早いもので4月も後半となり、すっかり春の終わりを感じるようになりました。
新社会人の皆さんもだんだん新しい環境が自身の生活の一部となってきた頃かと思いますが、まだまだスタートしたばかりなので焦らずマイペースに頑張ってくださいね。
さて、当サイトでは入社前にやっておくべき革靴のプレメンテナンスや、カンタンにできる靴磨きについてお伝えしてきましたが、入社からそろそろ1ヵ月を迎えようとしている今、ちょうど入社前に磨いた革靴の2回目のお手入れをするタイミングかと思います。
慣れない環境で1ヵ月頑張ってくれた革靴を労わる気持ちでキレイにしてあげましょう。
いつもはあまり近距離で見ることのない革靴をじっくりと見てみると、アッパーには傷やシワが当然ながらついております。これは皆さんが頑張った証でもあります。
こんな感じで履き口が潰れていたり、内張りが剥がれていたりする方は要注意です。
もしかすると、靴下のカカト付近のみ生地が薄くなっているなんてことはありませんか?
そのような場合、革靴の履き方に問題があるかもしれません。
社会人、いや、大人の嗜みとして常備していた方がいいのが“シューホーン”です。
シューホーンとは、いわゆる靴ベラのこと。
昔、祖父が「靴すべり」と呼んでいましたが、どうやら関西地方の言い回しみたいですね。
ビジネスシーンでよく履かれるレースアップシューズに限らず、ローファーやスニーカーなどヒールカップ(カカトを包む部位)のある靴全般の着用時にはシューホーンを使うことをおすすめします。
これは男性に限らず、女性にも共通認識で知っておいてほしいマナーです。
シューホーンの歴史は長く、約260年前に革靴の本場であるイギリスで誕生したとされています。
日本でも洋靴を身に着けるようになると次第に普及するようになり、靴を履く時の必需品として親しまれているのは靴を脱ぐ文化の日本ならではです。
屋内でも靴を履く国ではシューホーンを頻繁に使うことはありません。
シューホーンは英語圏でも “shoehorn” と呼ばれ、“靴の角”を意味するように水牛の角を使った物が始まりと言われています。
水牛の角は耐久性が高く、丈夫かつ軽量なので、現代でも高級メーカーで採用されている素材です。
立派な角をお持ちです
シューホーンを使うメリットは大きく分けて2つあります。
まず1つ目が、靴の着用がスムーズであること。
そしてもう1つが、靴が傷みにくいこと。
ヒールカップのないサンダルやクロッグタイプでない限り、基本的には足にフィットさせるために履き口は足の大きさよりも狭いです。
そのため靴を履く時は手を使わないと履けないので手こずることがありますが、シューホーンを使えばスルッと靴の中に足を入れることができてストレスフリーです。
訪問先で手間取っていませんか?
お座敷に上がる飲食店や営業先の顧客宅訪問など、人前で靴を着脱するシーンは意外とありますが、靴を履く際にモタモタとみっともない姿を見せていては好感度がガタ落ち…。
シューホーンをスッと取り出してスマートに靴を履く姿は、男女問わずとても美しくて気品に溢れています。
女性の場合、しゃがんで靴を履くのはスカートだと気になりますが、少し屈むだけで靴を履けるのは安心感にもつながります。
靴を履く時、こうしていませんか?
これらはすべて、靴の寿命を縮めるNG行動です!
まず、シューレースやストラップのついた靴は必ず緩めてから履くようにしましょう。
履き口が狭いまま足を入れようとすると、2~4までの行動を取らざるを得なくなります。
つま先トントンは想像に容易いですが、トゥに傷がついたり、アッパーとソールが剥がれたりします。
つま先トントンは絶対にやめましょう
靴にとって良くないのは分かり切ったことなのですが、実は足がつま先側に寄った状態で靴を履くのは足にとっても良くありません。
靴は、カカトがフィットしていて、つま先に指が動かせるくらいの遊びがあるサイズを選びましょう。
つま先がちょうど良くてもカカトがカパカパしている靴は、つま先を圧迫して足が変形してしまう恐れがあり、正しい歩行を促すことができません。
靴を履く時はつま先を上にして、カカトを軽くトントン
シューレースやストラップのある靴を履く時は、カカトを地面につけて軽~くトントンし、つま先を浮かせます。
この時、足に力が入らない楽な姿勢を取るのもポイントです。
その状態で、シューレースの場合はつま先側から足を固定するようにしっかりと締めていきます。
コンフォートシューズ(快適さを重視した靴のこと)の販売店では、フットレストのような角度のついた台の上で試着させてくれるお店もあるくらいに常識として認知されています。
シューレース(靴ひも)はつま先側から締めましょう
履き口に指を添わせてグイグイと引っ張ったり、履きづらいからといって踏んでしまうのは当然ながらNGです。
ヒールカウンターと呼ばれるカカト部分に挿入された半円形の芯は、靴の形を整えるだけでなく足を固定する役割もあります。
このヒールカウンターが潰れると正しい歩行ができなくなり何らかのトラブルが起きる場合があります。
従って、このようなNG行動を取らないためにもシューホーンの使用をおすすめします。
シューレースは必ず緩めましょう
タンを巻き込むと履きづらく、靴にも負担がかかります
この際、シューホーンを靴の中に入れすぎないようにしましょう。
足を入れた後にシューホーンが抜きづらくなり、シューホーンが折れたり曲がったりする原因にもなりかねません。
また、インソールを擦って傷つけてしまうこともあるので気をつけてくださいね。
NG:インソールに付くほどシューホーンを入れる
OK:入れすぎないように垂直に
カカトを垂直に落とします
シューホーンのカーブに足を添わせて、地面に対して垂直に足を落として靴の中に入れます。
念のためお伝えしますが、シューホーンがカーブして窪んでいる側にカカトを添わせるんですよ。
当たり前だと思うかもしれませんが、筆者が靴の販売をしていた頃、シューホーンを使ったことのないお客様が反対側にカカトを添わせて使っていたことが何回かありました。
使ったことがないと意外と分からないものなのです。
NG
OK
タイプ別のシューホーンをご紹介します。
シューホーンはマナーだとお伝えしましたが、自分自身を格好良くキメるステータスアップアイテムでもあるのは間違いありません。
靴を履く時、それ相応のシューホーンを取り出せばセンスの良さに惚れ惚れされるはずです。
ショートタイプ
フランス発のシューケアメーカーでおなじみのサフィールにもシューホーンはあります。
さりげない刻印がオシャレで「SAPHIR」という文字があるだけで高級感が漂いますね。
金属(スチール)素材の約1mmという薄さなので、タイトフィットしている靴を履いた後でも抜き取りやすく、ヒールカウンターを傷める心配もありません。
コンパクトながら横幅がしっかりあるので、すんなりと靴の中に足を運んでくれます。
薄いのに丈夫な金属は割れる心配をせずに1日中持ち歩くことができるので、歩き回る職業の方にもピッタリです。
(落とすと金属音が鳴り響くので注意…!)
サフィールの上位ライン「サフィールノワール」のリアルシューホーンは、天然の水牛の角を使ってハンドメイドで作られています。
天然素材ならではのナチュラルかつ独特な風合いが特長で、ひとつとして同じ物がない特別感がお値段以上の満足感を与えてくれます。
程良い厚みがあり強度にも優れている水牛の角は、手に持った時の感触がすべすべで心地良く、靴の中に足を滑り込ませる時のなめらかさはイミテーションとはまるで違います。
1点ずつ表情が違う天然の模様や色合いもセンスが光り、長さ違いで揃えたくなる逸品です。
世界を代表するシューツリーブランド「コルドヌリ・アングレーズ」は、シューホーンも機能性と美しさで高い評価を得ています。
渋く光るメタルは高級感があり、ゴールドは真鍮、シルバーは鉄製ニッケルコーティング仕上げです。
可動式のハンドルは丈夫な革で出来ているのでエイジングによりひとつずつ風合いが変わってきます。
革靴がお好きな方であれば、シューホーンの革も一緒に育てていくのも楽しみのひとつですよね。
使わない時は折りたたんでコンパクトにしておけるので、バッグや胸ポケットに入れてもかさばりません。
ロングタイプ
Imperial(インペリアル)とは、帝国のあるいは皇室のという意味合いを持ち、最上級を意味する形容詞としても使われる言葉です。
その名の通り、ヘッドにはイーグルやホースなど格調高い装飾がついているクラシックなスタイルのシューホーンです。
筆者はこちらのシューホーンを見た時に、なんだか懐かしさを覚えました。決して格式高い家庭出身というわけではないのですが(笑)
なんとなく、昔祖父の家の玄関に置いてあったかのようなノスタルジーな想いを馳せるデザインだなと。
ホース(馬)
そう感じたのは筆者だけではなかったようで、ご購入された方からは「昔使っていた物とよく似ている」というお声を頂いています。
古き良き時代にビジネスシューズを履くために使っていた方が時を超え、今はウォーキングシューズを履くために使っているのかなと想像して感慨深い気持ちになりました。
重厚感があるので柄が長くてもふらつかず、木製の持ち手はよく手になじみます。
全長60cmと長く、立った状態で腰を曲げずに使うことができるのでご年配の方にもおすすめです。
先ほどご紹介したショートタイプより約22cm長いロングタイプ。
ハンドル部分に革のカバーをつけ、持ちやすさにデザイン性も加味したコルドヌリ・アングレーズらしいシューホーンです。
高級シューズブランドでもフィッティングに使われているラグジュアリーなシューホーンが玄関にあると、靴を履くたびに気が引き締まるはずです。
シューホーンを使った方が良い理由と、おすすめをご紹介させていただきました。
シューホーンは小さな道具ながら、一度使うとお仕事中や日常生活において欠かせないパートナーとなるほど便利なアイテムです。
ぜひ、ご自身に合ったシューホーンを見つけて革靴を履く楽しさを感じてみてくださいね。
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