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くすみのシューケア生活
アニメや漫画の世界だけの話でなくプライベートや職場のような現実の世界でも、何をやらせても涼しい顔で卒なくこなす、万能とは言わないまでもデキるヤツっていますよね。 どんな環境でもすぐに馴染む社交性を持っていたりとか、本来は自分のではない仕事をさらっと終わらせたりとか、面倒な作業を率先して引き受けたりとか。 凡人の僕からすると、そんな器用な彼らが眩しくて羨ましくてたまらなかったりするわけです。
革靴用のクリームにもそんなデキるクリームというものがあって、コイツがまぁ憎いわけです。サフィールノワールのクレム1925というクリームのニュートラル。 ちょっとオシャレなパッケージで、一見「革靴のお手入れ専用のクリームですよ」みたいな涼しい顔をしていますが、実は相当デキる。
クレム1925は、革に栄養を与えて柔軟にしツヤを出すことができる革靴専用クリームです。 通常革靴用のクリームというのは、革の色ごとにクリームの色も用意されている場合が多いですが、靴のお手入れに馴染みがない方にとって靴の色ごとにクリームを揃えるのはなかなかハードルが高いはずです。 なので、最初は無色(ニュートラル)のクリームを1つ持っておけば大丈夫。
無色のクリームなら革の色を選ばないので黒でも茶色でも他の色でも対応できますし、定期的にクリームで靴のお手入れをしていれば革の色が褪せていくことはほとんどありません。もし最初に選ぶクリームでお悩みの方はとりあえずこのニュートラルをおすすめします。
さらに、高級な天然成分を使っているという謳い文句がまた憎い。育ちの良さと社交性の高さが伺える、そんなクリームなんです。
というようにクレム1925は靴のお手入れのためのクリームですが、鏡面磨きのワックスを落とすこともできるのです。 クリームの特性上、クレム1925にはロウ分と油分が豊富に含まれているため、それを混ぜ合わせるための有機溶剤も豊富に含まれています。その有機溶剤によってワックスを溶かすことができるので、靴のお手入れだけでなくワックス用のクリーナーとしても効果を発揮するというわけですね。
鏡面磨きを落とすための専用のクリーナーも市販のものがあるにもかかわらず、本来そのために作られたものではないクリームがそれをこなしてしまうという頼もしさ。 プログラムも理解してて企画書も作れるデザイナーみたいな。
鏡面磨きを落とせるということはつまり、ワックスを溶かすことができるというわけですから、鏡面磨きの多少のキズなら補修することができます。 鏡面のワックスが薄いと効果を発揮しづらいのですが、これくらいしっかりとワックスを塗り重ねた鏡面のキズには、ほんの少量のクレム1925を塗布してもう一度コットンネルの布と水で磨きあげると、ほんの2〜3分でこの通り。
ワックスを全部落として鏡面磨きをし直すのはなかなか面倒ですが、機転をきかせてその面倒な作業の簡単な解決策を提案してくれる守備範囲の広さ。 ね、憎いでしょ?
でも、安心してください。やっぱり完璧な人なんてこの世には存在しなくて、仕事はできても遅刻はしてくるとか、何かしら弱点はあったりするものです。 お財布とかバッグのような革製品全般における万能という意味では、こちらのユニバーサルレザーローションかレザーバームローションの方が適任です。クレム1925はロウ分も油分も豊富なかわりに、肌に直接触れるような革製品に使うとベタつきが残ってしまうことがあるからです。
でも逆にローション系の製品はワックスをしっかりと落とすことはできませんし、ローションもクリームもスエードのような起毛革には使えない場合がほとんです。 得手不得手があるのは人間もシューケアグッズも同じ。ちゃんとバランスが取れているんですね。
でも自分は彼らのようにはなれないということはわかっていて、デキる彼らが世の中を潤滑に回してくれて、デキるクリームが革の繊維を潤滑に保ってくれるから、じゃあ僕にできることはとりあえず自分と周りの人を愛することだけという、必ずしも簡単ではないけれど大切なことを教えてくれる、そんなクリームなんですよね。 デキないことばかりに目を向けるのではなく、良いところに目を向けて称え合えるそんな世の中になるといいですね。自分に対しても他人に対しても。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
Writer profile
楠美 皓平 Kohei Kusumi
革靴ジャーナリスト・ブロガー
祖父に教えてもらった靴磨きがきっかけで、靴のお手入れ方法や革靴に興味を持ち、『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行う。また、ファッションとしての革靴だけでなく、足を支える道具としての革靴という側面から、靴選びの大切さについても発信をすべく知見を深めている。 ブランドや職人の取材のライティングをする一方で、靴好きの方のコミュニティの活性化の一環としてイベント運営も手がける。 前職のwebディレクターの経験からシューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども行う。
blog https://kusumin.com/
YouTube https://www.youtube.com/c/LeatherShoeJournal
instagram https://www.instagram.com/starfish0925/
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