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エナメル革(パテントレザー)は、革の表面をコーティングして強い光沢を出した靴・バッグ用の素材です。 見た目は華やかでも「メンテフリー」ではなく、高温・湿気・色移りに弱いなど扱い方にコツがあります。 この記事ではエナメル革の特徴と弱点、ベタつき・ひび割れを防ぐお手入れ手順、やってはいけないNGケアまで分かりやすく解説します。
★この記事でわかること
“エナメル”は素材特有の独特な光沢・質感が魅力的な素材で、広くファッションに取り入れられています。 季節が秋・冬となると夏場のカジュアルルックからドレッシーな装いへと変わり、そういったフォーマル/きれいめコーデな時に履くエナメルの靴は、日中の穏やかな陽射しや夜の街のイルミネーションを足元に映して、まばゆいほどの輝きで彩ってくれるアイテムです。
そんなとっても魅力的ですてきな素材であるエナメルで意外と知られていないのが、れっきとした「皮革素材」であるということ。 エナメル素材・生地の中で、“皮革素材”をウレタン樹脂でコーティングしたものを“エナメル革(レザー)”と称します。 天然皮革以外にも、合成皮革や目の詰まった布地(織物)にコーティングしたものも同様にエナメル素材に分類されるので、パッと見で下地の素材が革かどうかを見分けるのは難しいですが、上質なレザーを加工したエナメル革はアッパークラスのブランドでも重宝されており、靴以外にもバッグや財布・小物に多く用いられています。
余談ですが、エナメル革は他にも“パテント革(レザー)”とも呼ばれているのを、ご存知ですか? これは水気や汚れに強い革の開発にあたって、エナメル加工による製法で「特許=Patent・パテント」を取得したことからそう呼ばれるようになったそうです。 したがって「パテント革=エナメル革」で、開発当時の技術の粋を結集した特殊素材と思ってもらって差し支えありません。
ということで、エナメル革は一応雨や水気に強く、汚れにくい(汚れても落としやすい)という特長を持った大変機能的な素材であることがわかりました。 これなら「お手入れもしやすそう」という風に思いますよね。
ところがどっこい、話はそう単純ではありません。
そんな皮革素材の優等生的な存在のエナメル革にも「弱点」があります。
以上に挙げたエナメルの弱点はズバリ、皮革をコーティングしている素材“ウレタン樹脂”の弱点です。
エナメル素材で主にコーティングに用いられるウレタン樹脂はポリウレタン(PU)です。 このポリウレタンがエナメルの素材としてのタフさを支えているのですが、同時に劣化や傷みの影響を大きく受ける箇所ともなるわけです。
それでは以下でエナメルの弱点についてもう少し詳しくご説明したいと思います。
ウレタン樹脂は熱に弱く、高温が続くと劣化が早まる特性があります。 過剰にやわらかくなってしまったり、ウレタン樹脂とベースの皮革が剥離してしまったり、最悪溶け出してベタつきが発生したり、といった症状が出ます。
対策:年中温度差がなく、できるだけ涼しい場所で保管してください。
エナメルの素、ウレタン樹脂自体は水を弾く(浸透させない)特性を持つため、雨・水気に強い素材ではありますが、油断は禁物です。 水気に長く触れたままでいたり何なら空気中の湿気であっても、エナメルを構成するウレタン樹脂は加水分解という劣化を引き起こします。 加水分解とは「反応物に水が反応し、分解生成物が得られる反応」で、これをエナメルに置き換えると「ウレタン樹脂(や成形に用いる可塑剤=反応物)が湿気(=水)と反応して溶けたようなベタつき(=分解生成物)が発生」する現象を指します。
このような現象はエナメルという素材の経年による劣化であるため、完全な回避や予防は困難とされています。
特に日本の気候は欧米に比べて“高温多湿”なうえ、海外生産のエナメル製品は日本のような高温多湿下での製品使用を想定していないからか、特にインポートのエナメル製品で弱点1や2を要因とした劣化が多くみられる、と言われています。
対策:雨などで濡れた後はそのまま放置せず速やかに拭き取ってください。また保管時はできるだけ湿気のこもらない場所に保管することをおすすめします。 クローゼットで保管する場合は湿気を吸ってしまう紙箱には入れず、不織布などで包んでから湿気の溜まりにくいクローゼットの上段で保管してください。 定期的にクローゼットを開けて換気したり、扇風機やサーキュレーターで風を当てて空気を循環させると温度や湿度を下げ、カビの繁殖も予防できます。
本革(コーティングなどの加工がされていないツヤ革や起毛革など)であれば少々キズがついても色を付けたり、紙やすりで削ってキズを目立たなくしたり、といった方法で容易に補修ができますが、エナメル革はそう簡単にはいきません。
ウレタン樹脂のコーティングは浸透性がないため、補色クリームを塗ろうにも素材になじまず浮いた仕上がりになってしまいます。いわゆる“塗った感”がバリバリの仕上がりです。 また紙やすりを使ってしまうと直すはずのキズの周囲に紙やすりによる擦り傷が入ってしまいます。すると前述の通り、補色クリームではツヤ革のキズ補修のような自然なカバーができずエナメル特有の透明感を損ねてしまうので、違和感が生じてかえって見た目の悪化を招くことになってしまいます。
では“サフィール ダイフレンチリキッド”のようなアルコール系染料であればどうでしょうか? (参考:サフィールの染料による手染め仕上げについて)
アルコール染料であるダイフレンチリキッドはウレタン樹脂にもしっかり浸透するのでエナメルを染色することは可能です。ただしその場合はリカラー(染め替え・カラーチェンジ)であって、思いきって元のイメージからガラッと変えてしまうことはできても、部分的にキズを目立たなくするといった補修はできません。 リカラーするにしても元の地の色と染料の色がバッチリ合えば良いのですが、基本的にキズやシミを目立たないように隠すには、より濃色に染める必要があるため、どちらにせよ元々のエナメル革の状態を取り戻したりよみがえらせたりするには不向きです。
またエナメルの靴にありがちなのが、“深く刻まれる履きジワ” 牛革などツヤ革の靴であれば、シューツリーで形を整え靴クリームなどで油分を補充し柔軟性を保てれば、履きジワは消すことはできないまでもある程度目立たないようにすることはできます。
ところがエナメルは、樹脂のコーティングにシワが刻まれてしまうと直したり復元したりはまず困難です。
対策:靴であればなるべくサイズがジャストフィットするものを履き、余計な箇所に無理なしわが寄らないようにするとよいです。 かばんやお財布は中に物をいれすぎて屈曲面に負担をかけないようにするのが良いでしょう。
場合によっては致命的なダメージとなるのが“色移り”です。
・他の靴と引っ付いたまま保管しておいたら、その靴の色がエナメルに移ってしまった………
・エナメルの財布を雑誌やチラシの上に置いたらくっついた!無理に剥がしたら跡が残ってしまった………
上記のようなトラブルはエナメル革の製品によくみられます。 一度色が移ってしまうと、いくら強力な皮革用クリーナーで使ったとしても、取り切ることは難しいです。 なぜならエナメルの色移りという症状は“色が染まった”状態だからです。 汚れや色がエナメルの表面にくっついている(乗っかっている)のではなく、他の靴に使われている染料や雑誌・チラシなど印刷物のインクがエナメル=ウレタン樹脂に染み込んでしまう、いわゆる“染色”された状態になってしまうからです。
したがって、エナメルの樹脂の中へ染み込んでしまったインクや汚れは、どれだけ表面を擦ったとしても落ちないのです。
対策:エナメル製品は他のものとは接触しないように保管してください。不織布で包んでいても他の製品とぴったりくっつけてしまうと色移りのリスクがあるのでご注意ください。 素材自体が一度染まってしまうとその後は何をどうしても元通りに戻すことは困難です。 できることとしたら、ダイフレンチリキッド(サフィールブランドの皮革用染料)などを使ってより濃い色に塗りつぶして染め替えてしまうことくらいで、てっとり早い復旧手段となります。 エナメル修復の専門業者の中にはこのようなトラブルの対応を得意としているところもあるようです。 もし色移りを染め替えではなく元通りに戻したい場合は潔くプロ・専門業者に診てもらうのがよいでしょう。
さて、一見扱いがかんたんそうにみえるエナメルですが、上記の通り気をつけなければならないことが非常に多くいです。 弱点・デメリットを詳しく語ってしまうと「エナメル(パテント)革って、めんどくさい………」という気持ちになってしまいますね。
ですが、前述の“弱点”さえ把握して対策をしっかりしておけば、元々雨や汚れに強い素材(濡れたり汚れたりしてもひと拭きできれいになる)であるエナメル革をダメージや劣化から守り、美しさを維持するのはかんたんで、誰もが長くきれいに使い続けることができる素材であることもまた事実です。
ということで、まずエナメル革という素材の特徴を知っていただいたところで、次回はサフィールのエナメル専用お手入れ用品“SAPHIR(サフィール) ヴァーニスライフ エナメルローション”を使った「エナメル(パテント)のお手入れと長く使うコツ」について詳しくご紹介します!
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【海外情報】フォーマルな場で履く靴、どんな素材を選ぶ?
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初心者でもかんたんにできるエナメル革の靴のお手入れについて、新人(当時)が体験レポートをしています。
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