「ガラスレザーに関するお問い合わせで最も多いのが「クリームは何を使えばいいですか?」という疑問です。
ガラスレザーといえば、学生さんが履くローファーや、比較的安価な革靴によく使われる素材なので、馴染みの深い人も多いのではないでしょうか。
そんなガラスレザーを意気揚々とお手入れしようとしたら、「いつまで経っても靴クリームが浸透していかない!」なんて経験はありませんか?
それもそのはず。ガラスレザーは皮革の表面を樹脂でコーティングされている特殊皮革なので、靴クリームをどれだけ塗布しても浸透しません。
裏を返せば、樹脂コーティングで皮革がカバーされているため皮革自体が雨水にさらされることはなく、雨による皮革のダメージがほぼないという利点があります。
さらにさらに、樹脂コーティングされた表面はつるつるしているので、汚れてもサッと拭き取りやすく、なかなかにストレスフリーな素材なのです。
それだけ聞くと、「お手入れ不要」と思われるかもしれませんが、やはり革靴とのお付き合いはそんなに甘いものではなく…。
実際は、何もお手入れをしないとスムースレザー同様、乾燥や劣化により、様々なトラブルが起きてしまうので、皮革を守っている樹脂コーティングを保護してあげる必要があります。
そこで浮かぶのが、冒頭の疑問。「クリームは何を使えばいいのか?」
その疑問を解決すべく、今回は徹底的に靴クリームを検証しました!
弊社が誇る代表的な靴クリームを6種類用意。
検証方法は、ガラスレザーとよく似た性質のエナメル生地に各クリームを塗布します。
そちらを5分ほど放置し乾燥させ、靴磨き用のクロスで力を加えず、サッと拭き取った時の反応を見るという極めてシンプルなやり方です。
では早速、靴クリームをご紹介しましょう。
まずは、おなじみサフィールから、幅広い世代から支持される大人気の乳化性靴クリームのビーズワックスファインクリームです。
保革効果に優れたビーズワックスの配合率が高く、革に栄養と光沢を与える優れた逸品は、補色効果が高いことでも好評なので期待ができそうです。
サフィールノワールが誇る靴クリーム界の最高傑作・クレム1925は、誕生から90年以上、世界中で愛され続ける最上の光沢、栄養、補色効果を発揮する靴クリームのレジェンドです。
スムースレザーには抜群の効果を発揮し、常に高い評価を得ているクレム1925ですが、ガラスレザーにはいかがでしょうか?
先ほどのビーズワックスファインクリームより、少々色づきが弱い気がしますが…?
ロンドン発のシューケアブランド・ダスコのプレミアムシュークリームです。
最高品質のビーズワックスが配合された乳化性靴クリームは、大変伸びが良く、スムースレザーに栄養と光沢を与える優秀な製品です。
当サイトでもあまりご紹介されていないレアなブランドですが、実はサフィールと肩を並べるほどの高品質が魅力のブランドなので、ぜひ皆さんに覚えてほしいのですが、エナメルに塗布すると色づきが弱いみたいですね…。
世界で最初の水性レザー染色剤を開発し、靴業界の発展に大きく貢献したスペイン発のシューケアブランド・タラゴのシュークリームです。
色づきの良さが特長のコスパ最強とも呼ばれる高品質な靴クリームは、シャープな輝きを放つカルナバワックスが豊富に配合され、抜群の光沢感を発揮します。
さすがは染料メーカーが開発するクリーム。エナメルに塗布しても発色がかなり良いので、これは期待できそうです。
クイックケアができることが魅力のタラゴのセルフシャインクリームです。
付属のスポンジで塗るだけの手軽さなのに、十分な光沢と栄養を与え、補色もバッチリできちゃう隠れた名プレイヤーです。
本来はスポンジで塗りますが、今回は平等に検証するため指で塗布します。
こちらも色づきが良く、ムラなく綺麗に塗れているので期待です。
最後は、唯一のリキッド(液体)タイプのタラゴのセルフシャインリキッドです。
動物性ワックスが配合されており、液体タイプとは思えない本格的な光沢を与えます。
こちらは指では濡れないので、使い方通りに塗布しますが、やはりクリームより水っぽいのが心配です。
さぁ、すべて塗り終えました。
平等に5分ほど放置して乾燥させたら、ついにキックオフです!
栄光のトロフィーは誰の手に渡るのでしょうか?
おっと…、簡単に取れてしまいましたね。
顔料を多く含み、着色効果に優れているので、エナメルの上でもしっかりと色づきましたが、アーモンドオイルなどの油分がふんだんに含まれているので、ガラスレザーやエナメルには定着しづらいようです。
靴クリーム界の金字塔・クレム1925も取れてしまいました。
油性クリームなので、油分が反発してしまい、ガラスレザーやエナメルに定着しづらいようです。
よく見ると、エナメルが黄色く染まっているのが分かりますか?
こちらは、クレム1925に含まれているビーズワックスが浸透している証拠です。(現行製品は、ホワイトビーズワックスなので黄色くなりません)
これほどまでに動物性の成分が浸透するので、スムースレザーの栄養補給には抜群の効果を発揮します。
やっぱり取れました。
動物性の成分はふんだんに含まれていますが、水分量が多いのでガラスレザーやエナメルに定着しづらいようです。
こちらは色づきが優しいので、柔らかい革の婦人靴などに最適な靴クリームです。
期待していましたが、取れちゃいました!
サフィールのビーズワックスファインクリーム同様、顔料が多く色づきはいいですが、油分や水分量が多いのでガラスレザーには定着しづらいようです。
すごい!全く取れません!
主成分のカルナバワックスは、表面にワックスの被膜を張ることで、補色成分である顔料の定着性を高めます。
顔料の多さでも群を抜いており、ガラスレザーやエナメルに塗布しても定着性が抜群のようです。
良い意味で期待外れ!取れません!
こちらもセルフシャインクリーム同様、カルナバワックスが主成分なので、抜群の定着性です。
実は、水分量が一般的に販売されている物と比較すると少なく、リキッドタイプなのに、顔料や栄養成分が多いことが特長です。
ということで、栄光に輝いたのは、タラゴのセルフシャインクリームとセルフシャインリキッドでした!
これまで、あまり目立たない存在だったこの2つが、まさかの能力を隠し持っていました。
しかも、「ガラスレザーには、どんなクリームを使えばいいか?」という誰しもが抱く疑問を解決してくれるとは。
この最強パフォーマー達、使い方もとっても簡単なんです。
簡単すぎて見過ごし注意ですが、さっそく使ってみましょう!
通常の靴磨き同様、馬毛ブラシでブラッシングします。
表面のホコリをしっかり落としましょう。
汚れ落としには、タラゴのユニバーサルクリーナーがおすすめです。
主成分は界面活性剤で、揮発性の高い溶剤が少量配合されているので、洗剤のように表面がべたつかず、つるつるしたガラスレザーに最適です。
付属のスポンジにクリームを少量つけたら、全体に薄く塗り伸ばしていきましょう。
クリームの量が多いとべたつきの原因になるので、少量ずつ塗るのがポイントです。
全体にまんべんなく塗布したら、あとは乾かすだけ。
通常の靴クリームに必要なブラッシングや乾拭きは不要です。
先端のスポンジアプリケーターに液体を含ませるため、紙の上に押し当てます。
強い力で靴に押し当てると、シワが寄ってしまうかもしれないので横着しないように気を付けてくださいね。
あとは、全体にまんべんなく塗布するだけでこちらも完了です。
セルフシャインクリームも、セルフシャインリキッドも、仕上げに乾いたクロスで乾拭きすると、より一層ムラのない美しい光沢感が生まれます。
さらに仕上がりにこだわりたい方は、是非ひと手間加えてみてください。
ムラなく自然に塗ることができ、ガラスレザーの光沢を引き立ててくれます。
使いやすさや、仕上がり具合でお好きな方をお選びください。
最後に、そもそもガラスレザーとはどんな素材なのか。
改めておさらいしてみましょう。
ガラスレザーとは、皮革を鞣す工程で染色や加脂をされた状態の革を平滑な表面のホーロー板や金属板に貼り付け、革をしっかりと伸ばした状態で乾かした後に、革表面に研磨工程を施し、塗装仕上げをした革のことを指します。
表面を削り、顔料系塗料で塗装を施すため、表面は凹凸のない均一な仕上がりになります。
表面が樹脂コーティングされるため、ワックスや油分を含むクリームを塗り拡げようとすると、先ほどの検証結果のように表面で定着できず、乾拭きすると、塗ったクリームがそのままクロスで拭き取れてしまうわけです。
そんな難度の高いガラスレザーのお眼鏡にかなったセルフシャインクリームとセルフシャインリキッドの定着性と補色力の高さには驚かされました。
しかし、今回はあくまでもガラスレザーに合う靴クリームの検証記事です。
ご紹介した他の4種類も、どれも適正な素材に対し優秀な効果を発揮します。
革の素材や、使いやすさに合わせて、ぜひ適材適所の靴磨きを楽しんでみてくださいね!
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