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飯野高広の
“サフィール・タラゴと歩む 革靴さんぽ道”

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飯野高広の
“サフィール・タラゴと歩む 革靴さんぽ道”

公開日:2025/11/22 / 最終更新日:2025/11/25

何気に使えるネイビーで比較。青缶と黒缶、何が違うSaphirの油性ワックス

世界一レベルのシューシャイナーが選ぶSapir Noirの油性ワックス

靴磨き選手権大会改めSHOESHINE GRAND PRIXが、今年も無事に終了しました。カーレースのF1が「走る実験室」ならば、このイベントは言わば「磨く実験室」。単に日本一のシューシャイナーの座を争うばかりでなく、各選手の奮闘を通じ靴磨きの最先端が見られる場としてもすっかり定着した感があります。

SHOESHINE GRAND PRIX 2025

毎年新たなシューケア用品が登場する中、ほぼ全ての選手のテーブルに複数個あったのが、そう、我らがSaphir Noirの油性ワックスの面々です。大定番のビーズワックスポリッシュ(通称:「黒缶」)と、あまりに簡単に光沢を出せるので以前は使用禁止だったミラーグロス。どちらも日本、いや世界最強の靴磨きに不可欠なアイテムとして完全に定着しているのみならず、双方を上手く使い分けるのが今日の鏡面磨きのデファクトスタンダードになっています。中には人差し指と中指とで双方を絶妙に取り分ける、プロ顔負けの一般の方も…

ビーズワックスポリッシュの隠れた傑作「ネイビー」

さて、そんなSHOESHINE GRAND PRIX、従来の予選・本選である「公式大会」に加え、今回からは「公認大会」という一般の方メインの地方予選も行われ、筆者(飯野)もその全てに帯同致しました。つまり、札幌から福岡まで半年で泊まり込み出張が合計6か所。時期によっては二週ごとに週末は自宅以外となった訳です。当然服だけでなく革靴、そしてシューケア用品も厳選して持参しましたが、そこに必ず入れておいたのもSaphir Noirのビーズワックスポリッシュの「ネイビー」。

 

靴の色に関係なく使えるはずの「ニュートラル」ではないところがポイントで、各会場で履く革靴が黒でも茶系でもバーガンディでも、最も「馴染んだ光沢」を引き出せる(と個人的に思っている)のがこの色、つまりネイビー色の油性ワックスだからです。古い靴でもあざとい表情に仕上がらない、と申し上げれば良いのかな?

バーガンディ色のタッセルスリッポン(飯野さん私物) サイドからのカット

バーガンディ色のタッセルスリッポン(飯野さんの私物)  サイド

バーガンディ色のタッセルスリッポン(飯野さん私物) 正面からのカット

バーガンディ色のタッセルスリッポン(飯野さんの私物) 正面

バーガンディ色のタッセルスリッポン(飯野さん私物) サイドからのカット

コニャックカラーの外羽根プレーントゥ(飯野さん私物)   サイド

バーガンディ色のタッセルスリッポン(飯野さん私物) 正面からのカット

コニャックカラーの外羽根プレーントゥ(飯野さん私物) 正面

ところがです。後半戦の「公式大会」で福岡を訪れた際、なんとそれを自宅に忘れてしまった… 宿での開梱時にようやく気づき、それこそ顔面ネイビーならぬ真っ青。短時間にパパっと探しまくったものの、入手できたのは「青缶」つまりSAPHIRのほうのビーズワックスポリッシュの「ネイビー」でした。が、いざ使ってみると、これはこれで堂々とした光沢が出ることに感動! そしてふと、こうも考えました。

「ビーズワックスポリッシュって、SAPHIRにもSaphir Noirにもあるけど、どんな違いがあるのかな?」

 

ゴメンナサイすっかり前置きが長くなりました。今回は「ネイビー」の色味に限ってではありますが、双方の違いを様々な角度で検証してみたいと思います。なお公平を期すため、以下はいずれも新品を買い直して検証しております。

「青缶」「黒缶」の違いを多面的に検証

SAPHIR(以下「青缶」と記します)であれSaphir Noir(同「黒缶」)であれ、ビーズワックスポリッシュの主成分はそれらの裏面に記載されている通り「蝋(ワックス)」「油脂」「有機溶剤」です。「蝋」は革の表面に光沢を出すため、「油脂」は革のコンディションを改善する目的、そして「有機溶剤」は主にそれらの伸びを良くしたり揮発を防ぐために添加されます。そして当然、これら以外にも色付けの染料や顔料も各種含まれています。

SAPHIR サフィール ビーズワックスポリッシュ

青缶(SAPHIR ビーズワックスポリッシュ)

SaphirNoir サフィールノワール ビーズワックスポリッシュ

黒缶(SaphirNoir ビーズワックスポリッシュ)

なお、油性ワックスは乳化性クリームに比べると色数が少ない傾向にありますが、これは主に、染料や顔料が水溶性のものに比べ油溶性のものが多くないことに起因します。話がまた脱線しますが、それを踏まえれば「乳化性のような油性クリーム」として有名なSaphir Noirのクレム1925の色数って、大分多いですよね!

 

では「青缶」と「黒缶」の違いに入ってゆきましょう。まずは香り。「青缶」「黒缶」どちらも、原則としては蜜蝋由来の非常に華やかなものです。缶を開けた時にフワッと鼻腔をくすぐるこれにハマって、Saphirの油性ワックスを使い続ける方々も多いのではないでしょうか。ただ前者がごく僅かに有機溶剤っぽいツンとしたもの(それでも他社のものに比べれば「石油」っぽい感じは皆無ですが…)を感じる一方で、後者は蜜蝋ならではの香りがいっそう前面に、かつ自然に香って来る印象を受けます。

 

次に色味。白の紙に双方を塗ってみたので、まずはそれをご覧下さい。写真ではなかなか判りづらいのですが、実際を目で直接見ると、「青缶」のほうは僅かに赤みを帯びたコクのある紺色が出ている一方で「黒缶」は逆方向、つまり若干緑みを帯びしかも穏やかなネイビーの印象です。染料と顔料のバランスが、両者で微妙に異なるのかな? いすれにしても毒々しくない紺色で、前述した「あざとい表情には仕上がらない」一因となっているようです。

← SAPHIR / SaphirNoir →

★塗布画像①
紙にビーズワックスポリッシュ「青缶」「黒缶」を塗布したもの。
左)青缶
右)黒缶
※色はいずれもネイビーブルー

そして浸透の度合い。こちらは先ほどの紙を裏面から確認してみましょう。「黒缶」のほうがより浸透している、特に色以上に油分が染み込んでいる感がありますね。恐らく具体的な油の微妙な違いによると思われますが、「黒缶」のほうが栄養分を革の内部に送り込む能力に優れていると言えるかもしれません。また、若干はありますが革の表面での伸びも「黒缶」のほうが良いような感覚があります。この辺りは双方の価格の差があるだけのことはありそう!

← SAPHIR / SaphirNoir →

★塗布画像② 塗布画像①を裏返したもの。
左)青缶
右)黒缶
※色はいずれもネイビーブルー

ワックスであるが故に最も肝心な光沢は、当然ながらどちらも甲乙付け難いレベルの高さを誇ります。ただ、こちらも写真では相当判り難いのですが、そのニュアンスが少々異なる気がします。「青缶」はメリハリのあるしっかりとした光沢が出るのが特徴で、これはカルナバ蝋の割合が高いのかな? 対して「黒缶」はキラッとした華やかな光沢に仕上がる傾向が強いです。同じ蝋分でも、こちらは蜜蝋の比率をより高めているのでしょう。実際にはもっと差が出ているのですが、キャラの違いが下の写真で分かってくれるかなぁ…

←SAPHIR / SaphirNoir →

「青缶」はメリハリの効いた光沢、「黒缶」は華やかな光沢

どっちも持っていると、さらに楽しい!

これらを総合すると、同じSAPHIRの油性ワックスでも、靴の革質や仕上がりの好みに合わせて「青缶」と「黒缶」とを使い分けられるようになると、鏡面磨きをより高レベルと言うかより楽しく行えると言えそうです。

 

「青缶」はどちらかと言えば革の表面に「乗っかる」感覚なので、例えばガラスレザー系の革にハッキリと光沢を出したい時や、メリハリのある光沢やワックスを掛けない箇所との色味のコントラストをしっかり付けたい場合には非常に有効です。

 

対して「黒缶」は革の内部にまで「染み込む」感覚があるので、銀付きでよりキメの細かい革をアッパーに用いた靴や、華やかで透明感の高い光沢を出したい時、さらにはワックスを掛けない箇所とより自然なグラデーションを出したい場合には最適ではないかと。どちらも高度な特性があるからこそ、長年に渡り油性ワックスの中心軸であり続けている訳です。つまりはだ、同じ色なら一種類だけでなく「青缶」「黒缶」どちらも持っていたほうが靴磨きはいっそう楽しめるということ。あ、もし更に向かうところ敵なしの光沢をお望みであれば、今回は触れませんでしたがSaphir Noirの最強兵器・ミラーグロスを合わせて使うのもお忘れなくですよ!


本記事で紹介した商品はこちらで購入できます。

SAPHIR(サフィール)ビーズワックスポリッシュ 50ml
SAPHIR(サフィール)ビーズワックスポリッシュ 50ml
天然原料を主成分とした、ハイシャイン(鏡面磨き)には必須の固形ワックス


 
SaphirNoir(ノワール)ビーズワックスポリッシュ 50ml
SaphirNoir(ノワール)ビーズワックスポリッシュ 50ml
ハイシャイン(鏡面磨き)に必須、高品質なカルナバワックス・ビーズワックスベースの固形ワックス


 

 

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  • 服飾研究家

    飯野 高広 Takahiro Iino

    1967年東京生まれ。大学卒業後大手鉄鋼メーカーに11年勤務したのち、服飾研究家として独立。この分野では出身がファッション業界でもメディア業界でもない特異な存在としても知られ、紳士靴やスーツなど主に男性の服飾品全般を、ビジネスマン経験を活かした楽しくかつ論理的な視点で解説するのが特徴。
    出版では、紳士靴関連では2010年に出版した『紳士靴を嗜む:はじめの一歩から極めるまで』(朝日新聞出版)が今日まで版を重ねるロングセラー。紳士服関連でも2016年に出版した『紳士服を嗜む:身体と心に合う一着を選ぶ』(朝日新聞出版)が類書に無い内容の濃さで好評を博している。
    近年はWEBやTVにも活躍の場を広げており、2015年にはTV番組「マツコの知らない世界」に「靴磨きの世界」のガイド役としても出演。NHKテレビ「美の壺」では2018年11月放送の「粋を極める 男の靴」の回に出演、2023年12月放送の「品格をまとう スーツ」の回でも総合監修を行った。また、2006年から専門学校で近現代ファッション史の講義も担当し、スタイリスト業界に中心に多くの教え子を輩出し続けている。

Le Beau
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