オイルレザーと言われても、一般的な普通の革製品と何がどう違うのか、あまりぴんと来ないですよね。
いざオイルレザーをお手入れしようにも、そのオイルレザーがどんな性質を持ったものなのかをまずは知る必要があります。
手元にある靴や革製品が実はオイルレザーだった!?、なんてこともあり得るかと思いますので、あらためてオイルレザーがどのような皮革でどうやってお手入れすればよいのか、一緒に学んでいきましょう。
“オイルレザー”または“オイルドレザー”は革に油分を多く含ませたものの総称です。
動物から剥いだ「皮」を素材としての「革」にすることを「鞣(なめ)す」と言いますが、
オイルレザーはこの鞣しの工程で一般的ないわゆるスムースレザー(ツヤ革)比べてより多量のオイル(油分)を含ませて作られています。
オイルを多く含ませることで、丈夫な素材である革がさらに丈夫になるのですが、理由としては「オイルの効果で柔軟性が高まり耐久性が上がること」と「乾燥に強くなり、油が水を弾く効果で耐水性が高まること」が挙げられます。
オイルレザーの表面はオイルのしっとり感がありますが、ワックスによるコーティングではないため光沢感は強くありません。 いわゆる「マット(ツヤなし)な仕上がり」です。
オイルレザー(オイルドレザー)は丈夫な素材として幅広い製品に使われています。
靴やかばん、財布など革小物、ジャケット等衣服など普通のスムースレザー製品と同じように扱われています。
ただ前述の通り、オイルをたっぷり含ませて耐久性・耐水性を高めていることを活かして、汚れてなんぼのアウトドア向け製品(シューズやブーツ、グローブ、バッグなど)など高耐久性が求められる物に使われることが多いです。
またオイルレザーの一種として有名どころで、Paraboot(パラブーツ)※1のLisse Leather(リスレザー)、Horween(ホーウィン)社※2 のChromexcel(クロムエクセル)レザー などは選別された高品質な原皮を用いた高級オイルレザーに分類されます。
※1 Paraboot:フランスのシューメーカー。甲革のリスレザーだけでなくラバーソールも自社オリジナルの部材を使用する稀有なメーカー。
※2 Horween:アメリカ シカゴにあるタンナー(皮革製造業者。皮を革へ鞣す専門業者)。1905年創業の老舗。コードバン製造でも世界有数のタンナー。
オイルレザー(オイルドレザー)のお手入れはスムースレザー向けの用品が使えなくもないのですが、どちらかというとスムースレザー用のクリームやローションはスムースレザーに光沢を与えるためにワックスを含んでいることが多く、オイルレザー特有のしっとりとしてマット(ツヤなし)な風合いの維持はそれだけでは難しいです。オイルレザーの魅力である独特の質感を保つためには、できればオイルレザー専用のケアアイテムを使いたいところ。
オイルレザーの手入れにおすすめな商品と使う順番は以下の通りです。
基本的な使い方は同じでいたって簡単です。
- ほこりを払うブラッシング
- クリームやローションを布などにとって全体に塗り伸ばし。
- 馬毛や豚毛のブラシでブラッシングしてクリーム・ローションをなじませる。
- 最後は乾拭きでフィニッシュ。
続けて、オイルレザーのお手入れにおすすめの商品をご紹介いたします。
・がっつりオイルを与える(オイルアップする)
ワークブーツ、アウトドア用品などの過酷な環境下でガンガン履く・使うようなオイルレザー製品は、傷や汚れ、乾燥などがつきもの。
定期的にオイルアップ(加脂)が必要となるので、たまにはこちらの商品を使ってあげます。
サフィール ダビンオイルHP
動物性油分・植物性油分を用いた、オイルアップ(加脂)用グリス(固形オイル)です。
比較的粘度が高めで濃厚なオイルをしっかりと皮革に補給することで、オイルアップ効果は抜群!
主成分である動物性油分はアザラシやサーモンなど海棲生物から採取されているため、水気に対する保護効果が強力です。
油分が濃厚な分、革の色が濃く(暗く)なりやすく、表面が乾いても完全には元の色には戻りません。
言い換えると、なじんだオイルは乾きにくく皮革に留まる期間が長いため長期間にわたり皮革を乾燥から守ることができます。
なお商品名にある「HP」は「High Protection(高い保護効果)」の略です。
タラゴ ミンクオイル
栄養効果の高いミンクオイルと保湿効果の高いワセリンをバランスよく配合。保湿・防水効果がばっちり革を守ります。
浸透性が高く、皮革をやわらかくする柔軟効果に優れています。革が固くてきつい靴や足のアタリどころが悪くて痛みを感じる靴に使えば、革を伸ばして症状を緩和することも可能。
こちらもグリス(固形オイル)タイプなのでオイルアップ効果は抜群です。
100mlの大容量で、990円(税込)※3。
割安、高コスパで人気が出ました。
パッケージのミンクのイラストがかわいい。
※3 2024年10月時点の価格。
傷やこすれなんてお構いなしなハードユースの皮革製品向けというよりは、どちらかというと前述のリスレザーやクロムエクセルレザーなどの高品質オイルレザー製品のお手入れにおすすめな製品です。
サフィールノワール オイルドレザークリーム
オイルレザー専用に処方されたクリーム。オイルレザーに必要な油分をしっかりと補給すべく、動物性油分であるニートフットオイル(牛脚油)、植物性油分のホホバオイルをバランスよく配合。柔軟効果・保湿効果に優れた処方となっています。
特に得意としているのが、先に挙げたリスレザーやクロムエクセルレザーなどタウンユースのオイルレザー製品のメンテナンス。
グリス(固形オイル)のようなベタつきがなく、サラっと仕上がるので普段使いのオイルレザー製品のお手入れ、オイルアップに最適なケアを行うことができます。
ワックスを含まないので光沢は控えめ、リスレザーやクロムエクセルレザーなどのマットで落ち着いた上品な質感を維持するのに最適です。
サフィール オイルレザーローション
前述のサフィールノワール オイルドレザークリームによく似た処方の、乳液状/ローションタイプのオイルレザー専用お手入れ用品です。
サフィールノワール オイルドレザークリーム同様、ニートフットオイルとホホバオイルが主原料なのですが、乳液状なので浸透性が高いのが特長です。
広範囲に均一に塗り伸ばしやすいのが液体の最大のメリットであるほか、オイルスエード・オイルヌバックといった起毛したオイルレザーのお手入れに使えるのがこの製品の注目ポイント。
乳液状ゆえの伸びの良さ・浸透性の高さは、お手入れ用品の選択肢が限られるオイルスエード・オイルヌバックのお手入れ、オイルアップで大活躍まちがいなし!です。
この2商品は本サイト連載コラム 革靴ジャーナリスト 楠美皓平さんの「くすみのシューケア生活」でも詳しくご紹介しています。
サフィールノワール ミンクオイルクリーム
サフィールノワール ミンクオイルクリームは主成分に純度の高いミンクオイルを配合した上質なオイルレザー向けクリームで、ミンクオイル本来の保湿効果、柔軟効果を実感できます。
ミンクオイルクリームは、グリス(固形のオイル)にありがちなベタつきがなくスムースレザーにも使用できるくらいサラッと仕上がり、過度に革を暗くすることがありません ※4 。
レザージャケットや手袋、ベルトなどの革小物など手に触れることの多いスムースレザー・オイルレザーの油分補給・保湿に大変オススメです。
※4 とは言うものの、まったく暗くならないわけではないので色の明るい革への使用は十分にご注意ください。
元々丈夫な革という素材にオイルをたっぷり含ませる(オイルアップ、加脂する)ことで、柔軟性を高め、水気や乾燥で受けるダメージへの耐久性が強化されます。
ところがオイルレザーの一番のストロングポイントである油分が抜けてしまうと、途端にオイルレザーという素材が持つ一番の魅力が一気に失われてしまいます。
オイルレザーの最大の特長を維持するためには、オイルレザーが必要とするオイルを多く含む手入れ用品を使ううことが必要不可欠です。
いざオイルレザーを手入れする際には、使うアイテムによって特長や仕上がりが異なるので、道具をうまく使い分けてください。
使い込むほど、風合いの変化を楽しむことができるオイルレザーを上手にお手入れをして、経年劣化(ダメージ)ではなく“経年変化(エイジング)”を楽しみましょう!
本記事で紹介した商品はこちらで購入できます。
Youtube “ShoesLife チャンネル”にて公開中
“オイルレザー”のお手入れHowTo動画はこちら