先日公開した記事(https://shoeslife.jp/topics/enamel01/)では、エナメル(パテント)革がどのような素材か、をお話しいたしました。
今回はエナメル革という素材の特性に合わせた、最適なエナメルのお手入れの方法についてご紹介いたします。
すでに楠美さんや池袋西武のジュン・ジュン、元新人ayuさんが、エナメルのお手入れについて記事化していますので、そちらもご覧ください。
エナメル革をお手入れする際に使用する主な道具は下記の通りです。
これらの道具をどう使っていくのか、順に見ていきましょう。
馬毛ブラシで全体をブラッシング。ほこりを払います。
靴であれば羽根の付け根や内側、コバとアッパーの間、など細かなところに毛先をあててゴミやほこりをしっかりかき出してください。
バッグや財布などの革小物ならできるだけシワを伸ばして、ふたやマチなどで折れ曲がっていたり畳まれていたりする箇所や持ち手、ストラップ、ベルトなどの付け根部分などほこりの溜まりやすい部分をしっかりブラッシングします。
エナメル(パテント)革の汚れと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはおそらく“皮脂”汚れなのではないでしょうか。
エナメル革を触ると手指の脂が跡になって表面に白く残ったりします。べっとり指紋の跡がつくアレです。
跡がついてすぐならクロスで乾拭きすれば簡単に取れますが、放っておくとなかなか取れなくなりますし、後からどんどんぺたぺた手の跡がついていくので、気がつくといつの間にやらエナメル製品全体が白けた感じになってしまいます。
特にバッグや財布などは手で触ることが多く気づきにくいものですが、よーく見るとわかります。知らず知らずのうちに汚れてしまっていることがほとんどです。
できれば気づいた時に(靴は脱ぎ履きする時に)コットンクロスで乾拭きをして、汚れはすぐに拭き取るというお手入れの習慣をつけておきたいところです。
さて、この「手で触ったときにつく皮脂汚れ」ですが、この後の工程で登場する“サフィール ヴァーニスライフ エナメルローション”でも十分落とせます。
なので、必ずしも汚れ落としを使わなければいけない、ということはありません。
厄介なのが「こすれ跡」。
靴のかかと部分に逆の足のかかとなどがこすれてついてしま跡や黒ずみは、乾拭きはもちろん前述のエナメルローションでも落とせない場合が多いです。
そんな時は、最終手段としてこちらを使用します。
こすれでついてしまう白い筋跡やコバインクなど着色剤・仕上げ剤の跡の除去は、レノマットリムーバーの得意中の得意とするところ。
もしもエナメルローションでは落ちない汚れがあったら、試す価値アリです!。
CAUTION!
ただしレノマットリムーバーの使用には注意が必要です。
実は、外箱パッケージには「エナメルには使用しないでください」と表記がされています。
これは素材表面にキズなどのダメージがあった場合にエナメルのウレタン樹脂コーティングをさらに傷めてしまう恐れがあるからです。
したがって、この方法は修理や靴磨きの現場でも普通に使われている手法ではありますが、あくまで裏技として自己責任でチャレンジしてください。
目立たない場所でのテストは必ず実施してくださいね!
汚れが落ちたら、次は保護とツヤ。
使用するアイテムはここで登場“サフィール ヴァーニスライフ エナメルローション”です。
これ1本でエナメルの汚れ落としからツヤ出しまでがまかなえる優れものですが、特筆すべきは「光沢感」。
エナメル特有の透明度の高い光沢感を復活させ、さらに引き上げてくれるのは配合されたワックスの効果です。
汚れ落とし、光沢を出しておくことで次に使う時に汚れがつきにくくなります。またついても乾拭きでカンタンに落とせるようになります。
早速コットンクロスにローションを適量とり、対象に塗り伸ばしていきます。
しばらくすると塗布面が乾いてどんどん白くなっていくので、一瞬びっくりすると思います。
でも安心してください。
その白くなったのがエナメル表面を覆ってツヤ&保護膜として機能するワックス成分です。
塗布後、しばし時間を置いたら乾拭きで一気に拭き上げます。
するとどうでしょう!
あんなに真っ白に白けてしまった表面がみる間に美しい光沢と変わっていきます。
ツヤが出始めると乾拭きしているクロスがツルツル滑るようになってサラッサラになっていくのがよくわかります。
Before Afterは一目瞭然、Before(右足)の方は白っぽく皮脂汚れがついてくもっていますが、After(左足)は皮脂汚れが拭き取られてくもりが晴れ、美しくつややかに光沢が出ています。
今回の実践ではニュートラル色を使用しましたが、サンプルのような黒色の靴であれば黒色に補色ができる「ブラック」というカラーもあります。
より黒々と仕上げられ、さらに深みが増します。
かばんや革小物は色落ち・色移りの心配があるのでニュートラルを使用するようにしてください。
これでエナメル本来の美しさを取り戻すことができました。
以前の記事でご紹介した通り、エナメルという素材には他にない魅力がある反面、弱点も多く存在します。
メンテナンスを疎かにすると、途端にそのツケは“劣化”や“ダメージ”として返ってきてしまいます。
今回ご紹介したメンテナンスの道具と使い方は、基本的でかつごくカンタンな内容となっています。
裏を返せばエナメルのお手入れ自体、それほどできることは多くありません。
前回・今回の記事で取り上げている下記のポイントを把握して気を払うことが重要となります。
保管場所はに注意
・高温多湿を避ける(加水分解対策)
・色物とは離しておく(色移り予防)
定期的にメンテナンスをして劣化を防ぐ
・汚れは気づいた時に拭き取っておく
・ワックスコーティングで光沢と防汚・防キズ効果をキープ
以上、エナメル(パテント)革の特徴や弱点をしっかり把握して、特性に合わせた対策をすることで長く美しくエナメル革製品を使い続けましょう!
本記事で紹介した商品はこちらで購入できます。
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