一般社団法人 日本皮革製品メンテナンス協会が開催する〈靴磨き選手権大会〉。
「靴磨き文化の発信と発展」を目的に2018年より開催されてきた本大会は、回を重ねるごとに注目度が増し、今や革靴業界のみならず、多方面からの熱視線を集める大会となっている。
コロナ禍により開催が見送られていた本大会だが、今秋、〈靴磨き選手権大会2023〉として3年ぶりに開催される。
今回より審査項目やルールも改新され、これまで“光りすぎて使用禁止”とされてきた禁断のワックス、サフィールノワール「ミラーグロス」が解禁されたことでも話題を集めている。
また、靴磨き道具だけでなく、ハンドラップやシューツリーなども自由に持ち込めるように変更されたことで、選手たちの普段通りの実力がいかんなく発揮されそうだ。
1stRound〈大阪会場〉2023年9月9日(土)
阪急うめだ本店 阪急うめだホール
1stRound〈東京会場〉2023年10月7日(土)
阪急メンズ東京
Final Round〈東京会場〉2023年11月18日(土)・19日(日)
銀座三越
1回戦は、各予選会場にて合計64名の選手が、全員同じ新品の革靴を片足10分で磨き上げ、成績上位24名が2回戦に進出。
2回戦では両足20分で磨き上げ、上位6名が銀座三越で開催されるFinal Roundに進出できる。
審査では、靴磨き職人として求められる基本的な技術を競う“テクニカルポイント”、出来映えだけでなく、靴磨きを通じた表現力や個性を競う“プレゼンテーションポイント”に分けられ、過去大会よりも選手たちのパーソナルな魅力にフィーチャーしたいという協会側の意図が感じられる。
本番前から各方面でボルテージが上がっている〈靴磨き選手権大会2023〉だが、我々サフィールも黙ってはいられない。
サフィール製品のみを使用し、高い技術と知識を持つサフィールフレンズの面々が、それぞれの強い想いを掲げ、この大会に挑むからだ。
「履くだけの革靴なんてもったいない」をモットーに、革靴をもっと身近に感じられるお手伝いをする脱サラのオールドルーキー。
ショート動画を通して革靴の魅力を積極的に発信しており、得意技の透明感あるハイシャインは国内だけでなく海外の人々の心も魅了している。
ルクア大阪のイセタンメンズスタイルアンバサダー(2023年1月~3月)にも就任するなど、地元大阪の靴磨き業界を盛り上げる1人。
冷静に物事を俯瞰できることが強みで、どんなシーンでも客観的な視点で物事を考える力が靴磨き技術にも反映されている。
日本初となるホテルの宿泊者向け出張シューシャインサービスを展開。
年間5,000足を超える革靴を磨きながら向上した確かな技術で、お客様から厚い信頼を築いている。
得意技である靴の曲線に合わせたブラッシングと、“ハイシャインロード”と称したつま先からカカトまでを繋ぐ美しいグラデーションを武器に、前回大会のリベンジに燃える。
好きなことに没頭する性格で、その情熱が靴磨きの技術にも反映されており、努力によって培われたスキルと信頼は、大会においても大いに発揮される。
大学時代からの親友でもあり、ビジネスパートナーでもある西上氏と共に、ホテル宿泊者の足元を輝かせている。
ファッションスナップの常連で、セレクトショップ店員だった抜群のセンスと華やかさを生かし、きめ細やかなシューシャイン技術を提供。
靴の綺麗な曲線を強調するサイドラインの光沢や、磨いている時の姿勢には自信が感じられ、華やかなスタイルと靴磨きの腕前に魅了されること間違いなし。
北陸エリア唯一の靴磨き専門店として、2023年4月に独立店舗の出店を果たした。
全国でも悪天候の日が多い金沢において、靴磨きの大切さを伝え続けている靴を愛する紳士は、本大会2度目の挑戦。
“履くのが楽しみな一足に”なるような靴磨きを追求し、自身もその楽しみを日々味わっている。
クールで落ち着いた雰囲気だが、妖艶で情熱的なテクニックが魅力の独自のスタイルを活かしたプレゼンテーションに注目。
日本初のサフィールシューケアトレーナーを取得したプロフェッショナルシューシャイナーは、〈靴磨き選手権大会2019〉で第4位に輝いた実力者。
2023年6月には、ファッション誌「LEON」が主催するパーティーにてシューシャインショーを披露するなど、他を寄せつけないほどの輝かしい活躍を続けている。
高い経験値と練度を誇り、大舞台でも動じずに自分の技を発揮する平常心が、持ち前の競技力をより際立たせている。
靴磨き歴21年という、今大会でも圧倒的なキャリアを誇るベテラン。
福祉貢献にも精力的に取り組む人情派で、人とのご縁を繋ぐよう普段は箱根神社の龍神水を用いて靴を磨いている。
常に新しい挑戦を受け入れる姿勢を大切にし、情熱を持って靴磨きの道を歩んできた経験に裏打ちされた自信と誇りは、他の追随を許さない存在としての地位を築く。
あがり症という意外な一面を持ちながらも、熟練した技術と情熱は圧倒的な存在感を放っている。
とにかく靴と人をこよなく愛する“靴磨き職人のくまちゃん”。
持ち前の笑顔とコミュニケーション力を活かし、常に靴やお客様と密接に関わることでベストな状態を追求する姿勢を大切にしている。
いつも通りの飾らない和やかなスタイルで真摯に靴と向き合い、どんなシーンでも“自分らしい”磨き技術で夢見た舞台に挑戦。
温かさや思いやりのある人柄は靴磨きスタイルにも反映され、一瞬でファンになってしまう人が続出。
今回、出場するサフィールフレンズの7名にインタビューを実施。
靴磨きを愛する人々が血眼になって注目する彼らが、大会への熱き想いや対策についてなど、気になるあれこれをオープンに明かしてくれた。
相賀氏は、本大会の発起人であり、2017年ロンドンで開催された第1回〈世界靴磨き大会〉の優勝者である長谷川裕也氏の呼びかけを耳にし、「まんまとノッてしまいました」とユーモラスに話すが、〈靴磨き選手権大会2020〉を経験しているというアドバンテージがある分、周囲からの期待は大きく、プレッシャーも感じているという。
当日は、有料席から立見席まで観客で埋まり、多くの人々が熱き戦いを見守ることが予測される。
その模様はYouTubeでも配信されるとだけあり、出場者たちのプレッシャーは計り知れないことが想像できるが、「特別なトレーニングはせず、いつも通り磨いています」と答えるのは熊田氏。
大会があろうとなかろうと、目の前の革靴を大切に扱う気持ちが変わらないのは全員一致だ。
「僕は会員制の靴磨き放題を取り入れていることもあり、たくさんの靴がやってくるので、日々の靴磨きが最高のトレーニングです。
大会で勝つことももちろん大事ですが、毎日お客様にピカピカの靴をお渡しすることが僕たちの仕事なので、“大会だから”という意識は特にしていないです。」(安部氏)
とはいえ、両足たったの20分で新品の革靴にハイシャインを施すのは至難の業。
そこで気になるのが普段の磨くスピードだが、大会ルール同様1足を20分で磨く人もいれば、30分以上かけてじっくり磨く人もいる。
同じサフィール製品を使っていても、やはりこだわるポイントが各々違ってくるのだ。
「普段は汚れ落とし、栄養補給、ツヤ出しと、それぞれの工程で、しっかりと革が落ち着くのを待つので、1日かけて靴磨きをすることが多いです。
大会ではスピードを出すコツとして、とにかく手を速く動かし、溶剤を揮発させるようにします。」(熊田氏)
基本的な靴磨きの技術を競う“テクニカルポイント”では、光沢とグラデーションの配点が大きなウェイトを占めている。
実際の靴磨きの現場において、上手く光沢を出し、美しいグラデーションを作るスキルを持っていることが大切だと考えられているからだ。
さらに、単に光らせるだけでなく、お客様のニーズに添った仕上がりを提供できるかもプロが求められる高度な技術だろう。
「普段の磨きでは、お客様が常に綺麗な状態で履いていただけるように、靴の状態に合わせています。
鏡面が割れないように、トゥキャップの中でも履きシワがあれば、その付近は光沢を弱め、数回履いた後でも空拭きするだけでツヤが出るように、クレム1925をしっかり革の中に押し込む磨き方をしています。
大会では短時間でどれだけ美しく磨けるのかを求められるので、自分の理想とする光沢のラインは出しつつ、より靴全体が輝くようポリッシュを塗る分量を増やし、靴そのものが一番綺麗に見えるように仕上げます。」(吉冨氏)
西上氏は、「いつもはハイシャイングローブで撫でれば光沢が復活するよう磨いていますが、大会では、光沢の厚みをつま先から履き口にかけて調整し、光沢の幅が広がっていくグラデーションを、靴を履いたら鏡面が割れてしまうほどかけようと思います」と秘策を明かしてくれた。
日頃からお客様の気持ちに寄り添っている彼らだからこその技術を、大会でも垣間見ることができそうだ。
サフィールフレンズたちのハイシャインテクニックは言うまでもないが、今大会から新設された、表現力や個性を競う“プレゼンテーションポイント”をどうクリアするかが気になるところ。
オーディエンスをワクワクさせる思い思いの秘策を用意できるが、熊田氏は「お気に入りのヴィンテージのジャンプスーツ」、渡辺氏は「スーツの時に合わせる靴よりも、カジュアルでオシャレに合わせられる革靴」という、いつもの自分らしさが反映されたファッションで登場することを明かしてくれた。
日頃から自身のSNSにてファッションへのこだわりを発信している安部氏は、「見られる職業として見た目はとても大事なので、自分のキャラを活かした装いで挑もうと思います」と話す。どんなコーディネートで登場するのか、そちらも必見だ。
一方、生粋の大阪人である松田氏は、「オーディエンスが盛り上がるような何かを一発かましたい」と鼻息が荒い。
全員、あくまでもブレないのは“自分らしさ”。パーソナルな魅力あふれる彼らのアピールポイントに注目したい。
〈靴磨き選手権大会2023〉の優勝者はたった1名だが、参加者一人ひとりの情熱と努力、そして、その技術を称える意義は計り知れない。
本大会は靴磨き業界や革靴愛好家たちの交流の場として靴磨きの世界に新たな光を当て、多くの人々にその楽しさと奥深さを伝えていく。
サフィールフレンズたちは、それぞれが持つ個性や技術を競いながら、大会に挑む準備を進めている。
彼らは自身のスタイルを大切にしながら、舞台でその魅力を余すことなく発揮し、私たちに楽しさと感動を提供してくれるだろう。
〈靴磨き選手権大会2023〉の成功を祈念し、参加者全員に頑張っていただきたい。
サフィールフレンズは全国に12名(2023年9月現在)。
革靴、皮革製品を知り尽くしたプロの技術をご堪能ください。
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