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ホーム > トピックス > 【海外情報】靴作りの名人ジャン=ミッシェル・カザロンガさんを訪ねて
公開日:2026/10/29 

【海外情報】靴作りの名人ジャン=ミッシェル・カザロンガさんを訪ねて

今回訪問したのは、20余年勤務したベルルッティから独立し、2025年1月に自身のブランド「カザロンガ・パリ」を立ち上げたビスポークシューメイキングの名手、ジャン=ミッシェル・カザロンガさんの工房です。

「上質な革製品は、希少価値がある保存すべき芸術作品である」というサフィールの企業理念を具現したかのような、珠玉の靴が生まれる現場を取材しました。


なお、本記事は、サフィールのブログ記事Jean-Michel Casalongaを意訳したものです。

サフィールは、ビスポークシューズに特化したマスターシューメーカー(靴作りの名人)ジャン=ミッシェル・カザロンガさんを訪ね、経歴、技術、たぐいまれな仕事に対する思いについてお話をうかがいました。

 

カザロンガさんの靴職人としてのキャリアは、ベルルッティから始まります。
見習いとして入社して22年勤務したメゾンでは、工房の責任者を10年務めました。
この経験を活かし、パリで独立したいという夢をかなえるべく、起業を決意します。

 

現在、レディートゥメイドとメイドトゥメジャーの紳士服を手掛けるチフォネリのエレガントなブティックに間借りしているカザロンガさん。
マルブフ通りにある古巣の工房からの距離はわずか150メートルです。
名門テーラーのチフォネリは、絶好の顧客層をもたらしてくれます。

経営者のロレンツォ・チフォネリさんとは親しい間柄で、服と靴をコーディネートして展示したりクライアントを紹介しあったりと、まさにギブアンドテークの姿勢を維持しており、おたがいにメリットのあるコラボレーションを円滑に育んでいます。

カザロンガさんのアプローチの根幹をなすのは、何といっても人と人とのつながりです。
ラストの製作にあたっては、まずクライアントと話をするところから始め、採寸し、要望や計画やライフスタイルを把握します。
そして、その美しさを最大限に引き出すよう努めつつ、クライアントのシルエットに合わせてラストを設計します。

 

テーラーが体の線に沿ってプロポーションを強調したり補正したりするように、締め付け感のまったくない足の状態を尊重する靴を作ります。
目指しているのは、クライアントの要望に完全に一致したシルエット作りです。
カザロンガさんの仕事はすべて手作業で、すくい縫いにも機械を使いません。
その技術は完全な職人技です。決して我を通さず、すべてクライアントに合わせてデザインされます。

靴は、木(ラストとシューツリー)、スキンステッチとアッパー(縫製とアッパー作り)、革(吊り込みと靴の形作り)の三大要素を中心に組み立てられます。
カザロンガさんが真骨頂を発揮するのは、ラスト作りです。
全行程を自分で行う技術がありながら、完璧な品質を保証するために選りすぐりのスペシャリストたちと協働しています。

 

革に関しては、フランスの有名タンナー、ガラ(Garat)と協働し、保革剤の濃度、柔軟性、仕上げを決定しています。
協働している大勢のパートナーを「チーム」だと心から思っているカザロンガさん。
人間的な側面をあらためて深く知ることがこの仕事には不可欠だと考え、チームと密接な関係を築いています。

 

1足のビスポークシューズを作るには、通常3回の来店が必要です。
1回目はクライアントとの面談に費やし、計画を把握して心を通わせます。
面談後、パーリングナイフ(パロワールやストックナイフとも呼ばれる、ラストを削る際に使用する大型のナイフ)を使い、足の形状、姿勢、アーチ、ボリュームと、クライアントのシルエットに忠実に手作業でラストを削り出します。
手作業で削り出すラストは、もはや廃れつつあります。
カザロンガさんは、木の塊から足の形を正確に削り出すことができる数少ない独立系職人です。
この稀有な専門技術が、精度の高いフィッティングが可能にします。
パーリングナイフ、手切りヤスリ、サンドペーパーという伝統的な工具を使ってすべて手作業でラストを作っています。

そして、フィッティングモデル(最終デザインに近い、さほど上等ではない材料を使った、何分か試し履きする靴)を作成し、履き心地や色や形の好みについてクライアントから意見を聞きます。
この段階で靴の中の足のポジションを正確に分析できます。

寸法は同じでも、ピッタリしたフィット感を好むクライアントもいれば、ゆとりがある方がいいというクライアントもいて、まったく違う靴ができあがることも。
教科書では学べない、ひとりひとりの思いを汲み取る繊細さが求められます。

 

デザインが決まると、必要に応じてラストを調整、パターンを修正し、完成品の製作に入ります。
靴を組み立ててから、パティーヌと最終調整を施します。
カザロンガさんじきじきにクライアントの足に履かせて納品完了です。

伝統と高い精度、そしてクライアントへの傾聴が絶妙なバランスで一体となった現代におけるビスポークシューメイキングのあり方を、そのキャリアと厳格な基準によって体現するカザロンガさん。
パリ8区のフランソワ1世通り35番地にあるチフォネリのブティックの一角で、クライアントの思いを反映した靴を心を込めて作っています。


いかがでしたか。
高級ブティックに間借りして古巣の目と鼻の先で起業する才覚と、パートナーやクライアントとのラポール(信頼と共感)形成に長けたコミュニケーション力を併せ持つ、職人としてだけでなく経営者としても腕利きのカザロンガさん。
とかく頑固一徹と思われがちな職人気質のステレオタイプなイメージを払拭しうる、現代における独立系靴職人の理想像と言えるのではないでしょうか。


 

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Le Beau
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