明日30日(火)は@saphir_japan月イチ恒例のインスタライブです。
第11回目となる明日は“コードバン&オイルレザー”について、をお送りする予定です。
“オイルレザー”については前回記事でご紹介しましたので、本記事ではインスタライブの予習も兼ねて、
「第11回インスタライブを10倍楽しむために事前に知っておきたい、『コードバンのあれこれ』」
をお届けいたします。
靴好きの皆さんにはおなじみのコードバン。
特にAlden(オールデン)人気の高まりも相まって、コードバンの靴をお持ちの方も増えてきています。
もちろん財布などのコードバン製のすてきな革小物、そしてランドセルなど意外に身近にもあったりします。
独特な光沢や質感、風合いで人の心を惹きつけてやまないコードバンという皮革はどのような革なのでしょうか?
コードバン(Cordovan)
コードバンは馬革です。馬革ではありますがただの馬の革ではありません。
馬のお尻、臀部の革、です。
特にコードバンは欧州で食肉用として生産される農耕馬から採取されるお尻の皮を原皮としています。
コードバンの生産に携わるタンナー(皮革製造業者)は世界的に見ても多くなく、有名どころでは、アメリカ・Horween(ホーウィン)社や日本・新喜皮革などが挙げられます。
コードバンの特長としてまず挙げられるのが、“美しくしなやかな光沢”です。
よく比較に上がるのが、エナメルやガラスレザーですが、そのどちらもが表面を樹脂でコーティングをしている皮革です。
コードバンは鞣し工程でオイルをしっかりと含ませて、グレージングという工程を経てあの美しい光沢を作り出します(詳細は後述)
さて、コードバンが馬のお尻の革である、というのはわかりました。
では牛革など一般的に使われている革とコードバンは何がどう違うのでしょうか?
一般的な皮革は2層で成り立っています。
この乳頭層の表層が銀面と言われるツヤ革のオモテ側となり、網状層というコラーゲンの繊維層を毛羽立たせたのがスエード革となります。
対して、農耕馬のお尻部分には“コードバン層”という特別な層が存在します。
コードバン層はどんな馬からもかんたんに採れるわけではありません。
農耕馬の起源となる野生の馬が、天敵である肉食のオオカミなどに背後から襲われたとき、お尻に噛みつかれても致命傷を負わないように臀部に固いコラーゲン層を発達させたのが、コードバン層と呼ばれる部分となっています。
競走馬やポニーにもコードバン層がないわけではありませんが、範囲が狭かったり厚みが薄かったりなどで製品化するには実用的ではないとされています。
コードバンは、銀面や床面(図の点線部分)を削いで皮革の中層であるコードバン層を露出させます。
通常、一般的な皮革の網状層は、繊維が横方向へ複雑に絡み重なりあっているのですが、コードバン層は繊維が縦方向に緻密に配列されています。
この緻密さがコードバンの光沢や質感の美しさの元になっているわけです。
銀面や床面を削いだ状態は、言ってしまえばスエードやヌバックなどの起毛革と同様に毛羽立った状態となります。
そこにオイルを加え(加脂)、表面を銀面同様に平滑になるまでグレージング(平滑な面を持つガラスやホーローなどのロールで繊維に圧力を加えながら、摩擦をかけることで表面を均す工程)をすることであの独特で美しい光沢を表れてきます。
アメリカのタンナー Horween(ホーウィン)社の動画です。
コードバンの製造工程を紹介しています。
Horween Genuine Shell Cordovan from Horween Leather on Vimeo.
コードバンは「革の宝石」や「革のダイヤモンド」などと例えられますが、コードバン層部分を削り出す工程が「宝石の発掘」を、光沢を出すグレージングの工程が「宝石の研磨」を思わせるのが由来となっています。
★コードバンの弱点
元が毛羽立った状態であるコードバンはオイルアップされてはいるものの、屈曲する部分(例えば、靴の甲の履きジワが入る箇所や財布の折り曲げ部分など)は油分が抜けやすく、押しつぶされた毛羽立ちが起きてしまうため、起毛の隙間から水気を吸い込みやすく、シミや水ぶくれという現象が起こりやすくなります。
コードバンはとてもきれいなツヤをしていますが、先に例を挙げたエナメルやガラスレザーとは異なり、水を通しにくい樹脂でコーティングされているわけではないのが、「水気は大敵」と言われる理由です。
1,2のまとめにもなりますが、コードバンが高価になる理由は以下の通りです。
・牛や豚と比べて、馬革の流通量が少ない。
馬肉を食文化を持つ国は牛や豚と比べて多くなく、原皮の生産量が少ない
・さらに良質なコードバンを採取できる原皮は限られる。
欧州の限られた地域で生育される農耕馬からの採取となるため、生産量はより限定される。
・さらにさらに一頭分の原皮から採取されるコードバンはとても少ない。
馬の臀部の一部。コードバン層が存在する箇所からしか採取できないコードバンは、キズや傷んだ部分を取り除けば1頭分から取れるのは靴数足分が限度です。
1枚のコードバンから作られる製品の数すら限定されるとなると、それは原材料コストとして製品価格に反映されてしまうわけです。
・コードバン生産にかかる期間は手間暇かけておよそ6ヶ月間。
コードバン生産を手掛けるタンナーが少ない理由でもあります。
原皮の希少性が高い上、製造期間が長いためお金に変わるまでにかなりの時間がかかります。
また携わる職人にもコードバンを扱うための高度な知識や経験が必要となり、人材育成にも相当の期間を必要とします。
気軽に大量生産ができる素材でないのが、コードバンの希少性を高めているわけです。
コードバンがどんな革なのか、なぜ高価なのか、を簡単ではありますが紹介いたしました。
コードバンの一番の魅力であるツヤは熟練の職人たちの手により、長い時間をかけて生み出されたものであることをおわかりいただけたものと思います。
この独特な風合いは、今度はユーザー側が維持するための努力をしなければ損なわれてしまいます。
しかし、ポイントをきちんと押さえれば、コードバン製品の扱いはそんなに恐れるものではありません。
コードバンの手入れについて、方法やアイテムなどを明日配信の@saphir_japan 第11回 インスタライブでばっちりご紹介します。
コードバン製品をお持ちの方も、これからの方も、ぜひぜひご視聴いただければと思います。
本記事に合わせて、saphir_japan配信の新スタライブもぜひご視聴ください。
※本記事の執筆にあたり、下記Webサイトを参考にいたしました。
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