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エナメルってどんな革?素材の弱点を克服するための基礎知識

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公開日:2022/10/27    /  最終更新日:2024/01/27

エナメルってどんな革?素材の弱点を克服するための基礎知識

“エナメルはメンテフリー”は、大きな間違いです!

素材特有の美しい光沢が魅力なエナメルの靴の画像です。

素材特有の美しい光沢が魅力なエナメルの靴

“エナメル”は素材特有の独特な光沢・質感が魅力的な素材で、広くファッションに取り入れられています。
季節が秋・冬となると夏場のカジュアルルックからドレッシーな装いへと変わり、そういったフォーマル/きれいめコーデな時に履くエナメルの靴は、日中の穏やかな陽射しや夜の街のイルミネーションを足元に映して、まばゆいほどの輝きで彩ってくれるアイテムです。

 

 

そんなとっても魅力的ですてきな素材であるエナメルで意外と知られていないのが、れっきとした「皮革素材」であるということ。
エナメル素材・生地の中で、“皮革素材”をウレタン樹脂でコーティングしたものを“エナメル革(レザー)”と称します。
天然皮革以外にも、合成皮革や目の詰まった布地(織物)にコーティングしたものも同様にエナメル素材に分類されるので、パッと見で下地の素材が革かどうかを見分けるのは難しいですが、上質なレザーを加工したエナメル革はアッパークラスのブランドでも重宝されており、靴以外にもバッグや財布・小物に多く用いられています。

 

 

余談ですが、エナメル革は他にも“パテント革(レザー)”とも呼ばれているのを、ご存知ですか?
これは水気や汚れに強い革の開発にあたって、エナメル加工による製法で「特許=Patent・パテント」を取得したことからそう呼ばれるようになったそうです。
したがって「パテント革=エナメル革」で、開発当時の技術の粋を結集した特殊素材と思ってもらって差し支えありません。

 

 

ということで、エナメル革は一応雨や水気に強く、汚れにくい(汚れても落としやすい)という特長を持った大変機能的な素材であることがわかりました。
これなら「お手入れもしやすそう」という風に思いますよね。

 

ところがどっこい、話はそう単純ではありません。

 

 

そんな皮革素材の優等生的な存在のエナメル革にも「弱点」があります。

 


  • 高温多湿にめっぽう弱い
  • 無理な屈曲に弱い
  • キズの補修が難しい
  • 色移りしやすい

 

以上に挙げたエナメルの弱点はズバリ、皮革をコーティングしている素材“ウレタン樹脂”の弱点です。

 

エナメル素材で主にコーティングに用いられるウレタン樹脂はポリウレタン(PU)です。
このポリウレタンがエナメルの素材としてのタフさを支えているのですが、同時に劣化や傷みの影響を大きく受ける箇所ともなるわけです。

履きジワにひび割れが入ってしまったエナメルのブーツの画像です。

それでは以下でエナメルの弱点についてもう少し詳しくご説明したいと思います。

弱点1.高温

ウレタン樹脂は熱に弱く、高温が続くと劣化が早まる特性があります。
過剰にやわらかくなってしまったり、ウレタン樹脂とベースの皮革が剥離してしまったり、最悪溶け出してベタつきが発生したり、といった症状が出ます。

 

 

弱点2.多湿

エナメルの素、ウレタン樹脂自体は水を弾く(浸透させない)特性を持つため、雨・水気に強い素材ではありますが、油断は禁物です。
水気に長く触れたままでいたり何なら空気中の湿気であっても、エナメルを構成するウレタン樹脂は加水分解という劣化を引き起こします。
加水分解とは「反応物に水が反応し、分解生成物が得られる反応」で、これをエナメルに置き換えると「ウレタン樹脂(や成形に用いる可塑剤)が水(湿気)と反応して溶けたようなベタつき(分解生成物)が発生する」現象となります。

 

これはエナメルの経年劣化であるため、完全な回避や予防は困難とされています。

 

特に日本の気候は欧米に比べても“高温多湿”なうえ海外生産のエナメル製品は日本のような高温多湿下での製品使用を想定していないため、特にインポートのエナメル製品で弱点1や2を要因とした劣化が発生しやすいと言われています。

弱点3.補修が困難

本革であれば少々のキズでも色を付けたり、紙やすりで削ってキズを目立たなくしたり、といった方法でわりと容易に補修ができたりするのですが、エナメル革はなかなかそうはいきません。

 

ウレタン樹脂のコーティングには浸透性がないため、補色クリームはなじまず浮いたような仕上がりになってしまいます。“塗った感”バリバリです。
また紙やすりを使うとキズの周囲にまで擦り傷が入ってしまいますが、そうなると補色クリームでは自然なカバーができずエナメル特有の透明感が失われてしまうため、違和感が生じてかえって状況を悪化させることになってしまいます。

 

“サフィール ダイフレンチリキッド”のようなアルコール系染料であればウレタン樹脂にも浸透するので染色してしまうこともできますが、それはリカラー(染め替え・カラーチェンジ)なので、復元や修復とは異なり元のイメージとはガラッと変わってしまいます。
それでも元の色と染料の色がバッチリ合えば良いですが、基本キズやシミを隠すためにはより濃色に染める必要があるため、元々のエナメル革の状態を取り戻したりよみがえらせたりするには不向きといえます。

 

またエナメルの靴にありがちなのが、“深く刻まれる履きジワ
牛革などツヤ革の靴であれば、シューツリーで形を整え靴クリームなどで油分を補充し柔軟性を保てれば、消すことはできないまでも履きジワをある程度目立たなく復元することができます。

ところがエナメルは樹脂のコーティングにシワが刻まれてしまうと直したり復元したりはまず困難となります。

弱点4.色移りしやすい

場合によっては致命的なダメージとなるのが“色移り”です。

 

・他の靴と引っ付いたまま保管しておいたら、その靴の色がエナメルについてしまった………

・エナメルの財布を雑誌やチラシの上に置いたらくっついた!無理に剥がしたら跡が残ってしまった………

 

といったトラブルはエナメルによくあるものです。
このような汚れや色移りはいくら強力な皮革用クリーナーで落とそうとしても、取り切れないことがほぼほぼです。
上記のような状態は、汚れ、色移りがエナメルの表面についている(乗っかっている)わけではなく、他の靴の色を付けている染料や印刷物のインクをウレタン樹脂が吸い込んでしまい、“染色”された状態になっている状況です。

なので、素材の中へ染み込んでしまった色や汚れはいくら表面を擦ったとしても落とし切れません。

 

こうなるともう何をやってもこのトラブルを個人で解消することは難しいので、ダイフレンチリキッド(サフィールブランドの皮革用染料)を使って黒色などの濃い色に染めてしまうのがてっとり早い復旧手段となります。

 

エナメル修復の専門業者の中にはこのようなトラブルの対応を得意としているところもあるようなので、もし色移りを染め替えではなく元通りに戻したい場合は潔くプロ・専門業者に診てもらうのがよいでしょう。

一見扱いがかんたんそうにみえるエナメルですが、上記の通り気をつけなければならないことが多く、本記事のように弱点・デメリットを詳しく語ってしまうと「エナメル(パテント)革めんどくさい………」という気持ちになってしまうかもしれません。

 

ですが、わかっている弱点さえしっかり押さえて細心の注意を払うだけで、エナメルをダメージや劣化から保護して美しさをキープしながら長く使い続けることのできる素材であるのも、また事実です。

 

 

ということで、次回は具体的にエナメルお手入れする方法エナメル(パテント)のお手入れと長く使うコツについてご紹介します!


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