前回記事でハイシャイン(鏡面磨き)をやってみたい、と思った貴方! 必見です!!
ハイシャインをやってみたい・やってみたけどうまくいかない、とお悩みの皆さまへ向けて本記事では“サフィール流ハイシャイン術”をご紹介いたします。
「靴磨きのやり方に正解はない」とは言われますが、「道具の上手な使い方」には正解・不正解があります。
サフィールのシューケアアイテムの特性を存分に活かした靴磨き、“サフィール流”を習得すれば、ハイシャインが簡単にできるようになるだけでなく、クオリティアップも間違いなしです。
それでは早速、サフィールのアイテムを使いこなす“サフィール流ハイシャイン術 6つのポイント”を紹介いたします。
さて。ハイシャインをする前にまずは使用するアイテムをチェックしておきましょう。
ハイシャインをする前には必ずベーシックケアをしておく必要があります。
ベーシックケアに必要なもの
靴についた汚れを落とし、抜けた油分の補給とツヤ出しをすることで革のコンディションを整えておきます。
次に、ハイシャインに必要なもの
靴にハイシャインをする際には、必ず“ビーズワックスポリッシュ”が必要になります。
サフィールとサフィールノワールの両ブランドから発売されていますが、ワックスの配合比率の高いサフィールノワールのポリッシュはプロにも愛用者が多く、光りやすさと光沢の美しさは世界中で高く評価されています。
ここで最初のポイント!
ハイシャインを初めてする方・うまくできない方向け。
ドライワックスとは、ポリッシュのフタを開けて5~7日間程度、日の当たらない風通しの良い場所で乾燥させたものです。
サフィールブランドのワックスは天然原料を多く含むため、新品時はクリームかと思うくらいやわらかい処方となっています。
配合されるワックスを溶かしてやわらかさを保つための“有機溶剤(テレピン油)”が入っているからなのですが、有機溶剤は揮発性が高いのでふたを開けておくとポリッシュからどんどん抜けていくため、ワックスが徐々に固くなっていきます。
ワックスを固くすることで靴表面にしっかりと乗りやすくなるので、ハイシャインが格段にやりやすくなるわけです。
※ポリッシュのドライワックス化については、楠美さんの記事で詳しく紹介されています。
使いやすいと思うポリッシュの固さは人によって異なります。
最初はやわらかめの状態から使い始めてみると、ポリッシュを使っていくうちに乾燥が進んでいき、だんだんと固さが増していきます。
その固くなっていく段階の中から自分好みの固さ、使いやすいと思う固さが見つかるとかなりハイシャインがやりやすくなると思います。
なんていう声が前回の記事を読まれた方から聞こえてきそうですが、これはNGです。
ハイシャインがしやすいようにビーズワックスポリッシュをドライワックスにしてしまうと、当然ながら元々のやわらかい状態の時よりも浸透性は落ちます。
やわらかいままのポリッシュをクリーム代わりに基本的なお手入れに使うのでは靴クリームのように使えるのでまだいいとして、ドライにしたポリッシュだけで基本的なお手入れを兼ねようとすると靴のコンディションを保つための油分が不足してしまうなんてことになりかねません。
浸透性の高い植物性油分を配合するサフィール ビーズワックスファインクリーム(アーモンドオイル)やサフィールノワール クレム1925(シアバター)を使った基本的なお手入れは、靴のコンディションを1番よい状態に保つためにも定期的にしっかりと行ってください。
ベーシックケアのあとは、いよいよハイシャイン(鏡面磨き)のスタートです。
まずすることと言えば「下地(ベース)を作る」ことです。
ハイシャイン(鏡面磨き)の下地作りとは、すなわち革表面の凹凸の「凹を埋める」作業を指します。
靴の表面は一見ツルッと真っ平らに見える革でも、よく見ると毛穴の跡やシボなどの凹凸があります。
この凹みの部分をビーズワックスポリッシュを使って埋めていくのが「下地作り」です。
この下地作りの作業をするとき、おすすめしたいのは「ポリッシュを指で塗る」ことです。
ポリッシュをクロスで塗るのは慣れれば難しくないのですが、不慣れなうちはポリッシュを塗り重ねているつもりでもいつの間にかクロスで拭き取ってしまっているなんてことが起こります。
これでは塗っても塗っても一向に凹が埋まらないわけです。
凹みが埋まる感覚を掴むまでは、「ポリッシュを指で塗る」というやり方は下地作りの簡単かつ最速の方法となります。
指(人差し指や中指)の腹にポリッシュを少量取ったら、つま先の先端からかかと方向へ引っ張るように塗り拡げます。
常につま先の先端から後方へ引っ張るように塗布することで、自然とポリッシュの塗布量に濃淡ができ(つま先部分が厚く、かかと方向へ向けて薄くなる)、これがハイシャインのグラデーションの基礎になっていきます。
つま先部分がマット(つやのない状態)になるくらいポリッシュを重ねられたら、今度はつま先からかかとへ向けて靴側面に指1本分くらいの幅でポリッシュを塗布します。
この部分は鏡面にならない程度の光沢に抑えるので、1~2回程度の塗布できればOKです。
今度はかかと部分に下地を作っていきます。
要領はつま先の時と同様です。かかとの一番先端から前方に向かってポリッシュを塗り拡げ、グラデーションの基礎を作っていきます。
かかと部分は履き口の縁までポリッシュを塗ってしまうと、脱ぎ履きの際にたわんでワックス層がシワが寄ってしまい見た目が悪くなるので、ご注意ください。
イメージとしてはつま先部分でやったように、コバから履き口方面へ向かって塗り拡げて履き口に薄くワックス層ができるようにするときれいなグラデーションができます。
そしてつま先の時と同様、今後は逆の側面にポリッシュを塗りながら、つま先に戻ります。
さて、唐突ですがここで質問です。
なぜ、パーツごとにベースを作らず、あえて「つま先 → 側面 → かかと → 側面 → つま先」と少しずつ場所を変えながらポリッシュを塗布するのでしょうか?
正解は、「乾燥時間を作るため」です。
ポリッシュはやわらかいままだと靴表面で定着する前に簡単に取れてしまいます。
ドライワックスにすることで定着までの時間を短縮できているのですが、それでも慣れないうちは塗布しながら取ってもしまうという負のスパイラルに陥りがちです。
なので少しずつ塗布する場所を移しながら、乾燥時間を長めに取ることで同じ工程の2周目に入る頃には塗布面が乾いて取れにくくなり、塗り重ねしやすくなっているわけです。
これをさらに、靴の左足右足を交互に行うことでさらに乾燥時間を取ることができますから、より効率的に下地を作ることができます。
ハイシャインはまさに、急がば回れ。急いては事を仕損じる。てなわけですね。
ハイシャインをやったことのない方、なかなかうまくできない方が迷いがちなポイントが、
なんです。
見分けるポイントはいたってシンプルに、「見た目」と「肌触り」です。
見た目 = マット(つやなし)になっている
肌触り = つるつるしていない、指が滑らずひっかかり(抵抗)を感じる
最終的には水を1滴垂らしてみて、水滴がまぁるく表面で弾かれていたら下地はバッチリです。
続いては、下地の上にポリッシュを塗り重ねることで下地のワックス層の凹凸を平滑にならしていく工程です。
ここからはクロスを指に巻きます。
指に巻いたクロスに水を含ませてから少量のポリッシュを取って、3で作った下地に塗り重ねていきます。
水の量は多くても少なくてもよろしくないので加減が重要です。
目安は、水を含ませた後に手の甲などを拭いてみて、水気は感じるけど手には残らない、くらいの水の量です。
この工程で注意すべき点は以下の通り。
力加減は・・・・
ポリッシュ同士を靴表面で混ざり合わせるようなイメージで脱力。
力を入れすぎると下地のポリッシュを取ってしまったり、力を加えた箇所の周囲に押し退けられてしまうので注意。
水加減は・・・・
量的には指先にとった水滴を2~3滴垂らす程度。
下地に水滴を垂らしたら、まずは軽く・手早く水気を下地部分に散らすように行き渡らせます。
水は多すぎるとせっかく乗せた下地をはがしてしまうことがあります。また革にしみ込んでしまうことで、水気が油を弾く作用でポリッシュの乗りを悪くしてしまいます。
この下地を平らにならす工程では、水はできるだけ少なめにすることで速くきれいに鏡面が仕上ります。
下地表面の水気を行き渡らせたら、クロスに取ったポリッシュを下地とゆっくり混ぜ合わせながら、表面の凹凸を平らにならしていきます。
この時、下地とクロスのポリッシュが引き合って粘り気が出てきますが、するとクロスを動かす手にわずかに抵抗・重みを感じると思います。そして、下地部分にうろこ状の跡が付き始めたら、これはイイ感じです。
この粘り気をうまく誘導することで、凹凸をならすっていう寸法です。
クロスは一方方向ばかりに動かすのではなく、縦向き・横向き・円を描く動きを織り交ぜるように動かすと徐々に拭き筋が薄くなり消えていきます。
そうするとだんだんと指先に感じていた抵抗が軽くなると思います。
そしたらクロスを見てみてください。
クロスに取ったポリッシュがなくなって、クロスの地が見えているでしょう。
まだポリッシュが残っていたら、もうしばらく続けます。
また水を垂らして同じ工程を繰り返します。
クロスにポリッシュが残っていなかったら。
そうしたら、指先にほんの少しポリッシュを取って上記工程を繰り返します。
もしこの時点で革の地やシボ感がはっきりとわかるようであれば、下地があまくて凹凸が埋めきれていないかもしれません。
今一度ポリッシュの指塗りから繰り返してみてください。
この工程のポイントは、繰り返し作業をどこから始めるか、です。
下地がしっかりとできていればすんなり光沢が出始めます。
逆に言えば、時間さえ掛ければ後からでも足りない部分は補えます。
光らないからと焦って先を急がずに、同じ工程を2度3度繰り返して丁寧な下地作りを意識してみてください。
さあ、ここまでくればあと一息。
5.の工程で6、7割くらいの鏡面具合に仕上がっていると思います。
ここからが仕上げの工程です。
乾拭きをして、摩擦による熱を使ってポリッシュを塗布した部分をさらに整えていきます。
まず指に巻いたクロスをポリッシュのついてない場所に巻き換えてください。
ここでもこれまで同じ用にクロス表面にはしわが寄らないように注意してください。
クロスを巻いた指の腹部分を水で湿らせたら、さらにポリッシュ塗布部分に水滴を垂らします。
水滴は5.の時よりも多め、5~6滴程度が最適です。
便宜上乾拭きと言っていますが、実際は水を使っているので“水拭き”ですね。
(巷では“水研ぎ”とも呼ばれています)
この工程では、指の腹を広く使ってやや力を強めに圧をかけるように拭き上げていきます。
重要なのは摩擦熱なので、手早さもまたかなり重要です。
拭き上げていくうちに、だんだんとワックスのマットさが抜けてくもりが晴れてきます。
みるみる光沢が出てきますので、徐々に力を抜いていき、最後は手早さだけで摩擦熱をかけていきます。
最初から最後まで力を込めっぱなしだと、クロスの繊維のキズが入り始めるので注意が必要です。
そもそも疲れてしまうので、ほどほどに力を抜いていってください。
こうしてみると、「磨く」という言葉から想像する力を込めて研磨をするパートは最後のこの部分くらいなものです。
それまでは作った下地をはがしてしまわないように極力、「軽く」・「やさしく」タッチすることが求められます。
「磨く」という言葉にゆめゆめ惑わされぬようご注意ください。
乾拭きの後は、フィニッシャーブラシやハイシャイングローブを使うことでかすかに残るクロスの拭き筋を消すことができ、より一層光沢を引き出すことができます。
ただここでも、念入りに水拭きを繰り返すだけでもかなりきれいに仕上げることは可能です。
今回紹介したどのポイントも、慣れないうちは時間がかかってしまいます。
ところがひとたびコツを掴むと、みるみるうちにかかる時間が短縮できるようになっていきます。
ただ前回記事でもお伝えした通り、ただただ速さを追い求めるハイシャインには何の意味もありません。
美しさだけでなく、靴にとって・革にとってのメリットをきちんと引き出すことが重要となります。
サフィール流ハイシャイン術が下地作りを重視するのは、ただ仕上りのスピードを早められるだけではなく、天然原料を主成分とするビーズワックスポリッシュをしっかりと定着させることは皮革にとってのダメージにはならず保護・保革効果を強化する役割を持っているからにほかなりません。
ということで、“サフィール流ハイシャイン術 6つのポイント”をマスターして、美しさだけではない本当のハイシャインを体感してみましょう!
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