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【海外情報】ロンドンスーパートランクショー2025 ロングレポート

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公開日:2025/06/26 

【海外情報】ロンドンスーパートランクショー2025 ロングレポート

2025年5月10日、第7回ロンドンスーパートランクショーが開催され、イベントの目玉である靴磨き世界大会で新井田隆さんが金メダル、吉冨純弘さんが銀メダルを獲得しました。
さらに、靴作り世界大会では片岡謙さんが銀メダル、菱沼乾さんが銅メダルを獲得し、日本勢が大活躍を見せました。
前回記事“【海外情報】サフィールがロンドンスーパートランクショー2025で異彩を放つ”につづいて、
今回は、イベントを主催したShoegazingによる当日のロングレポートをお届けします。


なお、本記事はShoegazingブログの記事Report - London Super Trunk Show 2025を意訳したものです。

ロンドンスーパートランクショーは、高級紳士靴業界の重要な出会いの場としての役割を今回も果たしました。
にぎわう出展フロアから3つの世界大会決勝にいたるまで、世界中から集ったメーカー、小売店、そして靴愛好家の間で会話が飛び交い、会場は終日活気にあふれていました。

 

会場は例年どおり、ロンドン中心部の高級商業地リージェントストリート12番地にある路面店、Showcase.co(ショーケース)です。
今年も盛況で、約1,300人の来場者がありました。
混雑する時間帯と来場者が少ない時間帯の差がはっきりしていた数年前とは少し様子が変わり、友人と近況を語り合って長居する人が増えているようだ、との声が常連の多くから聞かれました。
共同主催者である私ことイェスペル・インゲヴァルソン(シューゲイジング)、ジャスティン・フィッツパトリック(ザ・シュー・スノッブ)、カービー・アリソン(自身の名を冠したYouTubeチャンネルオンラインストアでおなじみ)にとっては、誠に喜ばしい変化です。

今年のイベントも大盛況でした。撮影:ジャスティン・フィッツパトリック、イェスペル・インゲヴァルソン、リー・ベトリー、サフィール

トゥインキーマ・Gのスタッフと話をする来場者

靴作り世界大会応募作品をチェックするクリストファー・モドゥーさん

特にここロンドンでスーパートランクショーの目玉となるのは、高級靴業界を支える技術に注目する三大大会です。
最初に始まるのは、シューパティーヌ世界大会決勝です。

決勝に進んだロドルフ・ボードリーさん(フランス)、アルベルト・ジュカジさん(スイス)、2022年大会王者のトアン・ジュニーさん(フランス)の3人が、サフィール製品を使い5時間かけてブリドレンのクラストレザーシューズを変身させます。
いずれもすばらしい出来栄えで今年も審査が難航しましたが、審査の結果、ロッド・ボードリーさんが優勝、トアン・ジュニーさんが2位、アルベルト・ジュカジさんが3位となりました。

シューパティーヌ世界大会決勝の序盤、ペールグレーのクラストレザーシューズが変身し始めたところ。

作業中のアルベルト・ジュカジさん

シューパティーヌ界のスター、トアン・ジュニーさん

審査中のアファン・モハメドさん(ブリドレン)

2025年シューパティーヌ世界大会王者のロドルフ・ボードリーさん

イベントの終盤では、靴磨き世界大会決勝が行われました。
課題は、ブリドレンのオックスフォードシューズをサフィールノワールのワックスを使い20分以内に磨き上げることです。
決勝進出者は、イギリスのマシューさん(軍関係者のため本名非公開)、日本の吉冨純弘(よしどみ・あつひろ)さんと新井田隆(にいた・りゅう)さんです。
長い審議の結果、これといった欠点がなく、均一に高い光沢を出した新井田さんが金メダルを獲得しました。
銀メダルは吉冨さん、銅メダルはマシューさんでした。
いずれの大会も、スポンサーのサフィール(使用製品に加え賞金と名前入り限定ポリッシュ缶を提供)とブリドレン(使用シューズを提供)の協力なしには実現しませんでした。

靴磨き世界大会決勝の最中

ワックスと水で懸命に磨きます。

興味津々の観客

靴磨き世界大会決勝の審査中のトム・ビークロフトさん(靴と衣料のケアサービスを提供するザ・ヴァレー:the-valet.com)とカティア・ムーラさん(サフィール)

銅メダルのマシューさん(左)、世界王者の新井田隆さん(中央)、銀メダルの吉冨純弘さん(右)

手前が新井田隆さんによる優勝作品。奥は磨いていない方。

会場エントランスには、本年度の靴作り世界大会の応募作品が展示されました。
応募規定を要約すると、底付けは手縫いのハンドソーンウェルト製法で、ダークブラウンのスムースレザーを使ったダブル・モンク・ストラップです。
シューメーカーと専門家による審査員が、作者の名前を伏せた25作品を前日に審査、イベント最後のステージセッションで上位10作品が発表されました。
3位は昨年度世界王者の菱沼乾(ひしぬま・けん)さん(日本)、2位は片岡謙(かたおか・けん)さん(日本)、優勝はルイス・ランパーツドーファーさん(ドイツ)でした。

 

その場にいたランパーツドーファーさんは、制作に200時間を費やしたという見事な靴とともに拍手喝采されました。
上位3人には、カービー・アリソン、書籍プロジェクトのマスター・シューメーカーズ、パーカー・スケネッカーの出資による総額6,000ポンドの賞金が分配され、副賞としてフィル・ノースワーシーによるハンドメイドのオウルハンドル、そしてメダルが贈呈されます。
上位3足は、シューパティーヌ世界大会優勝作品とともに、今秋世界を巡回する予定です。
来年の靴作り世界大会の課題がブラックのチェルシーブーツであることは現時点で告知済みですが、注目は、難易度(各審査員最高10点)、出来栄え(各審査員最高10点)、デザイン/芸術性(各審査員最高5点)に加え新たに採点基準となる、独創性(各審査員最高5点)です。詳細は近日中に大会の募集要綱で告知しますが、応募を考えているみなさんは今からアイデアを練っておいてくださいね。

靴作り世界大会の全応募作品が展示されました。

応募作品の中で異彩を放っていたのが、ザ・ラスト・シューメーカーによるダブル・モンク・ストラップ「トーステッド・マシュマロ」。5位を獲得しました。

ルイス・ランパーツドーファーさん、優勝おめでとうございます。

ついに世界王者の栄冠を手にしました。

今年の新企画はステージ実演で、靴磨き世界大会初代王者の長谷川裕也さん(靴磨き店チェーンBrift H代表)が鏡面磨き特別講座を開き、参加者にコツやテクニックを伝授しました。
講座終了後、靴のお手入れ方法や美しい光沢を出す方法について長谷川さんに直接質問できる時間が設けられました。
今回の好評を受け、今後もこのようなステージを、初期の(特にストックホルム開催の)スーパートランクショーにより近い形で増やしていく予定です。

鏡面磨き特別講座で実演中の長谷川裕也さん

あっという間に鏡面の完成です。

講座終了後、長谷川さんは参加者と歓談。質問や写真撮影に応じました。

もうひとつの新企画は、スポンサー数社が靴や衣料品など豪華な賞品を提供したスーパートランク宝くじです。
イベント前はオンラインで、当日は会場で参加できるので、来場すると当選確率が上がります。
閉会式でラッキーな当選者が発表され、会場にいなかった当選者には各ブランドが連絡のうえ賞品を発送しました。

 

出展常連の人気ブランドから初出展となるブランドまで、今年も充実の出展者ラインナップでした。
メインとなるプラチナスポンサー2社は、大型展示を行いました。
高級シューケアブランドの世界的大手サフィールは、幅広い商品の展示販売を行い、さらに、ボウベルズ・シューシャインのマルクさんによる靴磨きサービスを来場者に提供しました。
評判の高いインドのシューブランド、ブリドレンは毎年ニュースを提供してくれますが、今年は彼らの最上級ライン、ファウンダーズの最新モデルをロンドンで初披露しました。
5万円台という価格にして非常にハイレベルなクラフトマンシップが光る絶品です。
厚いレザーのチャネル付きインソールにウェルトを直接縫い付ける昔ながらのグッドイヤーウェルト製法をベースに、常に良質な靴を製造しています。

サフィールのメイン展示

新発売の高級スニーカーケアシリーズ

豊富に取りそろえたブラシ

ブリドレンの最上級ライン、ファウンダーズのアデレード

すばらしい展示

すばらしいカジュアルスエードブーツ

ゴールドスポンサーに、初出展のTwinkima.G(トゥインキーマ・G)を中国から迎えました。2019年に創業、洗練されたハンドソーンウェルト製法のドレスシューズをメインにカジュアルなエスパドリーユなども自社工場で製造しており、今回の出展が海外進出の足掛かりとなりました。
もう1社は、ハンドソーンウェルト製法、グッドイヤーウェルト製法、ブレイク製法の靴を自社工場で製造、すぐれたコストパフォーマンスで提供している、ベトナムのCNESです。
近年スタイルを拡大しており、今や非常に洗練されたドレスシューズからチャンキーブーツまで取りそろえています。

トゥインキーマ・Gの定番スタイル。ミュージアムカーフ、ホールカット、洗練されたシャープなトゥのラスト。

すてきなローファー

CNESのサドルオックスフォード

ステッチのコントラストが美しい、ノルウィージャン製法の靴

談話するカービー・アリソン

シルバースポンサーの展示もすばらしいものでした。
日本のアーチケリーは、ハンドソーンウェルト製法によるヴィンテージスタイルのシューズブランドで、国外市場でも注目が高まっています。
アメリカのヴォーゲルは、ペニーローファーのデザインに厚いソールとおもしろいアレンジをプラスした新シリーズ「ICONS」を披露しました。
インドにある自社工場ですべて手作業によりシャツを作っているオランダのハンドレッドハンズは、高級メンズシャツ愛好家必見のブランドになっています。
こちらもオランダのレナートソンは、カジュアルで頑丈な印象のグッドイヤーウェルト製法のブーツやシューズを、スペインとポルトガルで100以上の細かい工程を経て製造しているブランドです。
上質で高級なソックスにかけては、イタリアのブレッシアーニの右に出るものはありません。
ありとあらゆる色と素材のソックスを取りそろえた菓子店のような展示は、見る者の目を奪いました。

アーチケリーによるヴィンテージスタイルのシューズ

ヴォーゲルのローファー

ハンドレッドハンズのハンドメイドオーバーシャツの品ぞろえ

レナートソンによる上品なカジュアル

ブレッシアーニの高級ソックス

チャールズ・ペイジ・アトリエは、今のご時世に即した形でクラシックとコンテンポラリーを融合させるアメリカのテーラーです。
試着した人はまず例外なくその商品を気に入り、常連になります。
イギリスのパートナー店アータートンと出展したヤーンは、中国の成都にある自社工場でクラシックスタイルの靴をすべて手作業で丁寧に製造している評判の高い出展者です。
2度目の出展となるBLKBRD(ブラックバード)は、ハンドソーンウェルト製法の靴を超低価格で販売していますが、品質は確かです。
そして、顧客を魅了してやまないアメリカはシカゴの有名帽子店オプティモは今回、ビスポークハット用の新しいデジタルスキャンツールの試運転を行いました。

チャールズ・ペイジ・アトリエの服

ヤーンの靴のラインナップ

シェルコードバンを使ったBLKBRDのシューズ

世界的ハットメーカーのオプティモがロンドンに

靴と世界大会が目玉ではありますが、世界の人々が集う場としての役割があるからこそ、スーパートランクショーは進化を続けているのです。
ブランドが新たな小売店と出会ったり来場者から注文を受けたりする実質的なビジネスチャンスとともに、みんなで共有するコミュニティとしての強い意識がここにはある―――そのような声が多く聞こえるようになり、特定分野のクラフトが持つ国境を越えて人々をひとつにする力を改めて感じています。

 

次回のスーパートランクショーは、ふたたびニューヨークで2025年10月4日(土)に開催します。
そして、シンガポール初のスーパートランクショーを2026年1月31日(土)に開催予定です。
詳細は追ってお知らせします。
ロンドンには2026年5月に帰ってきます。
今年のスーパートランクショーをこんなにも記憶に残るものにしてくださった、すべての来場者、大会出場者、出展者、スポンサー、そしてサポーターのみなさんに感謝いたします。

 

本記事の最後に3つの世界大会決勝の模様を収めた動画があります。
ほかの動画もカービー・アリソンのYouTubeチャンネルで近日公開予定です。

今年も多くの方々にご来場いただき、好意的なコメントをたくさん頂戴し大変うれしく思っております。 よりよいイベントになるよう今後も尽力してまいります。

金銀銅メダル

金メダルに輝いた靴を染色中のロッド・ボードリーさん

繊細な作業

長谷川裕也さんとシューパティーヌ世界大会審査員のビスマルク・ブラック・ワルテルさん(サルトル・ポリッシング)

ヴォーゲルのクレイグ・シュローダーさん

トゥインキーマ・Gのとてもクールなチェルシーブーツ

数々のすてきな靴が来場者の足元を飾りました。

オプティモのグラハム・トンプソンさんが…

…伝説の葉巻店ダビドフ・ロンドンのエディ・サハキアンさんに帽子の採寸を体験してもらっています。新採用のデジタルスキャンを使って行われたこの試験は成功を収めました。

サフィールの缶入りワックスポリッシュ

ヤーンのオックスフォード

ハンドレッドハンズのシャツ

スーパートランクショーは仲間の集いの場となっています。

フランスの靴愛好家ラファエル・ロディッティさんとフロラン・ペシソリドさん

BLKBRDのオックスフォード

ワックスドスエードを使ったブリドレンのチェルシーブーツ

靴磨き世界大会王者の新井田隆さん。審査員の長谷川裕也さんが代表を務めるBrift Hに勤務しているため、順位を決定する最終投票を長谷川さん抜きで行い客観性を担保したことを念のため申し添えます

靴磨き世界大会決勝で磨かれた靴。(左から)新井田隆さん、マシューさん、吉冨純弘さんの作品。

靴作り世界大会第2位に輝いた片岡謙さんの作品(中央)

第3位に輝いた菱沼乾さんの作品

靴作り世界大会王者のルイス・ランパーツドーファーさんと大会スポンサーのゲイリー・トックさん(マスター・シューメーカーズ)

アーチケリーによるタンカラーのオックスフォード

レナートソンのダービーシューズ

オプティモの折りたためる帽子

来場者にくわしい製品説明をするチャールズ・ペイジ・アトリエのルイス・マリバネックさん

チャールズ・ペイジ・アトリエの製品の一部

ヴォーゲルの靴のレザーソール

ブレッシアーニのソックス

CNESのオックスフォード

シューパティーヌ世界大会決勝では、大勢の人たちがパティーヌアーティストの作業を見守りました。

イベントのライブ映像

▼長谷川裕也さん(Brift H)による鏡面磨き特別講座

▼靴磨き世界大会決勝

▼シューパティーヌ世界大会および靴作り世界大会表彰式


いかがでしたか。

主催者のイベントに対する愛と情熱にあふれるレポートでした。
ここに来れば親しい友人や新しい仲間と出会える。
靴とクラフトマンシップを愛する世界中の人たちが集う素晴らしい祭典ですね。
豪華賞品が当たる宝くじ、そしてBrift H代表の長谷川裕也さんによる特別講座といった新企画も登場し、進化を続けるスーパートランクショー。
次回、ニューヨークではどんな趣向を凝らしてくれるのでしょうか。
発表を楽しみに待ちましょう!


 

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Le Beau
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