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ホーム > トピックス > 【海外情報】サフィール―世界最高のシューポリッシュを製造する企業を訪ねて
公開日:2025/12/26    /  最終更新日:2025/12/25

【海外情報】サフィール―世界最高のシューポリッシュを製造する企業を訪ねて

まもなく終わりを迎える2025年は、サフィールが1925年のパリ万国博覧会で金賞を受賞してから100周年にあたる記念すべき年でした。
その金字塔は一世紀を経ても崩れることなく、フランス南西部の小さな町で大切に受け継がれ、進化を続けています。
今回は、シューポリッシュとサフィール誕生の歴史をたどってから、サフィール本社訪問レポートをお届けします。


なお、本記事はサフィールのブログ記事Saphir – Visit of the Company That Produces the World’s Finest Shoe Polishを意訳したものです。

フレンチレザーの遺産、サフィール

シューポリッシュの歴史とレザーの歴史を切り離して語ることはできません。
中世には既に、なめし職人や靴職人が革靴の栄養補給、保護、ツヤ出し効果のある蝋ベースの混合物を調合していました。
靴職人の守護聖人である聖クリスピヌスとクリスピニアヌスは、この手工芸と素材の古来からのつながりを象徴しています。

 

18世紀、シューポリッシュのレシピ(牛脂、油、ランプブラック※、テレピン油)がはじめて誕生しました。
まだ不安定でにおいがきつかったこの混合物は、19世紀には大幅に改良されました。
科学の進歩によってより均質なペーストができると、軍隊はブーツを手入れし、業者は処方を完成させ、戦争によって加速的に普及しました。
フランスでは、アレクシ・ゴディヨがナポレオン軍の靴を用意し、「ゴディヨ」はミリタリーブーツを意味するようになりました。

※ランプブラック:油や樹脂などを不完全燃焼させて生成する黒色顔料。すす。天然の炭素で別名、油煙とも呼ばれる。

 

工業化とともに新たな時代を迎えたシューポリッシュの製造は、19世紀末にブリキ缶が登場すると一変します。
より実用的で、より耐久性があり、ガラス瓶より保存に適したブリキ缶は、大量生産を可能にしました。
1889年にヨーロッパで製造されたシューポリッシュおよそ3,000万キロのうち3分の2がフランスで製造されました。
ファヴェルジュからリヨンに至るまで、ジャカン、ベルソーなどの工場がブリキ缶を世界中に出荷しました。

 

このような流れの中、1920年にサフィールが誕生します。
デスタニョル家が創業したこのブランドは、またたく間にレザーケアのベンチマークとなりました。
1925 年パリ万国博覧会で金賞を受賞、1950年代にはニューヨークへ輸出されました。
有名な「ビーズワックスポリッシュ」は、レザーの呼吸を妨げずに栄養と深い光沢を与える、ビーズワックスとテレピン油をベースにした処方で注目されます。

 

1979年、サフィールはアレクサンドル・ムーラが1977年に創業したばかりのアベルに買収されます。
マニャック=ラヴァレット=ヴィラールを拠点とするこのファミリー企業はブランドを立て直し、現在に至るまで完全国内生産を維持しています。
現在、マク・ムーラ社長の下で、世界中の靴職人、靴修理職人、靴愛好家から高い評価を得ている有名なサフィールノワールシリーズを含む全サフィール製品を製造しています。

サフィールノワールシリーズは、表面の通気性を妨げない軽い仕上げのレザー(アニリン、セミアニリン、ボックスカーフ、フルグレインカーフスキンなど)に最適です。
天然のワックスや油分をよく吸収するこのようなレザーは、リッチな処方の恩恵を存分に受けます。

 

サフィールシリーズは、レザー製品のお手入れのために、より幅広いカラーと製品が揃っています。

マニャック=ラヴァレットで、サフィールの製造現場を見学

今も伝統のレシピを使って製品の製造を続けているアベルの工場を訪ねました。

 

まずはショールームから。
グループのさまざまなブランドが展示されている静かなスペースでは、幅広いコラボレーションを鑑賞できます。
クロケット&ジョーンズ、チーニー、ロンシャンなどのメゾンのために数種のケア製品が開発されていて、どのブランドも隣接する研究所で考案されたオリジナルの色調や仕上げの恩恵を受けています。

 

棚に並ぶポリッシュ缶やブラシの中、カラフルな木製のシューツリーが目を引きました。
ビーチ(ブナ材)やシダー(スギ材)のシューツリーとラストの製造に特化した、リモージュ近郊にあるアベル傘下のパーフェクタの製品です。
その存在に、お手入れ製品でケアしておしまいではなく、靴の形を保つところまでがレザーケアなのだということに思い至ります。

倉庫

ショールームに隣接する倉庫には、出荷される完成品が保管されています。
シューポリッシュの缶、クリーム、ローション、スプレーを積載したパレットがシリーズとカラーで分類されています。
モダンで明るいスペースは、溶剤や噴射剤を使用する作業に必須の非常に厳しい安全基準をクリアしています。
倉庫の管理は行き届いており、バッチごとに識別、チェックされ、国内外の小売店や販売代理店に対応します。

製造工場(またの名を『ザ・キッチン』)

数メートル先に建つ本館は、この見学ツアーでもっとも活気のある場所です。
ここにある工場で、ロウ、顔料、溶剤を混ぜ、サフィールのクリームやペーストを作ります。
タンクやミキサーの動作音が重厚な空気をかもします。
においは独特で、樹脂やワックスのようなノート(香調)が心地よくもときに鼻を突き、揮発性材料を扱っていることに思い至ります。

 

サフィールノワール クレム1925の調合を見せてもらいました。
ビーズワックス、カルナバワックス、モンタンワックスを溶かし、溶剤や着色顔料と混ぜ合わせます。
水分を一切含まない、高濃度かつ安定した処方で、レザーに栄養を与えながら光沢が続くように考案されています。

 

原料が完成品になっていく。
これは間違いなくこの見学ツアーのもっとも魅力的な場面です。

画像:イエロービーズワックス(左:無色のポリッシュにはごく少量)とカルナバワックス(右)。
後者はモンタンワックスと併用されることが多く、光沢を引き立て、鏡面磨きを可能にします。

研究所

研究所は本館の2階にあります。
1階の活気のある工場とは対照的な、静かで明るい環境です。

 

ここで処方の開発と改良を行います。
技術者がテクスチャー、光沢、性能をレザーの種類や顔料ごとにテストします。
歴史あるレシピを守るだけでなく、伝統の配合に匹敵する性能を提供するPFASフリー処方など、最新の開発に取り組んでいます。

 

特定のモデルに合う非常に具体的なブラウンやバーガンディの色味がほしいといったような、クライアントに対応したカスタムカラーもここで作られます。

 

品質管理や苦情対応の必要に応じてテストできるように、新たな製造ロットごとにサンプルを取って研究所に保管します。

最終工程:瓶詰め

大きなタンクで加熱され均一になったワックスと顔料の混合物が、まだ熱いうちにサフィールノワールシリーズ用のガラス瓶に注がれます。

 

続いて、細心の注意を払って制御された冷却段階に入り、ワックスが徐々に固まり、完成品の質感になります。
冷却後、密封され、ラベルを貼られ、分類された瓶は、倉庫へ送られます。

 

材料が熱い液体から安定した固体になり、やがて完成品になる。
これは、この見学ツアーでもっとも視覚に訴える場面かもしれません。

あとがき

高級シューケアの世界的リーダーの拠点がフランスにあることは忘れられがちですが、世界に名立たる靴のメゾンや革製品のメゾンが、パリから数時間のこの場所で作られる製品に信頼を寄せています。
誕生から100年を迎え、サフィールは今日も受け継ぐべき遺産のように靴を輝かせています。

 

製造の舞台裏を垣間見ることができた、有意義な会社訪問でした。

文:トマ(レ・アンディスパンサーブル・パリ)


いかがでしたか。
古来より製造されていたシューポリッシュが産業革命と戦争によって発展した歴史と、徹底した製品管理が行われているサフィールの製造現場を目の当たりに見た感動をありありと伝える、読み応えのあるレポートでしたね。
ちなみに、筆者のトマさんが運営する、メンズウェアに特化したブログ"Les Indispensables"は「必需品」という意味です。
プレミアムなシューケアに欠かせない、歴史に裏打ちされた品質を誇るサフィールの製品を、新年もぜひご活用ください!


 

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Le Beau
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