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中里彩のStory of Shoeshine

第1回「THE WAY THINGS GO/石見豪さん」

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第1回「THE WAY THINGS GO/石見豪さん」

Column / 1st 1 JUN 2020

第1回「THE WAY THINGS GO /石見豪さん」

メンズスタイルデザイナー 中里 彩がシューシャイナーに革靴を磨いてもらいながら、お話をお聞きするコラム連載。第1回目は大阪と東京に店舗を構える靴磨き専門店「THE WAY THINGS GO(以下 TWTG)」のオーナー 石見豪さんにお話をうかがいます。
石見さんは2018年に開催された「靴磨き日本選手権大会」で優勝されたご経験をもつ、日本の靴磨き界のスーパースター。2019年には東京・渋谷のUNION WORKS1号店を引き継ぎ、「THE WAY THINGS GO × UNION WORKS」をオープンされました。


今回、磨いていただくのはスペインのシューメーカー「CARMINA(カルミナ)」の内羽根ストレートチップのレディース靴。バーガンディ色に黒色をのせたアンティーク調でしたが時間が経ち剥がれてしまいました。今回もアンティーク調でお願いしましたが、果たしてどんな仕上がりになるでしょうか。

Nakazato

石見さん、本日はよろしくお願いします。靴磨きに対するメンタリティについてお話をお聞きしてみたいのですが、人が靴磨きの価値に気づくのはどんなときだと思われますか?

Ishimi

日本では、靴を磨くという文化が根付いてないので、靴磨きの価値やメリットってまず磨いてみないとわからないものだと思います。きれいに磨かれた靴を履いて褒められて初めてその価値を実感するものなのかなと。僕たちが聞いていると、基本的には良い靴を買うことでケアを始める方が多いですね。良い靴の基準や定義はそれぞれだと思いますが、一番は自分が大切したいと思う靴、絶対にこれは汚くしたらダメだなと思う靴のことだと思います。男性の場合、例えばジョンロブやエドワードグリーンなどのブランド靴でしょうね。

Nakazato

確かに、褒められて初めて靴を磨いてよかったなと思いますよね。ただ、靴ビギナーだとそこまで予算でない方は多いですよね。

Ishimi

確かに、そうですよね。ただ予算ありきだとしても、3万円の靴を買うなら1回我慢して6万円の靴、3回我慢して10万円の靴を買うほうが、きっと10年後よかったなと思えると思います。好きになるとそのうち平気で何十万の靴を買うようになって、病気みたいになっていきますね(笑)

Nakazato

それは服も同じですね。ハマってしまったら、あとは皆さんとことん極めるべく自走されていきます。では、どうしたら初級から中級の方々がもっと靴や靴磨きを好きになると思われますか?

Ishimi

好きになるって価値観や格好いいと感じるものの延長線上にあるので、やっぱりブームやトレンドではなく、格好いいと思える、こうなりたいと憧れるような装いのスタイルをもつ人に出会えるかどうかなのかなと思います。僕も数年前のクラシック回帰で普遍的な本物のクラシックを知って、格好いい業界の先輩方をお手本に色々と誂えるようになりましたね。

Nakazato

憧れる存在って貴重ですよね。今は昔と違って教えてくれる人がいないという声をよく聞きます。昔は父親や会社の上司や先輩が教えてくれたものだと。

Ishimi

昔は確かにそうでしたね。今は情報が凄く多いので、良い意味で良いものを求めて頭でっかちな若い人も増えましたよね。

まず、これまで重ねてきたワックスやクリームをリムーバーで丁寧にすべて落としていきます。

Nakazato

今、靴磨きが好きな方々はどこから靴磨きの情報を知るものなのでしょうか?

Ishimi

ほとんどSNSですね。INSTAGRAMはBefore&Afterの変化を写真で見られるのでわかりやすいです。昔は1000~2000くらいしか #靴磨き のタグはなかったんですが、今では10万超えです。影響力のある人から知りたい、フォローしてる人が靴磨きをしてるから自分もやってみようとなるんだと思います。女性がSNSで化粧品のブランドを知るような感じでしょうか。

Nakazato

靴磨きが注目されたのは、ここ10年くらいでしょうか。専門書籍が出るよりも先にSNSで靴磨きのノウハウを勉強することが浸透した特殊な業界かと思います。

Ishimi

そうですね。靴磨きのノウハウはずっとありましたが、表に出てくるまでにかなり時間がかかりましたね。

すばやく淀みなく丁寧に磨き進める石見さん。パフォーマンスが美しくて、お話中にも関わらず思わず真顔で釘づけに…

Nakazato

TWTGさんでも積極的にSNSで投稿されていますが、どうしたらもっと靴磨きを楽しむ人が増えると思いますか?

Ishimi

靴磨きを好きになってもらうには、人を好きになるのと同じように密なコミュニケーションが必要なので、実は僕らが発信しても靴磨きをする人はそんなに増えないんじゃないかなと思っています。それよりは自分たちの影響力を発揮できる密な関係性を築けるお客様を一人でも増やしていって、その人たちが例えば会社で後輩に靴磨きしたほうがいいよと教えることで広まっていったらいいなと思います。周りの人の影響は大きいですからね。

Nakazato

ビジネスで成功しているTWTGのお客様に共通するものはありますか?

Ishimi

やっぱり身につけるものに拘りがあり(靴以外にも服、時計、鞄etc)
社会的な地位が高い傾向で、所得も高い方が多い印象です。TWTGのお客様には、大物政治家や上場企業の有名経営者、人気芸能人の方もいらっしゃいます。この職業じゃなきゃ出会えないような方々で、特殊な職業なんやなと感じています。お持ち込み靴の価格帯は10万円以上する靴が多く、中には100万円のビスポーク靴もあります。

Nakazato

なるほど、例えばどのような靴が多いのでしょうか?

Ishimi

黒の内羽根など、めちゃくちゃベタな靴ですね。ジョンロブのフィリップⅡ、シティⅡなど人気です。フィクサーのようなお仕事の中年男性のお客様はローファーが多いです。靴を見ると大体どんな人かわかってしまいます。

アンティーク調の仕上がりにするため、つま先と踵にサフィールの黒色のワックスを重ねていきます。
クルクルと塗り込んだり、指先でトントンと塗り足したり、説明いただきながら様々な技術を見ることができました。

Nakazato

靴を見ればどんな人かわかるとなると、私はもうバレバレですね(笑)

Ishimi

物に拘りのある女性だとすぐに分かりました(笑)センスのある選択をされてますよね。女性靴ならステファノ・ベーメルもお似合いだと思います。

Nakazato

靴磨きをルーティーンにすると精神統一やリフレッシュできるという声を聞くことがありますが、石見さん自身、靴を磨いていて何か気持ちの変化はありますか?

Ishimi

もう少しで4万足くらい磨いたことになるんですが、まだまだ勉強することはあり、靴磨きの深みを実感しています。
お客様がお持ちくださる靴は一足一足違うので、その若干の違いやお客様の反応を見るのが楽しみで磨いていますね。
あとは磨き上がった靴をお客様にお渡したときに感動してもらえるように目標を立てています。あとは、いつまでも感動を忘れないようにしなきゃなと思いますね。
やってることが当たり前で普通の作業になってしまってはダメなんですよ。
その感覚を忘れないために、他社さんで磨いてもらうこともありますよ。他の人に磨いてもらうことで、「あぁ、何度磨いてもらっても新鮮で特別な時間だなと思えるので、当店でも感動してもらえるな」と自信になるんです。

Nakazato

ご自身の装いのスタイルに鏡面磨きした靴を合わせることはありますか?

Ishimi

鏡面磨きは自分の靴にもしますよ。実は一時期、鏡面磨きがめっちゃ嫌いな時期がありまして・・・。靴磨き屋さんなのに、「あまり磨かない方がいい、50足とか100足とかメンテナンスをしなくていいくらいたくさん靴を持てばいいや」と考えてしまったときが一瞬ありましたね。

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