前回は「染め仕上げ・パティーヌとは」というお話をいたしました。
今回は染め仕上げのやり方を紹介する前に、まず染め仕上げ・パティーヌをやってみたいけどどんな道具を揃える必要があるのか、についてお話いたします。
そもそもパティーヌをしようと思ったら、
まず最初に「染めるもの・染めたいもの、何を染めたいか」が要りますよね。
ではどんな革なら染められて、染められない革はどんなものなのでしょうか。
染めが可能な革とは、染料が染み込む革です。いわゆる「ヌメ革」や「素仕上げの革」といわれる革表面に加工や仕上げがなされていない、水・液体が染み込みやすい革が代表的です。またそもそもが染め仕上げの革であれば、表面の仕上げ剤やクリーム、ワックスなどを取り除くことによって染料が浸透するようになるので染め替え・染め直しが容易です。
以下に染められない革と染められる革のかんたんな見分け方をご紹介します。
皮革には染料で染められる革と容易には染められない革があります。
それらをかんたんに見分けるのに、良い方法があります。
それは革の表面に「水を垂らしてみる」ことです。
水を垂らしてみて染み込むようであれば、アルコール染料であるダイフレンチリキッドは余裕で染み込みますので染色が可能です。
革表面で水を弾いてしまうようなら、顔料仕上げで水が染み込みにくい革か、あるいは何らかのワックスやクリームで弾いてしまっています。
ワックス被膜やクリームの油分はレノマットリムーバーで取り除いてみて、それでも水が染みないようであればダイフレンチリキッドも革に染み込みにくいので染色が困難な革と言えます。
具体的に画像で見てみましょう。
続いて染め仕上げやパティーヌをするのに必ず必要となるものについてご紹介します。
これがなければ始まらない。染め仕上げするのに染料は必需品です。
サフィールの染料、ダイフレンチリキッドはアルコール染料なので染み込みがよく、また発色が良いのが特徴です。アルコール染料なので乾燥時間も短く、塗り重ねの作業効率も高いです。色を混ぜ合わせることもでき、ニュートラル(無色)と混ぜて色味を薄める=明るくすることが可能です。
単色で染めるなら1色あれば良いですが、仕上がりに深み・奥行きを出したり、濃淡を表現したい場合は複数色を用意するのがおすすめです。
ニュートラルは前述の通り調色に使えるほか、ダイフレンチリキッドで染色後にさらに上から塗布して、手直ししたりぼかしを入れたりするのに使えるので、念のため持っておくことをおすすめします。
ダイフレンチリキッドには塗布用にアプリケーター(通称 ポンポン)が付属しています。なので買ってすぐに手染めにチャレンジできるのですが、ここでおすすめしたいのがクロスと小筆です。
1色を単純にベタ塗りする場合は付属アプリケーターでも十分ですが、綿に含む液量の調整がなれないうちは難しいかもしれません。
コットンクロスは含む液量・力加減の強弱・塗布回数などで多彩な濃淡やグラデーションの表現がしやすいです。クロスはシューケア用に販売されているネル地のクロスをそのまま使用することができます。
付属のアプリケーターやクロスでの手塗りでは届かないような細かなところ(ステッチ、縫い合わせ部分、靴底と甲革の隙間部分など)は小筆を使って塗っていきます。小筆は色ごとに用意します。
ダイフレンチリキッドには一応ビニール製手袋が付属していますが、あくまで簡易的なものでぶかぶかで扱いにくいと思います。手を汚さないという点では十分ですが作業性のことを考えるともっとおすすめのものがあります。
それは薄手のゴム手袋です。使いやすさでいくと、作業用しやすく素手の手指に近い感覚で使える薄手のゴム手袋は大変おすすめです。
手袋を使わずに素手で染料を扱うと手が染まってしまいます(皮ふについても落ちないわけではありませんが、落ちるまでそれなりに時間がかかります)。
後述する色抜き剤 ダイリムーバーを使う場合は、かなり強力な溶剤なので手を守るためにもゴム手袋は必須です。
染めに入る前には汚れを落とすのですが、その時に革表面に塗布された仕上げ剤やワックス、油分など染料の浸透を妨げるものをあらかじめ除去しておくことでムラなく仕上げることができます。
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これは日頃使用されている皮革用お手入れ用品が使用できます。靴なら“靴クリーム”や“ポリッシュ(固形ワックス)”、かばんや革小物なら“レザーローション”や“デリケートクリーム”を使います。
アルコール染料であるダイフレンチリキッドは揮発性が高く、手染め仕上げをした後は揮発とともに革から失われる油分を補う必要があります。
その時、ワックスを含むお手入れであればワックスの被膜効果で色落ちをある程度は防ぐこともできます。染め仕上げのあと、靴クリームを塗布してから全体に薄くポリッシュを塗布(鏡面磨きはかなり有効)することで保湿・保革・ツヤ出しと同時に色止め効果も発揮します。
靴ならそれでも十分なのですが、衣服やかばんの内側でこすれることの多い財布等革小物、かばんなどでは靴クリームやポリッシュの使用が適さないので別途色止め剤(タラゴ ウォーターベースラッカー)を使用して色落ち・色抜けを防ぎます。
また、雨濡れは極力避けたいので、防水スプレーも有効です。
以下は必須ではないですが、あると便利なものです。
細かな箇所を塗る小筆とは別に筆や刷毛もあると便利です。
広範囲を塗りムラが出ないように塗るには、平筆や刷毛がおすすめ。わざと筆筋を残して独特な染めの風合いを出したり、含ませる液量の加減でぼかしを入れたりもできます。
革製品を仕上げるときに塗布されている仕上げ剤を取り除いたり、色を抜いたりするための有機溶剤系の色抜き剤です。
光沢剤やワックスなどの仕上げ剤が使われていると染料の浸透の妨げとなる場合があるので、手染めをする際はあらかじめ仕上げ剤は取り除いておきたいところ。もし前述したレノマットリムーバーでも取り切れない場合には大リムーバーを使います。
また染め替えをする場合、元々の革の色を薄くしたり、染料を抜いたりするのに使用します。
クロスにとって塗布するのですが、かなり強力な溶剤なので必ずゴム手袋をご使用ください。かなり強力でありながら革にはなるべくダメージを与えないような処方となっているのがさすがサフィールというところですが、それでも力を入れてゴシゴシこすったり回数繰り返しやりすぎるとやはり革表面は荒れてしまいますので、軽く拭う程度に留めるのがポイントです。
また顔料で仕上げられた革に使用すると色を顔料を定着させている樹脂が溶けだしてベタつきが発生するため注意が必要です。
マスキングテープ
染料がついては困る箇所は事前にマスキングをしておきます。色を塗り分けたりする際にも境目となる部分にマスキングをすることで可能となります。
容器
染料を混ぜて調色したり、広範囲を染める時などはあらかじめ容器に染料を取って使用します。ダイフレンチリキッドはアルコール成分が揮発すると色味が濃くなってしまうので、余った染料や調色した色の保管はラップで封をするかキャップ付きの容器を使うと便利です。
ドライヤー
ドライヤーを使うことで塗布面を早く乾かすことができます。アルコール染料なので自然乾燥でも滞りなく作業できますが、ドライヤーと使うことで作業効率を上げることもできます。
最初からいきなりこれだけの道具を揃えるのはさすがに大変ですよね。
なので、まずは最低限パティーヌに必要とされる5アイテムから揃えるところからスタートしましょう。
ダイフレンチリキッドやダイリムーバーはShoesLife Storeでも販売しております。ストア限定の筆セットも取り扱っていますので、是非のぞいてみてください。
また、ダイフレンチリキッドやウォーターベースラッカー、ダイリムーバーは下記のお知らせでご紹介しているサフィール フレンズ店舗でも販売をしております。
ご購入に関しては、記載の店舗へお問い合わせください。
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