スニーカーやデニムなどのアイテムにカスタムペイントを施す、カスタマイザーと呼ばれるアーティストたち。
日本ではまだメジャーな存在ではありませんが、先の記事でもご紹介したように、世界中で活躍しています。
今回は、マキナンド・アルテというハンドルネームで活動しているスペインのカスタマイザー、ナンドのインタビューをお届けします。
子どものころからの絵を描くのが大好きで、運命に導かれるようにカスタマイザーになったナンド。
カスタムペイントを始めるきっかけや道具選びなど、興味深い話をたくさん聞かせてくれました。
本記事はTARRAGOのブログに掲載されている記事Painting on canvas and denim: Interview with Maquinando Arteを意訳したものです。
カスタマイズ沼にはまっている人なら、超繊細なタッチでデニムやキャンバスにペイントを施す名人、マキナンド・アルテことナンドなるアーティストによる傑作デザインを目にしたことがあるでしょう。
タラゴは彼とコンタクトを取り、その生い立ちやテクニックについて聞きました。どうぞご覧ください!
あなたを知らない人のために、簡単に自己紹介をお願いします。
こんにちは。ナンドです。バレンシアで生まれ、アリカンテで育ちました。
製図技師として、ここ数年は建築系や技術系の会社で仕事をしています。
アートが大好きで、僕の人生にはいつもアートがありました。物心ついたときには絵を描いていました。
すべて順調だと思っていた矢先に職を失い、それを機に大学に入ることにしたんです。
ずっと大学でアートを学びたかったんですが、そのときまで叶いませんでした。
アートの道に進むのが僕の運命なんだというお告げだったと思います。
4年後、バレンシア工科大学(UPV)の芸術学部を卒業しました。
絵を描く以外では、映画やシリーズものが大好きで、ときどき次のプロジェクトのアイデアやヒントをもらったり現実逃避したりしています。
カスタマイズを始めたきっかけは?
カスタマイズの世界に足を踏み入れたのは偶然からでした。
大学1年生のとき、ある人の誕生日パーティーに招待されてプレゼントを用意しないといけなかったんですが、どんなものがいいかわからなくて、スニーカーにペイントすることにしました。
なかなかの出来だったんですが、何年か経ってその写真を見返したら粗だらけでした。
布用マーカーでペイントしたんですが、先の細いアルコール系インキのパーマネントマーカーで線を入れたら、滲んで線がガタガタになってしまいました。
みんな初めはこんなものです。初めがあるから今がある。
成功と失敗の繰り返しから学び、制作のプロセスを完成させ、テクニックを磨いてきました。
発想の源は?
SNSやPinterestのようなサイトを見て、ほかのアーティスト(カスタマイザー以外も含めて)の作品に触れるようにしています。
ペイントを離れても、次のプロジェクトに活かせそうなイメージを意識して探しているので、作品やアーティストや制作のヒントに出会えます。
カスタマイズを始めるにあたり大変だったことは?
カスタマイズを始めること自体が大変でした。
興味本位で始めたところから、試行錯誤を重ねてなんとか今のレベルにたどり着きました。
毎日が挑戦です。来る日も来る日も、もっといいアーティストになろう、誰よりも自分に厳しくあろうと努力して、常に学び続けています。
その甲斐あって、ベストな仕事の進め方に辿り着き、今では2倍効率よく作業できるようになりました。
目標とするアーティストはいますか?
カスタマイズ界隈のアーティストを何人かフォローしていますが、目標にはしていません。
長い間死に物狂いで頑張って、やっと僕だけの明確なスタイルを手に入れました。
ほかのアーティストの作品を手本にしたのではなく、努力と忍耐のたまものです。
いちばん楽しいのはどの工程ですか?
どの工程にも思い入れがありますが、好きな制作工程は2つあります。
対極にあって、ますます楽しい、最初のスケッチと最後の輪郭線入れです。
この分野に足を踏み入れてから、デザインに関して最初から双方が納得できるよう、クライアントにデジタルでスケッチを送るようにしています。
この作業は、ペイントを始める前の「土台」なので、とても楽しいです。
適所にはまるイメージや色彩のハーモニーやコントラストを探して記録するのが楽しいです。
逆に、制作工程の最後の輪郭線入れは、ストロークや線の強弱が仕上がりに大きく影響する、もっとも繊細さが要求される工程です。
これからペイントを始める人にアドバイスするとしたら?
何にでも言えることですが、初めは大変です。簡単そうに見えて決して簡単ではないことに何時間もかかってしまう。
ここでどれだけ没頭できるか、辛抱できるか、犠牲を払えるかが鍵です。
僕は、何日も何週間も休むことなく、友だちや家族と会うのもあきらめて今のレベルまでたどり着き、子どものころからの夢だった道で食べていけるようになりました。
ペイントを始めるにあたりどんなアイテムが必要でしょうか?
やる気のほかには、まず、いい素材をそろえましょう。
これからペイントを始めようというときに、大金をはたいて大量のペイントをそろえる必要はありません。
これから使う素材を少しずつ知っていき、少しずつ試していけばいいんです。初心者にはまず、タラゴのスターターパックをおすすめします。
三原色(赤、青、黄)と白と黒が入っていて、有彩色のいろいろなトーンを試すにはこれさえあれば十分です。
キャンバスのペイントにいちばん有効なテクニックは何だと思いますか?
「もっと有効な」テクニックがあるかもしれませんが、知り得る限りいちばん有効なテクニックをすべての作品に応用しています。
キャンバスでもデニムでも合皮でも、(なるべく薄く均一に)白でしっかりと下地を塗ってからその上にデザインを下書きしてペイントします。
僕はペイントをそのまま使っています。僕にはその濃度と可塑性がちょうどよくて思いどおりに仕上がりますが、ペイントに混ぜて表面に滑らかさや柔軟性をプラスする(タラゴのソフトメーカーのような)製品を使ってもいいと思います。
好きなスニーカーペイントのカラーは?
僕が古い人間だからかもしれませんが、「お気に入り」は三原色です。
これがあればほかのカラーやレンジを作り出すことができます。
でも、タラゴの前に使っていたブランドの三原色で痛い目にあったので、暖色系(黄、オレンジ、赤)も好きです。
最後の質問です。今後のプロジェクトについてお聞かせください。
ひさびさに大がかりなペイントをしたいです。
大学ではとても大きな作品を描いていましたし、何年かバレンシアのファジャス(火祭り)でもペイントしていました。
スケールの大きなペイントならどんなものでも好きです。大きなスケールでペイントするならなんでもいい。
もしかすると、そのうち思い立って小さなフォーマット(スニーカーやジャケット)を大きなキャンバスや壁画のような大物と融合させるかもしれません。
いかがでしたか。
「好きこそものの上手なれ」を地でいくナンドのカスタマイズ道。カスタマイザーとして成功してもなお努力をいとわず学び続ける真摯な姿勢には頭が下がります。ぜひ彼のInstagramをフォローして、入魂の作品の数々やこれからのプロジェクトをチェックしてみてください。
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