コードバンの製造工程は、カーフやキッドスキンのような普通のスムースレザーの製造工程と多くの点で異なります。製造期間は約6カ月と非常に長く、多くの手作業と手間のかかる工程を伴います。
靴のアッパーの革は回転ドラム槽で鞣すのが一般的ですが、コードバンの原皮は、ソール用レザーの製造工程で一般的に使用されるピット槽でタンニン鞣しされます。植物タンニン鞣しの工程でオイルを染み込ませることで、コードバン独特の風合いが生まれます。スポンジを思わせる植物タンニン鞣し革の手触りがあり、クロム鞣し革ほど硬くなく、オイルがたっぷり染み込んでいるのでしっとりとしています。
鞣し工程におけるこの2つのステップによってコードバン独特の風合いが生まれますが、その独特な表情の正体には驚かれるかもしれません。大半のレザーと異なり、コードバンのなめらかでつやのある表面は原皮の銀面(オモテ面)ではなく、実は繊維構造が銀面同様なめらかになるまで集中的に磨き上げられた床面(ウラ面)なのです。
大きなスチールホイールで原皮につやを出す工程(グレージング)で繊維を何度も圧縮し表面がなめらかになったら、ワックスで仕上げます。最も有名なコードバンのタンナーはアメリカのホーウィン社ですが、日本のタンナーの新喜皮革とレーデルオガワやイタリアのタンナーも極上のコードバンを製造しています。コードバン特有のこれらの性質を踏まえたうえで、コードバンのお手入れで注意しなければいけない点を見ていきましょう。