すでに梅雨明けした地方もありますが、弊社本社のある名古屋は連日のように雨が降り続いています。
こちら「ShoeLife」にお越しの革靴を履いている皆さんは、雨に備えての防水対策はバッチリですよね?
しかし、どんなに対策をがんばっていても濡れてしまった革靴はダメージを受けています。
今回は、雨で濡れた革靴にやるべきことと、万が一トラブルが起きてしまった場合の対処法をお伝えします。
◆内側
革靴の内側まで濡れてしまっている場合は、内側の湿り気を吸収させるために紙をつま先まで詰め込んで革靴の形を整えます。
紙は、ネット通販などで荷物と同梱されているような“ざら紙”がおすすめです。
代用品として新聞紙でもいいですが、革靴にインクが移ってしまう恐れがあるので、新聞紙を使う場合はキッチンペーパーで包んでから詰め込むようにしてください。
◆外側
たとえ土砂降りの日でも濡れ方にはムラがあるので、そのまま放置すると雨ジミになる恐れがあります。
適度に絞った濡れタオルで全体を拭き取り、革靴を均等に濡らすことでムラになるのを防ぐことができます。
◆乾燥時
型崩れを防ぐためシューツリーを装着します。
やわらかい状態の方が形を整えやすいので、半乾きから2割くらい湿り気が残っている段階で装着しましょう。
シューツリーはバネ式タイプだと負荷がかかりすぎてしまうので、カカトまでしっかりサポートすることのできるタイプの物を使用してください。
シューツリーを入れた後、直射日光の当たらない風通しの良いところで2~3日陰干しすると、しっかり形を整えながら最後まで乾かすことができます。
乾かす際は、つま先を上に向けて革靴を壁に立てかけて乾かすと、湿気が抜けやすくなります。
⚠注意点
早く乾かしたいからといって、ドライヤーの熱風を使うのは厳禁です。
革の乾燥が進み、型崩れの原因にもなるので熱は加えず自然乾燥が理想です。
どうしても早急に乾かしたい場合は、ドライヤーの送風を使うようにしましょう。
塩吹き
革は鞣す(なめす)工程でさまざまな成分を含んでおり、靴であれば履いているうちにかいた汗の成分も吸い込んでいます。
◆塩吹きのメカニズム
雨に降られると、革の中に閉じ込められている成分が靴底の方から水の浸みこみによって押し寄せられていきます。
押し寄せられた成分が濃度高く留まり、境目ができ、そのまま乾燥すると成分が結晶化して白く浮いてしまいます。
それがまるで塩を吹いたように見えることから、「塩吹き」と呼ばれています。
この塩吹きを除去する方法は、雨に濡れた時にできてしまう「輪ジミ」などの現象も対処できます。
雨ジミやカビにも効果的なSAPHIR(サフィール)「レノマットリムーバー」で全体を拭きあげます。
SAPHIR(サフィール)レノマットリムーバー
レノマットリムーバーは非常に強力なので、ゴシゴシ力強くこすると銀面が荒れてしまうので注意してください。
これだけでもある程度の塩を除去することができるので、再発しなければOKです。
しばらくして、また塩が浮いてくる場合は濡れタオルを用意します。
塩のある部分だけを濡れタオルで拭き取ると乾いた後シミになってしまうので、全体をまんべんなく拭きあげましょう。
これでもまだ塩が残っていれば、レノマットリムーバーで拭いた後、濡れタオルで拭くという工程を何度か繰り返してください。
雨で濡れると革の表面はふやけ、ボコボコとした水ぶくれが出てきてしまうことがあります。
この現象を革の世界では「銀浮き」という言い方もされます。
水ぶくれ(銀浮き)
◆水ぶくれ(銀浮き)のメカニズム
いくら大雨に見舞われても均一には濡れず、乾燥するスピードにもバラつきが出ます。
バラつきが出た部分に汚れが付着し、革の中に汚れが滞留する部分とそうでない部分ができてしまい凹凸が出ることが水ぶくれのできる大きな要因です。
また、クリームやワックスの塗りすぎでも水ぶくれは起こりやすくなります。
水ぶくれは通常のお手入れだけで直るものではなく、直し方にはテクニックが必要です。
まずは全体のクリームやワックス、汚れをレノマットリムーバーで取り除くことが最優先です。
汚れを落としたら、キッチンペーパーに水を含ませて隙間ができないように全体に貼りつけます。
こちらを1日置くと翌日にはキッチンペーパーが乾いており、そちらを剥がすと水ぶくれが直っています。
ここまでやってもダメなら、SAPHIR(サフィール)「サドルソープ」で丸洗いするという方法がありますが、丸洗いにはデメリットがつきものなので最終手段として捉えてください。
SAPHIR(サフィール)サドルソープ
サドルソープは、馬の鞍を洗う革用のせっけんとして開発されました。
油脂ベースのせっけんでアルカリ性が強いので、汚れ落ちは非常に良いのですが、汚れと一緒に油分が抜けて色が抜けてしまう場合もあります。
ライニングの剥がれや色移りなどのリスクも伴うので、靴の内部は濡らさずなるべく外側だけ洗うようにしましょう。
⚠注意点
丸洗いの後は、そのまま放置すると油分が抜けているので乾燥がひどいです。
いきなり靴クリームを塗布してしまうと、動物性の油分やワックスの影響でシミになる恐れがあるので、ワックスや有機溶剤が含まれないデリケートクリームで下地をしてから通常のお手入れをするとシミになる可能性を最小限に抑えることができます。
革でできたソールもお手入れが重要です。
濡れた革底をしっかり陰干しで乾かしてください。
乾かすと水気と一緒に油分も抜けていくので、革底は硬化して柔軟性が損なわれます。
その状態で着用すると、削れやすくひび割れの原因になってしまうので、保湿・保革が非常に大切です。
SAPHIR(サフィール)ソールガード
SaphirNoir(サフィールノワール)「ソールガード」は、植物性油分のアボカドオイルとセサミシードオイルが主成分で、浸透性が高くサラッとした油分なので、革底の奥の方まで速やかに浸透していきます。
ソールガードを塗布することで油分の力が発揮され、外部からの水が染みこむことを防ぐ効果もあります。
◆ミンクオイルとの比較
代用品として、ミンクオイルを革底に塗布する方法もあります。
しかし、ミンクオイルはヘビーな動物性の油分なので、浸透するまでに時間がかかり、いつまでも表面にベタつきが残ります。
また、塗布後すぐに履くとすべって危ないので、完全に乾燥するまで時間を要してしまうデメリットがあります。
一方、ソールガードは浸透性が高く、表面に残りにくいので半日から1日置けば履くことができます。
また、ワックスが含まれないのですべりにくいことも特徴です。
雨の対策に欠かせない防水スプレーですが、近距離で噴射したり、かける量が多かったり、浸透性のない素材に防水スプレーを使ったりすると、かけた箇所が白くなってしまうことがあります。
でも、心配いりません。
白くなったのは防水スプレーの成分が表面で結晶化しただけなので、同じ成分で溶かせば簡単に除去することができます。
靴に使用した防水スプレーと同じ防水スプレーをキレイなクロスに吹きかけ、やさしく拭き取るだけの安全な落とし方です。
クロスに防水スプレーを噴射する際は、しっかりと防水スプレーの缶を振り、中身の溶剤をクロスに十分に浸透させてください。
※メーカーによっては除去されない場合もあるのでご注意ください。
防水スプレーの話題が出たので、革靴を守るもうひとつのお話を。
防水スプレーを使うタイミングは、お手入れ前に使う派と、お手入れ後に使う派に分かれると思いますが、弊社ではお手入れをした後に防水スプレーを使うことをおすすめしています。
お手入れ前に防水スプレーを使っても、その後に一通りのお手入れをすることで、せっかく吹きつけたフッ素の積み重ねが流れてしまい、防水スプレーの効果が発揮されにくいです。
防水スプレーを使うことにより、その後に塗布するクリームの栄養が入りづらくなるというデメリットも避けられません。
純粋に防水スプレーの効果を発揮させるには、お手入れの後の方が効果的だと考えています。
雨が原因でできてしまった革靴のトラブル対処法をお伝えしました。
濡れてしまった後は適切なお手入れを行うことで、革靴の寿命を延ばし、美しさを保つことができます。
少しの油断が大きなダメージになりかねない革靴は、日頃からのケアを欠かさないことが大切です。
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