないローテーションとなりますね。
ただし、木製シューキーパーは簡易的な形で汎用性がありますが、前述の通り入れっぱなしの長期保管には不向きです。
次に履くまでの間隔が長く空くような靴の場合は、スプレッド型やラスト型のようにかかとまでしっかりと型を整えられるタイプの使用がベターです。
木製シューキーパーは靴全体の型を整えるというよりは、こまめに出し入れして履きジワを伸ばすモノと割り切って使うのが良いと思います。
こちらの2タイプは長期保管に適したシューツリーです。
なので普段使いもよいですが、ローテーション間隔の長い準レギュラーの靴や普段は履かない「よそ行きの1足」に入れておくのも大変おすすめです。
それぞれの靴の型に合ったシューツリーを選べるので、使い回すと言うよりはその靴専用のシューツリーとして1足に1組を用意しておくと良いと思います。
靴のお手入れ時には、シューツリーから木製シューキーパーに入れ替えることを、ぜひともおすすめしたいです。
シューツリーを入れている靴はずっしりと重くなり、そのまま靴を磨いていると最初は良くてもだんだんと疲れてきます。
少しでも楽に靴をお手入れするためにもなるべく軽いシューキーパーに入れ替えるのが吉です。
しかし軽さを重視してより軽量のプラスチック製のシューキーパーを使うと、ブラッシングや乾拭きなどしっかりと圧をかけたい工程の時にはシューキーパーが靴の中でたわんでしまい、うまく力を伝えられない場合があります。
したがって、お手入れの時に使うシューキーパーとしては「軽さ」と「固さ」が両立している木製シューキーパーがベストと言えます。
シューツリーを入れてお手入れしているとシューツリーのかかとパーツが靴クリームで汚れてしまうのが気になる……なんていうシューケアあるあるも、お手入れ時にシューツリーからバネキーパーに入れ替えることで回避できます。
A.の木製シューキーパーはヘビロテ靴に使い回す用以外に「汚れてもよい靴磨き用」を1つ用意しておくと便利です。
今回はシューツリー・シューキーパーの特長や使い方、使い分けについてまとめてみました。
なぜこんなに種類があるんだろう、と靴のお手入れビギナーにとってはなかなか敷居が高く感じられるかもしれませんが、特長を理解し、上手に使い分けることを意識するとシューツリー・シューキーパーの選び方や使い方は自然と整理されてきます。
そして、シューツリーやシューキーパーを使用するのは「靴の型を整えるため」と冒頭でお伝えしましたが、それ以外にもシューツリー・シューキーパーを出し入れする時は、定期的に靴の状態をチェックできる絶好のタイミングでもあります。
何の気無しにでも靴を眺めていると、汚れや乾燥具合をみて次のお手入れのタイミングを考えたり、キズ・傷みにいち早く気づくことができるようになったりするわけです。
(いざキズに気づくとショックを受けることになるのですが、ひどくなる前に早期発見できたと思えばラッキーに思えてきます)
それが結果として靴を永く美しく履くことへとつながります。
「シューツリーやシューキーパー、使わない理由が見当たらないじゃん!」と気づいた方は、ぜひ出し入れを習慣化してみてください。
わかりやすく効果を実感できると思いますよ。
シューツリー・シューキーパーのより詳細な情報について、ShoesLifeで多数紹介しております。
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