今年で5回目を数える靴作り世界大会。
靴の専門家による厳正な審査を経て決勝に進んだ靴30足の展示と上位3足の表彰式が、5月4日にロンドンで開催されるスーパートランクショー内で行われます。
決勝に進むためには、審査員をうならせる斬新な発想と厳しい審査基準をクリアする確かな技術が求められます。
今回は、大会主催者からのメッセージと公式開催要項をご紹介します。
応募期間は既に終了していますが、要項を知っておくことで、この大会をより楽しむことができるはずです。
なお、本記事はShoegazingブログの記事World Championships of Shoemaking 2024 – Call for competitionを意訳したものです。
このたび、第5回靴作り世界大会を開催します。
決勝は2024年5月4日のロンドンスーパートランクショー内で行います。
賞金総額6,000ポンド(7,000ユーロ/7,400ドル)、副賞としてハンドメイドのオウルハンドル(すくい縫い用工具)と世界各地の靴店に展示される権利が贈られます。
今年の課題はローファーです。
今回は大会の開催要項をお伝えします。
靴作り世界大会は、シューゲイジング、ザ・シュー・スノッブ(ブログ)、資金面でも大会をサポートしているカービー・アリソンが主催し、マスター・シューメーカーズ(出版プロジェクト)とパーカー・シェネッカー(今大会の共同創設者で2021年に亡くなった靴愛好家、エドモンド・シェネッカーの兄)が協賛しています。
今大会は第1回から大盛況で、フリーのシューメーカーとその靴作りの技術に注目が集まる貴重な機会となっています。
第1回の優勝者はパトリック・フライ(ドイツ)、2位はダニエル・ヴィガン(スウェーデン)、3位はフィリップ・アティエンザ(フランス)でした。
2019年はイギリスに拠点を置くダニエル・ヴィガン(スウェーデン)が優勝の栄冠に輝き、2位はクリストフ・コルテ(フランス)、3位は村田英治(日本)でした。
2022年は日本人の年で、優勝は島本亘、2位は片岡謙、3位は川島謙二郎でした。
2023年はベルルッティのアタナーズ・セフォクル(フランス)が優勝、ヴィクトル・ヴルペ(ルーマニア)が2位、ルイ・ランプフェルツドルファー(ドイツ)が3位でした。
トップ3の作品のクオリティは驚くべきもので、靴業界でそうそうお目にかかれないレベルです。
上位3作品は毎年世界ツアーに出ます。
2023年は、パリ、ブカレスト、ストックホルム、ダラス、ニューヨーク、東京、チェンナイ、バンコク、北京、上海、メルボルン、シンガポールを歴訪しました。
東京では、世界最大級のデパート、伊勢丹新宿店のメンズ館に展示され、筆者、ヴィクトル・ヴルペ、ロイス・ランパーツドーファーが出演するイベントが開催されました。
また、靴磨き選手権日本大会決勝が行われた大型デパート銀座三越でも展示されました。
世界中の靴愛好家が靴作りの技術に感嘆し、靴にあまり詳しくない方々が靴作りの魅力を知る場を提供できたことは、主催者として冥利に尽きます。
日経国際版のような世界的な大手メディアや多くの国内メディアで取り上げられたことにも感謝しています。
業界でこの大会が認知され、開始当初からシューメーカーや靴に関わる人々からの反応が非常に好意的であったことも喜ばしい限りです。
特に申し上げたいのは、今大会を主催する私たちはまったく利益を得ていないということです。
パートナーからの支援は全額そのまま賞金とシューメーカーのために使われます。
100年ほど前は、権威ある靴作り大会が世界中で多数開催されていました。
このような大会はシューメーカーの技術を向上させ、実用的なものという靴の概念を覆す芸術的な作品が生み出されました。
靴作り世界大会を通して、その当時の息吹を取り戻したいと私たちは考えています。
また、たくさんのオーディエンスに靴を見てもらうことで、業界、ブランド、シューメーカーにメリットが生まれるよう最善を尽くしたいと考えています。
実際、この大会で上位に入賞したシューメーカーは認知度や新規顧客の獲得という大きなメリットを得ています。
中には、この大会があったから靴作りを続けてこられたというシューメーカーもいます。
画像:メダリオン・シューズ
画像:ユニペア
大会は今年で5回目を数えます。
これからご覧いただく大会公式募集要項には、世界大会の開催要項や、ビスポークシューブランドと靴作りに携わる人たちへ向けて応募方法について、詳細が記されています。
要約すると、出品者はレザーソールのフルストラップローファー(ライトブラウン)をハンドソーンウェルテッド製法(底付けを手縫い)で作ります。
審査基準は難易度、出来栄え、そして全体的なデザインと美しさです。
第1回のブラックのプレーンキャップトゥオックスフォードに始まり、創造の幅がさらに広がるようなモデルを選んできました。
今回は、おそらくこれまででもっともカジュアルなスタイルのローファーで、エプロンヴァンプを用いるなど、デザインの点で少々原点に立ち返りたいと考えました。
よりフラットなコバなど、シューメーカーが斬新な方法で腕を見せてくれることを期待しています。
画像(トップ画像も):ノルマン・ヴィラルタ
画像:フォスター&サン
賞金は1位3,000ポンド、2位2,000ポンド、3位1,000ポンドで、副賞はフィル・ノースワーシーのハンドメイドオウルハンドルとメダルです。
さらに、上位3位の靴は、これまでのツアーとおなじく今年も世界各地のさまざまな場所で展示されます。
大会閉幕後(上位3位の靴はツアー後)、すべての靴はシューメーカーに返却されますので、展示用にお使いください。
シューゲイジング、ザ・シュー・スノッブおよびソーシャルメディアチャンネルで世界大会の全応募作品を紹介します。
そして、パートナーのカービー・アリソンはYouTubeチャンネルで大会の動画を配信予定です。
大手メーカーや老舗だけでなく、知名度の低いフリーランスのシューメーカーからも毎年応募があります。
今年もさまざまなブランドやシューメーカーからの応募をお待ちしています。
2024年1月31日必着でshoegazingblog@gmail.comまでeメールでご応募ください。(注:ロンドンでの決勝で靴を30足以内に絞るため、予選を含め、大会要項を更新しました。詳細は以下をご覧ください)
以下の大会募集要項をよくお読みいただいたうえで、大会に関するご質問があればこちらのアドレスまでeメールでお寄せください。
画像:ベルルッティ
このような大会の開催方法や審査方法については議論の余地があることは承知していますが、今年も以下の要綱のとおりに大会を開催し審査を行うことをご理解ください。(たとえば、履きやすいかどうかの線引きは実質的に不可能なので、履きやすさは審査の基準になりません。また、フィット感の審査は実質的に不可能なので、靴の技術に注目します。決勝ラウンドへ進むのはそれほど楽しいことではありません)
靴を審査するのは、ビスポークシューメーカーと業界のプロフェッショナルです。
予選審査員を務めるのは、シューメーカーのフィリップ・アティエンザ(元ジョンロブパリ、マサロ)、ドミニク・ケイシー(元ジョージ・クレバリー)、奥山大(香港からイギリスへ拠点を移した日本のビスポークシューメーカー)、セバスチャン・タレク(ロンドンはウエストエンドの数多くの企業から外注を請け負ってきたフリーランスのシューメーカー)、ニコラス・テンプルマン(元ジョンロブロンドン、現在は自身のブランドを経営)、ジョンロブパリのパトリック・ヴェルディロン(ジョンロブパリのビスポークアトリエ責任者)、サスキア・ウィットマー(イタリアはフィレンツェを拠点とするビスポークシューメーカー)です。
また、シューメーカー以外の目線を取り入れるために、靴に精通するイェスペル・インゲヴァルドソン(シューゲイジング)とジャスティン・フィッツパトリック(ザ・シュー・スノッブ)、そして、(パーカー・スケネッカーとともに)今大会の開催を可能にしているスポンサーのカービー・アリソン(KirbyAllison.com)とゲイリー・トック(『マスター・シューメーカーズ』著者)を審査員に迎えました。
靴作り世界大会決勝は、2024年5月4日(土)、ピカデリーサーカスと交差するリージェントストリートのショーケースで開催されるロンドンスーパートランクショー内で行われます。
イベント詳細はいましばらくお待ちください。
例年どおり、スーパートランクショーには世界中から 15社が出展予定で、ショーの目玉となる靴磨き世界大会とパティーヌ世界大会の決勝も開催されます。
さあ、いますぐカレンダーの5月4日に印をつけて、ロンドン行きや生配信視聴の計画を立てましょう。
今年もみんなで大会を盛り上げていきましょう!
靴の基準:
– フルストラップローファー、エプロンは別革を縫い付ける(別革は合計3~5枚)、ペニーホール、ブローグ、パンチング、デコラティブステッチなどの装飾はあってもなくてもいい。
– 左足、UK8サイズ(相当)、許容標準幅より最大で2サイズ幅広か幅狭。
– ライトブラウンのスムースレザー(カーフ、ボックスカーフ、またはアニリン染め)。パティーヌなし。
– レザーソール
– ハンドソーンウェルト製法、底付けは手縫い。
– ソールとヒールのエッジはブラウン、ボトムはナチュラルカラー(踵車や化粧釘などの装飾は可。ただし、染色や磨きは不可)
– 中敷きなどで靴の中を仕上げる。
– 焼き印なし。
– 物理的な理由で、靴の中にシューツリーを入れて送ってもらっても構いませんが、シューツリーは審査の対象にはなりません。
上記の仕様に関するミスは減点となり、小さなミスは合計点の5パーセント、大きなミスは合計点の10パーセントの減点となります。
仕様にまったく沿っていない靴は失格となります。
上記に関する審査員の決定を覆すことはできません。
企業単位でも個人単位でも応募できます。
靴の製作に関わったすべての人と誰がどの工程に携わったのかを明記してください。
審査基準:
難易度(各審査員10点満点)
製法の複雑さ、細部に至るまで高度な技術が用いられているかなどを審査します。
出来栄え(10点満点)
靴を構成するさまざまなパーツの出来、作品の端正さ、仕上げのレベルの高さなどを審査します。
デザイン/美しさ(5点満点)
靴の全体的な美しさ、比率、バランスなどを審査します。
賞金および副賞:
1位:3,000ポンド。ハンドメイドオウルハンドル。金メダル。世界各国の靴店で靴を展示。
2位:2,000ポンド。ハンドメイドオウルハンドル。銀メダル。世界各国の靴店で靴を展示。
3位:1,000ポンド。ハンドメイドオウルハンドル。銅メダル。世界各国の靴店で靴を展示。
応募方法:
出品希望者は、応募するシューメーカーの氏名またはブランド名を明記のうえ、shoegazingblog@gmail.comまで2024年1月31日必着で申し込んでください。
応募はひとり/一社1回に限ります。参加無料です。
お問い合わせは、先のアドレスまでe-mailでお願いします。
製作過程を撮影し、5月4日の決勝後に共有いただくようお願いいたします。(ただし、イベントに先駆けて靴を公開しないでください。)
審査方法および表彰式:
第一次締め切りは2024年4月2日(日)です。
全出品者はこの日までに完成した靴の写真を送ってください。(撮影方法についてはeメールでお知らせします)
この段階で30足以上の応募があった場合、予選を実施してロンドンでの決勝に進出する30足を選出します。
決勝では審査員が実物を審査し、スーパートランクショーで展示を行います。
決勝進出者(応募が30足以下の場合は全員)には4月8日(土)までに通知のうえ、靴をロンドンへ送付する際の宛先と詳細をお知らせします。
5月1日(水)ロンドン必着で、関税などはすべて差出人負担でお送りください。
靴は作者を伏せて(※)出品されます。
よって、5月4日まで出品作品をSNSなどで公開したり、今大会への出品を公表したりしないでください。
決勝に進んだ30足は2024年5月3日(金)に審査され、翌4日(土)のロンドンスーパートランクショーで展示されます。
午後5時30分より行われる表彰式で10位までが発表され(11位以下は後日発表)、優勝者と2位3位が表彰されます。(出品者が来場する義務はありませんが、出席できるに越したことはありません。)
全出品作品はシューゲイジングとザ・シュー・スノッブのブログで紹介されます。(30位以内に入らなかった靴も紹介されますが、順位はつきません。)
上位の靴はカービー・アリソンのYouTubeチャンネルで特集するほか、シューゲイジングのSNSチャンネルでもたくさんの靴を取り上げる予定です。
審査員(仮)(増員予定):
フィリップ・アティエンザ(ビスポークシューメーカー)
ドミニク・ケイシー(ビスポークシューメーカー)
奥山大(ビスポークシューメーカー)
セバスチャン・タレク(ビスポークシューメーカー)
ニコラス・テンプルマン(ビスポークシューメーカー)
パトリック・ヴェルディロン(ジョンロブパリのビスポークアトリエ責任者)
サスキア・ウィットマー(ビスポークシューメーカー)
カービー・アリソン(スポンサー、The Hanger Project創設者)
ゲイリー・トック(スポンサー、『マスター・シューメーカーズ』著者)
イェスペル・インゲヴァルドソン(シューゲイジング)
ジャスティン・フィッツパトリック(ザ・シュー・スノッブ)
審査員の決定を覆すことはできません。
靴は(上位3位の靴は世界ツアー後に)出品者に返却されますので、展示してお役立てください。
返送希望の方は、出品者の送料負担で返送用送り状をご用意ください。
※応募と問い合わせに対応するイェスペル・インゲヴァルドソン(シューゲイジング)は出品者を把握しています。ほかの審査員には出品者の名前は完全に伏せられます。
いかがでしたか。
今年のスーパートランクショーの開催日は奇しくもゴールデンウィーク中と、おうちでのんびり配信をチェックするにはもってこいのタイミングです。
シンプルなだけに難しい課題にアイデアとテクニックの限りを詰め込んだ、シューメーカーたちの力作に期待しましょう。
トップ3の靴が世界ツアーで日本に上陸した暁には、ぜひ会場へ足を運んで実物をご覧になってくださいね。
おすすめの関連記事