普段はクレム1925でお手入れをし、つま先はサフィールのワックスで鏡面磨きをしています。
気に入って履いているうちに、つま先をぶつけて鏡面部分がひび割れてしまいました。
革を傷めずに古いワックスを落とし、できるだけ手早くきれいにやり直す方法はありますか?
このお問い合わせは、ShoesLifeでも非常に多くいただくご相談のひとつです。
実は、落とし方を間違えると革そのものを傷めてしまうこともあります。
そこで今回は、ルボラボで実際に検証してみます。
鏡面磨きは、何層にも重ねたワックスが革の代わりに傷を受け止めることで、つま先を保護しています。
そのため、ひび割れているのは革ではなく、ワックス層だけであるケースがほとんどです。
そこで、以下の2つのポイントを検証していきたいと思います。
A.革を傷めることなく、鏡面(ワックス層)だけを素早くリセットする方法
今回、ShoesLifeでも何度か紹介してきた、
この2通りの方法を検証・比較します。
鏡面磨きのひび割れを再現するため、実際の使用シーンを想定した負荷を与える。
今回は、混雑した駅や商業施設などで、誤ってパンプスでつま先を踏まれてしまった状況を再現します。
鏡面磨きを施したつま先に一定の荷重をかけ、ワックス層にひび割れが発生した状態を作りました。
この状態から、革を傷めずにリセットし、再び美しい鏡面磨きへ戻せる方法を検証します。
まず最初の検証は
A.革を傷めることなく、鏡面(ワックス層)だけを素早くリセットできる方法
ひび割れた鏡面部分にクロスに取ったニュートラルのビーズワックスポリッシュを塗布してみます。
ビーズワックスポリッシュの成分によって鏡面部分がゆるみます。
このようになりました。
ビーズワックスポリッシュのニュートラルを薄く塗布したところ、ひび割れたワックス層が徐々にやわらぎ、無理なく拭き取れることを確認しました。
元々の鏡面仕上げも、サフィールノワール ビーズワックスポリッシュを使用しています。
同じ製品、同じ成分で形成されたワックス層のため、ニュートラルのポリッシュを塗布することで鏡面化したワックス層に自然になじみ、やさしく溶けていきました。
ナチュラルクリーナーをクロスにとってやさしく拭き上げていきます。
このように、ナチュラルクリーナーでも鏡面磨きのワックス層をきれいに除去できることを確認しました。
革への負担も少なく、古いワックスを取り除く性能は十分です。
左:ナチュラルクリーナー 右:ビーズワックスポリッシュ
〈ビーズワックスポリッシュ〉
古いワックス層になじみながら徐々にやわらげることで、鏡面部分を効率よくリセットできました。
ワックス層の部分補修向き。
ビーズワックスポリッシュは、鏡面磨き用ワックスであると同時に、天然ビーズワックスや保革成分を配合したシューケア用品です。
そのため、革への負担をかけることなく、ひび割れた鏡面部を効率よく溶かすことができます。
〈ナチュラルクリーナー〉
植物性油分をベースにしたクリーナーなため、ワックス層へもすばやく浸透し、鏡面だけでなく汚れもまとめて除去。
靴全体のメンテナンス向き。
100%植物由来の成分を使用した強力なクリーナーの特性により、毛穴の奥に入り込んだワックスや汚れをしっかり落としながら、革を過度に乾燥させることなく、革への負担を抑えつつ革本来のコンディションへ整えることができる製品です。
“また、できるだけ手早く、きれいに戻すことができる方法があれば教えてください。”
「ひび割れたワックス層を落としたあと、すぐに鏡面磨きができるか」を比較します。
ビーズワックスポリッシュでリセットした面は、ワックス層が完全に除去されたわけではなく、元々鏡面化していたワックス層とニュートラルのポリッシュが混ざった状態で表面に残っています。
この表面に残ったワックスが鏡面磨きの下地となって再びワックス層として機能するため鏡面の仕上げ直しを大幅に短縮することができました。
靴に残るビーズワックス・カルナバワックスという有効成分を再利用できることがメリットです。
短時間でひび割れた鏡面だけを補修・再施工したい場合に、非常に効率的な方法といえます。
ナチュラルクリーナーは、天然の植物性油分を主原料としていることから、使用後乾燥に時間がかかるという特性があります。
鏡面化したビーズワックスを溶解するナチュラルクリーナーが革表面に残っていると、ビーズワックスポリッシュが定着しづらく、鏡面化するためのワックス層とはなりませんでした。
すぐに鏡面磨きをやり直す用途にはあまり向きません。
ナチュラルクリーナー使用後に鏡面の仕上げ直しする場合は、数時間から半日程度、使用量によっては数日ほど時間を置いてから作業するほうが、美しく仕上がります。
左:ナチュラルクリーナーの後の再仕上 / 右:ビーズワックスポリッシュの後の再仕上
一見すると、
「ワックスを落としたいのに、なぜワックスを塗るの?」
と思われるかもしれません。
鏡面磨きは何層にも重ねられたワックスの膜でできており、さらに表層は文字通り鏡のように平滑なので水などの液体は弾かれてしまうほどです。
そのため、下手なクリーナーで無理やりにこすり落とそうとすると、ワックスの取れ具合にムラが生じ、銀面を傷めたり、色落ち・色あせ、しみなどのトラブルを引き起こすことがあります。
ポリッシュのニュートラルで鏡面がリセットされる理由として、ビーズワックスポリッシュに含まれる有機溶剤の働きが挙げられます。
ポリッシュはワックスをやわらかく保つために有機溶剤を配合していますが、鏡面が形成できるほどガチガチに固まったワックス層が同一成分からなるポリッシュでやわらかく溶けだすわけです。
したがって、鏡面をリセットしたいときは「ワックスはワックスでゆるめる」という考え方が非常に効果的なわけです。
さらにニュートラルのポリッシュを用いたリセット方法なら、仕上げ直し時は靴に残るワックスが下地として再利用できるので、短時間で鏡面仕上げの工程へ移ることが可能となります。
今回の検証では、どちらの方法でも鏡面仕上げされたワックス層をリセットすることができました。
ただし、目的によって最適な方法は異なります。
ビーズワックスポリッシュ ニュートラル
「ワックスをワックスでゆるめる」方法は、
この2つの課題において有効な結果となりました。
サフィールノワール ナチュラルクリーナー
100%植物由来の天然原料からなるナチュラルクリーナーは、
では優れた効果を発揮しましたが、
では乾燥に時間がかかることを理由にあまり適していないことがわかりました。
ナチュラルクリーナーを使うことで、古いワックスだけでなく靴クリームや汚れもまとめて落とし、取り除くことができます。
したがって靴自体をすっぴん状態にして、革本来のコンディションへ整えたいときには大変有効な方法となります。
本記事で紹介した商品はこちらで購入できます。





※写真はイメージです
ルボラボ主任研究員/サフィール オフィシャルアドバイザー
植田 晃史(Dr.だーうえ)
靴と向き合って、早20年以上。
ハンズ名古屋店7Fシューケアコーナーではこれまで培った経験をもとに、革靴・レザー製品・スニーカーのケアに関する悩みに向き合ってきました。
このコラムでは“ルボラボの研究員”として、
現場で得たリアルな知見をもとに、日々の疑問をわかりやすく解きほぐしていきます。




