革製品の素材は、天然の皮革と合成皮革があり、革製品であれば必ずどちらかが使われています。
天然皮革には、牛や馬などのいろんな種類があり、合成皮革にもヴィーガンレザーやビニルレザーなどといった種類があるのを見たことがあります。そしてこのヴィーガンレザーは、特に最近耳にすることが増えてきたように感じます。
このヴィーガンレザーとはいったいどんな革なのか気になっていたところ、海外サイト公開されている記事に詳しく書かれていのを見つけました。
今回は、このヴィーガンレザーについて書かれた海外記事を、日本語に意訳してご紹介します。
本記事は、Shoegazing.comで公開されているIn-depth - What is vegan leather?を日本語に意訳して紹介しています。
いわゆるヴィーガンレザーは、一般的な動物の皮の安価な代替品として急速に支持を拡大しています。しかし、ヴィーガンレザーのほとんどは通気性の悪いプラスチック製の合成素材で、生分解性がまったくなく、従来の動物の皮よりもはるかに環境に有害になりかねないということを忘れてはなりません。この記事では、ヴィーガンレザーとほかの人工皮革のすべてを学び、天然の動物の皮革と比較します。
ヴィーガンレザー、レザーレット、フォーレザー、イミテーションレザー、ピーレザー、PUレザー、ビニールレザー―みんな同じ、人工的に作られた皮革です。さまざまなタイプがありますが、ほとんどがプラスチック製です。世界中で多くの人々がよりサステナブルなライフスタイルを模索しています。言わずもがな、それはとてもいいことです。その流れで求められているヴィーガン製品は、環境にいい影響を及ぼすこともありますが、悪い影響を及ぼすこともあります。後者の分かりやすい例がヴィーガンレザーです。10~20年前、同じタイプのレザーが合成皮革として売られており、主に安価な靴や製品に使われていました。靴を蒸れさせ履き心地を悪くする通気性のなさが決定打となり、多くの人々がそのレザーを避けました。アディダスやナイキのようなスポーツブランドに代表される、名前で売れる強いブランドだけが高価な靴にそのレザーを使用しました。また、子どもは靴が蒸れてもさほど文句を言わず、親が履かせるものを履くだけなので、子ども用の靴にもよく使われました。ブランドが合成皮革を好んで使用した理由はただひとつ―価格です。合成皮革は、本物の皮革、特に品質のいい本物の動物の皮革に比べはるかに安いのです。そんなわけで、合成皮革は安価な代替品として認知されました。
この10年、とくにここ数年で、気候変動や環境への影響に対する意識が高まっています。いよいよ世界中で多くの人々が地球温暖化を現実問題として考えるようになりました。そして、肉食を控えることは、環境への影響を減らすひとつの方法です。このような背景から、ヴィーガンに分類される製品はサステナビリティと結びつき、メーカーは商機を逃しませんでした。ヴィーガンレザーの需要増大により皮革業界は打撃を受け(参照記事)、その傾向は今後も続く見込みです。現在、動物の革を使った製品よりもサステナブルなヴィーガン製品はたくさんありますが、前述のとおり、そうでないものもたくさんあります。しかし、マーケティングによって多くの人々がヴィーガン製品はサステナブルだと信じ込まされているのです。
人工皮革は新しいものではありません。初期のものに、20世紀初頭にドイツで開発された“プレストフ”があります。特殊なレイヤー構造の圧縮パルプで作られた、実際にとてもサステナブルな製品でした。伸縮や水分でその構造が破壊されてしまうため靴には使用できませんでしたが、ほかの製品に広く使われていました。このほかにも、引火性の高い主成分を持つニトロセルロースで覆われた布で作られた“レキシン”という人工皮革があります。このような初期の人工皮革はほどなくして安価で生産が容易なプラスチック製の人工皮革に取って代わられました。20世紀、プラスチックは世界を席巻し、あらゆるジャンルで使われるようになりました。
そして現在までに、さまざまなタイプのプラスチックでコーティングされたさまざまな人工皮革が開発されてきました。ここではすべて紹介しきれませんが、一般的なのはポリエステルの基布にポリウレタンを塗布したPUレザーと、化学繊維や天然繊維の基布にポリビニールクロライドを塗布したPVCレザーです。このようなレザーには難点が多く、ヴィーガンで動物由来でないものの、多くの面で環境にさらに悪い影響を及ぼします。合成ヴィーガンレザーに現在使用されているプラスチックの多くが、大半のプラスチックと同様、多くの面で環境に甚大な悪影響を及ぼす石油や原油にその分子を由来しています。そして、再生可能プラスチックでさえも、分解されて自然に還るのに何百年もかかります。そのうえ、柔軟性が求められる合成皮革の多くにフタル酸エステルなどの可塑剤とそのほかの有害物質が使用されており、人類にも自然にも害を及ぼしかねません。一例として、グリーンピースはPVCを最も環境破壊につながるプラスチックとみなしています。
自社製品をヴィーガンレザーとして販売する業者の多くは、それらが天然の皮革以上に環境に悪影響を及ぼすという事実を隠しています。環境を守るためにヴィーガンレザーを求める人々が多い以上、これはゆゆしき問題です。ヴィーガンレザーを検討しているなら、いい製品を購入するよう心がけましょう。人工皮革には、パイナップル、キノコ、バナナなどから作られた材料を使用したものなどいい製品があり、中には本当にいい製品もあります。これらは現在使用されている人工皮革のごく一部に過ぎず、残念ながら依然としてさまざまなプラスチックや石油系樹脂を使っているものもありますが、開発が進められてプラスチックレザーに取って代わることが期待されています。以前こちらの記事で紹介したように、研究室で培養するバイオファブリケーテッドレザーも開発されています。天然皮革のすぐれた特性をすべて備えているうえに、環境にとてもやさしく動物が犠牲になることもありません。
本物の革が選択肢として非常に魅力的な理由はその特性にあり、それゆえに人工皮革は人気の点で天然皮革に敵わないのです(前述のとおり、本物の革は合成皮革より高価で、どんな業界にとっても低価格は大きな推進力であるという事実にもかかわらず)。本物の革は美しく、通気性があり、柔軟性があり、耐久性があり、素晴らしいパティーヌができ、ひどい状態から新品同様に再生できます(少なくともそういうことになっています)。人工皮革はこれらの特性をある程度取り入れていますが、すべてではなく、同じレベルでもありません。
では、本物の革はヴィーガンレザーと比べてあらゆる点で完璧なのでしょうか。そんなことはありません。本物の革も問題を内包しています。おそらく多くの人が知っているとおり、革は食品産業の副産物にすぎません。しかし、ヴィーガンレザーの話題によって、家畜産業が内包する不適正な耕作と環境への悪影響は既知の事実となりました。これはまだ問題の一部です。ほかにも、シューゲイジングでたびたび取り上げていますが、アジアと南米を中心とする地域で行われている環境的に非常に危険なクロムなめし革の開発が問題視されています(しかし、この記事にあるように、これもいい方向に変わりつつあります)。クロムなめし革は、厳密には(靴を野ざらしにしておけば自然に還るかという意味では)生分解されません。クロムは特に燃焼すると毒性になり、なめしに使用される有害性の低い3価クロムが有害性の高い6価クロムに変化しますが、タンニンなめし革はほぼ完全に生分解されます。
しかし、このような問題のほとんどは回避できるということに注目すべきです。高品質で高価な靴を買うときなどは、私たちはある意味、問題を極力回避するために(さらに、耐久性があること、修繕できること、労働環境のいい工場で作られていることなど、多くのサステナブルな側面に)お金を払っているのです。高品質な靴は基本的にすべてヨーロッパ産ハイドのレザーで作られています。彼の地では畜産の状況が比較的良好で(とはいえ改善の余地はあり、この記事で紹介したように、EU規制がそのきっかけとなることが期待されています)、最高品質のハイドは一般に比較的恵まれた生育環境で育った動物から取れます。なめしに関するヨーロッパの規制はとても厳しく、たとえば、クロムなめし工場はすべて、有害物質を一切外に出さない完全なクローズドシステムを採用しています。つまり、靴を廃棄するときに注意さえすれば、クロムが自然を汚染することはありません(このほかにも改善の余地があるのが、廃棄物管理と革製品のリサイクルです。各地で徐々に取り組みが進められていますが、できることはまだまだあります)。
今、私たちは、意識の高い消費者になることを求められています。そして、ヴィーガンレザーや類似品を買うときには、おそらくさらに高い意識をもつことを求められるのです。
おすすめの関連記事