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【海外情報】徹底解説:なぜレザーのシワは取れないのか

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公開日:2025/02/19 

【海外情報】徹底解説:なぜレザーのシワは取れないのか

レザーの靴や鞄を使っていると、どうしてもできてしまうのがシワ。
味があっていい、という方がおられる一方、できればシワのないおろしたての状態を保ちたい、という方もおられるのではないでしょうか。
今回は、なぜレザーにシワができるのか、そして、一度ついたシワは一時的に消えてもなぜ元に戻ってしまうのかを具体的に解説します。


なお、本記事はShoegazingブログの記事Report – Japan Shoe Shining Championships 2024を意訳したものです。

スムースレザーやエンボスレザーなどを曲げるとシワができます。
これはレザーの性質で、シワを取るテクニックが出回っているものの、このシワを取ることはできません。
今回は、革靴にシワができる理由とそのシワが一時的にしか取れない理由を論理物理学的な観点から解説します。

まず、レザーにシワができる仕組みを理解するために、以前にも当ブログで使ったことがある、レザーの各部位を示すときによく使われる画像を見てみましょう。

断面を見ると、皮はコラーゲン繊維が密集している銀面とコラーゲン繊維がまばらな床面の2つに大きく分かれており、その境目で密集した繊維がまばらになります。 (この画像の出典は不明。現在、さまざまなサイトで形を変えて使われています。)

なめした皮の実際の断面はこうなっています。出典:mrlentz.com(文字はこちらで追加したもの)

スムースレザーの中でも特にきめが細かく最高級のものがフルグレインレザーで、銀面と境目(おそらく多少の床面を含む)で構成されています。
境目(床面の最上部)はクロスハッチパターンで型押しされ、裏側はまるで布地のようです。
表側は銀面をそのまま 使うため、レザーの品質は優れたものであることが求められます。

 

ほかにも、エンボスレザー、トップグレインレザー、“ジェニュインレザー”、ガラスレザーなど、レザーの種類は数多くあり、その多くは皮の一部のみを使用し、なにかしら手を加えています。
そのほとんどは繊維が密集している銀面が表側になっており(ある程度バフィングされる場合もあります)、シワのでき方にも同じ傾向があります(たいていシワができやすいですが)。
今回は、スムースフルグレインレザーと、銀面全体がプレス機で型押しされているだけのエンボスレザーを主に取り上げます。
この2種類の仕上げはもっともナチュラルで、レザーとしての機能は同じですが、シワのでき方やシワの形状はこのカテゴリーの中でもかなりバラつきがあるかもしれません。
なお、スエードやラフアウトレザーについては軽く触れるにとどめます。

レザーにシワができる理由

スムースフルグレインレザーやエンボスレザーは、繊維が密集している銀面が表側になっています。
つまり、風雨に対して天然の保護層があるということです。さらにワックスなどで保護すると、100パーセント天然の耐久性に優れた素材ができあがるので、防水スプレーなどで保護する必要はありません。(こちらの記事に書いたとおり、このようなレザーには防水スプレーの使用を控えるべきです。防水スプレーは、スエード、ラフアウト、ヌバックなど、繊維が密集している銀面のないレザー向けです。)
銀面の小さな傷などは顔料入り靴クリームで修復できます。
メリットずくめですね。

 

しかし、繊維が密集している部分が表側にあるため、この素材を曲げるとこの部分は行き場がありません 。
なるべくわかりやすく説明すると、レザーは3つの固い部分(前方のトゥキャップ、後方のインステップ、下方の足)に包囲されています。
歩くときにかならずそうするように足を曲げると、レザーにはどうしてもシワができます。
繊維が密集している部分が折れると、浅い小さなシワができたり、深い大きなシワができたり、ときにはシェルコードバンのようにうねることもありますが、曲げると行き場がないという素材の問題を解決するのがシワなのです 。(履き心地を損なうくらいきつくない程度に)靴が足にフィットしているほど、折れてしまう部分は減ります 。

フルグレインレザーの靴がヴァンプの上で曲がると、繊維が密集している銀面は行き場がなく、折れてシワができます。出典:instagram.com/wishoeguy/

たとえば、スエードがそれほどシワにならないのは、もっとも繊維が密集している部分が裏側にあるためです。
いわば、繊維がまばらな床面(上の画像参照)が繊維が密集している部分を包みこむ格好です。
起毛した床面を押しつけ合ったり軽く丸めたりすると薄い筋ができることがありますが、シワにはなりません。

レザーにシワができるとどうなるか

フルグレインレザーにシワができる理由がわかったところで、実際のところレザーはどうなるのか探っていきましょう。
レザーが折れ曲がるとシワになってしまうのは、素材の繊維構造が「破壊」され、やわらかく曲がりやすい部分ができ、そこが折れてシワになる ためです。
靴を履いてはじめて歩くときには既に、どんな風にシワができるかほぼ決まっています。(というわけで、ご自分でシワを入れてもいいかもしれません。それについてはこちらの記事に書いています。)
レザーの繊維が破壊されシワがついてしまうと、小さな力で曲げられる ため、同じ部分で繰り返し折れようとします。
もちろん、場合によってあたらしいシワができることもありますし、たいていはある程度のシワができます。
そして、時間の経過とともにすべてのシワがだんだん目立ってきます。
しかし、シワのでき方は、おろしたての靴と20日履いた靴で比較するよりも、20日履いた靴と200日履いた靴で比較した方が似ているようです 。

はじめの数歩でできるシワがその後のシワのでき方を大きく左右するので、鉛筆などを使ってシワをつけてもいいかもしれません。

レザーのシワが取れない理由

インターネットには、レザーのシワを消す方法に関する情報が出回っており、その多くは水や熱を利用するものです。
よくできたビフォーアフター動画には、レザーのシワが元どおりに伸びた様子が映っていて、きれいにシワが取れたように見えるかもしれません。
レザーは使っているとまたシワができるという断りがたいていは入りますが、またやり直せる気がします。
それは間違いです。
たしかに、レザーのシワを伸ばすことはでき、消えたように見えます。
しかし、レザーの繊維は破壊されたままであり、靴を履くとどうなるかというと、前回とまったく同じ部分でまたレザーが折れ曲がってシワになります。
改めて申し上げますが、この部分は小さな力で曲がるからです。

レザーのシワを取る方法ガイドにありがちな画像。出典:thespruce.com

つまり、変化は一時的なものにすぎないのです。
また、熱を加えてシワを取る工程でレザーに大きな負荷がかかり、最悪の場合、レザーを傷めてしまうことを知っておく必要があります。
それでも、事情があってこの方法を試してみたいということなら構いませんが、結局は何も変わらないことをご承知おきください。
(レザーを縮める際にも同様の作業を行いますが、効果は一時的もので元に戻ります。)
フルグレインレザーにはかならずシワができ、消すことができるのはわずかの間だけです。

一度刻まれたシワは、レザーの一部です。

以上のことから、あらためて強調したいのは、ソールを伸ばして靴の形を戻すために木製シューツリーの使用が強く推奨されるということです。
これでシワが深くなるのを防ぎ、あわせてシューケア製品で定期的に栄養補給を行うことで、何年たっても靴の見映えが保たれます。
そして、シワが深くなってレザーにヒビが入るまでの時間を、うまくいけばずっと、ずっと先まで伸ばせます。


いかがでしたか。
レザーの構造を知ることでシワができる理由を理解し、「ついてしまったシワはレザーの一部」として受け入れることができたのではないでしょうか。
また、鉛筆を使ってあらかじめシワをつけてしまうというテクニックも活用できますね。
シワが消えないのはレザーが繊細な天然素材である証。
お手持ちの靴や小物をしっかりケアして、シワごと末永く愛用してくださいね!


 

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Le Beau
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