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ちょっと得するマメ知識 一番身近な革素材、“牛革”に種類があることを学ぼう
今回は、そんな貴方にお贈りするマメ知識です!
革靴・革製品が大好きなShoesLife読者の皆さま。いよいよ春到来ですね。 SheosLife編集部は愛知県名古屋市にありますが、ここ数年の中でこの冬は断トツに寒かったです。 でもそんな寒い冬もようやく終わりが見えてきました。
春といえば、新生活。 コロナ禍の影響で通勤や日常業務のスタイルもこの数年の間に大きく様変わりしましたが、それでもきっと新社会人の皆さんは気持ち新たに靴やかばん、お財布に名刺入れやパスケースなど真新しい革製品を使い始める機会が多くなるのが今の季節です。 新社会人に限らず、新しい職場、新しい環境、もしくは新しい気持ちで革製品を使い始めるなんてことも多いですよね。
さて今回は普段何気なく使っている革製品の中でも特に多く用いられている“牛革”について掘り下げていきたいと思います。 ということで今回ケアの話ではありませんので、もしケアについて情報をお探しの方は以下の記事の方をご覧くださいませ。
それでは本題に入ります。
革には種類があるのは、ご存知かと思います。 牛の皮からなる牛革、豚の皮からなる豚革、馬、ひつじ、やぎ、だちょう、ワニ、ヘビ、エイ、などなど。 枚挙に暇がない、とはこのことですが生物の種類の数だけ“皮革”は存在すると言っても過言ではないかもしれません。
そんな数多の皮革の中でも一番身近なものと言ったら、多くの方は“牛革”を挙げられるのではないでしょうか。 ところが一言に“牛革”と言っても、実はいくつかの種類に分類されることまではあまり知られていません。 そこで今回は皮革素材の中でも圧倒的に流通量の多い”牛革”の種類について、触れていきたいと思います。
まず大前提として、牛革は牛革用の牛を育てているわけではなく乳牛や食肉用に生育された牛から採取されます。 なので、牛革自体は畜産牛が全うする命の産物と言えます。
そしてその牛革は大きく“スキン”と“ハイド”の2種に分けられ、そこから以下の5種類に分類されます。
さてこの5種類はどのように分類されているか、わかりますか?
ホルスタインとかジャージーとか黒毛和牛とかの品種による分類? 産地?もしくはタンナー(皮革メーカー)の違い?
正解は「生育状況による分類」です。
まずその前に“スキン”と“ハイド”の違いについて補足しておきます。 こちらは牛革に限らず、原皮(なめし工程前の原料としての“皮”)の状態で25ポンド(約11kg)以上の重量がある厚くて大きい皮を"ハイド(hide)”、それ以下で薄く小さな皮を“スキン(skin)”として分類しています。
牛革の場合、前述の通りそこからさらに以下の5つに分類されます。
カーフスキン(calf skin)
生後6ヶ月以内の仔牛の皮革。 きめが細かく薄くてやわらかいのが特長で、牛革の中でも特に上質とされています。仔牛であることでサイズも小さく流通量自体も多くないので希少価値が高く、ハイブランドの高級革小物に多く用いられています。
キップスキン(kip skin)
生後6ヶ月~2年以内の若牛の皮革。 仔牛と成牛との中間にあたり、カーフスキンほどではないもののきめの細やかさやしなやかさ、なめらかさからカーフスキンに次ぐ高級素材として用いられます。カーフよりも面積が広いことで、カーフスキンのサイズでは取れないサイズの製品づくりに重宝されています。
カウハイド(cow hide)
生後2年経過し、出産を経た雌牛の皮革。大人の牛なので厚みがあるため丈夫さではカーフスキンやキップスキンを上回ります。 またカーフやキップには及ばないものの、雄の成牛に比べてやわらかいのもカウハイドの特長です。 出産を経たことで腹部は伸びてしまっているため、製品への加工ができない部分もありますが丈夫さと美しさを兼ね備える使いやすい皮革です。
ステアハイド(steer hide)
ステアは雄の牛の皮革ですが、生後3ヶ月から6ヶ月以内に去勢され、2年以上経過しているものを指します。 このような条件がつく理由は、肉牛として食用を目的に生育された牛であるからです。 したがって生産量が多く、一般的に牛革というとステアハイドを指すことも多い、なじみの深い素材です。 去勢をすることで気性が穏やかにおとなしくなるので、革として観点では牛同士の喧嘩などでキズが付くことが少ない上に、サイズも大きいので、家具などの大きいサイズの製品づくりでも多用されています。
ブルハイド(bull hide)
ステアハイドが去勢された雄牛の皮であるのに対して、ブルハイドは去勢をせずに生後2年以上経過した雄牛の皮革です。 去勢をしないのは、繁殖のための種牛として生育されているからです。 ここに挙げた牛革の種類の中では一番厚手で丈夫、耐久性に優れた素材となります。 ただ、種牛となると肉牛などに比べると生産頭数も少なく、流通量は多くありません。 また去勢をしないため気性が荒いままなので、なわばり争いや雌牛の取り合いでケンカも多くキズが絶えません。 よって革素材としては見た目が重視されるファッションアイテムには使いづらい箇所が多くなるため、耐久性が第一とされる靴底や工業用ベルト(動力部につないで機械を動かすためのベルト)などの実用性重視の裏方として用いられることが多いです。
上記に挙げた牛革の5つの分類はさらに細かく分類することもできますが、ひとまずはこれだけ覚えておけばバッチリです。 それぞれ分類された牛革がどのような成り立ちで素材として加工されていて、主にどういった製品づくりに適しているのかがわかってくると、革製品購入時の参考になるし、お手入れの際に使うクリームなどの用品の選択にも役立ちます。
牛革は皮革製品の素材としては特に身近な素材と言えますが、それは世界中で飼育されているため生産量が安定していること、サイズが大きく加工がしやすいこと、牛革の素材としての強度や耐久性が優れていることが理由と言えます。 反面、元は生き物ですからキズやシワなどで不均一な部分があったりして、最高最上の品質の皮革はほんの一握り、超がつく高級品に使われていてそうそうお目にかかる機会はなかったりします。
ですが、そんな一見デメリットに思える部分も実は1頭1頭が持ち合わせた個性であり、今自分の手元にあるのことが運命的な出会いなのでは、なんて考えると多少の気になる部分もむしろ愛着がわき、尊く感じられてきます。 皮革製品を所有することの魅力は、まさにそこであり、SDGsの取り組みにも通じるものでもあります。
冒頭で触れた通り、これから革製品を新調する機会が多くあるかと思います。 もし気になって手に取った製品(もしくはネットで見つけた気になる製品)の素材表記に、“牛革”以外に上記5種類の分類が書かれていたら、ぜひこちらの記事を思い返していただき、製品特長の把握にお役立てていただければ幸いです。
今回ご紹介した牛革など、皮革を作るメーカー“タンナー”について取り上げた記事も合わせてご覧ください。
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